Episode.10 LUCY

《デュアルフュージョン!ヴァルツ!ディアマンテエモーション!》


《唸れ豪傑の拳!輝け宝珠の光!

爆発させろその感情を!》


俺を包んでいた宝石型のエネルギーが弾け、俺の姿はヴァルツ・ディアマンテエモーションへと姿を変えた。

俺の両腕にはリベルのリベルガンブレードとアインの青龍剣・アインセイバー。



「へぇ……ヴァルツに雑魚2人の力を束ねたんだ。

それで僕に勝てるとでも思ってるの?」


《アナザーディケイド!バースト!》


《ブラッド!》《カリバー!》《ソロモン!》


解放される悪しきライダーたちの力。

奴の手にはそれぞれ金色の大剣と闇に染められし剣。

そしてその背後には大蛇を模したエネルギー体。


3体分のライダーの力が奴に宿っているが、こっちも負けてはいられない。



「勝利さん!そのままアインカプセルの力を解放してください!」


「おうよっ!」


《アイン!バースト!》


アナライズを完了したルーシーは俺に指示を飛ばした。
どうやらルーシーも各ライダーの情報をラーニングしたようである。

俺はルーシーの指示通りアインのカプセルの力を解放。
俺の背後に巨大な氷の龍が召喚された。



「「はっ!!」」


奴と同時に飛び上がり、俺は背後の氷の龍に飛び乗る。
奴も同じく大蛇型のエネルギー体に飛び乗った。

それを合図にして俺たちは召喚した魔獣を使役し上空へと飛び立った。



──これでいい。

奴の攻撃をルーシーたちから反らせる上、ルーシーも『作戦』に集中できる。

ルーシーがアナライズした情報は適宜俺のバイザーに転送されてくるし、それにもうひとつの“仕事”も思う存分集中できる。


ここまでは作戦通りだ。


魔獣たちが空を滑るように加速する中、俺たちは互いに切り結ぶ。

ライダーたちの力を束ね、スーツのスペックもけた違いに跳ね上がっているが、それでもこちらが押されている。

それだけ奴と俺の実力の差があるのだ。



「やべっ……!全く余裕がない……!」


「ちょっとは楽しませてよね……?」


《ソロモンブレイク!》

《月闇(クラヤミ)必殺撃!習得一閃……!》


奴は自身の魔獣から飛び降りるようにしてこちらに肉薄すると、青龍剣・アインセイバーを弾き飛ばす。


そして膨大なエネルギーを纏った二本の刀を叩きつけることで俺を氷の龍から叩き落とした。

俺は慌ててリベルガンブレードでその攻撃を受け止めるが地面に勢いよく叩きつけられてしまう。


エネルギーが迸る中、奴は俺をその質量にものを言わせて押し潰さんばかりに力を込める。


俺はリベルガンブレードでそれを防ぐので精一杯だ。




「ぐっ……!うぅっ………!」


───重い。重すぎる。

かっこよく『お前の剣は軽い!』なんて言ってその攻撃を弾き返せるのならどれだけよかったことか。

だけど現実はそんなに甘くはない。

結局奴の自信はその強さに裏打ちするもの。

その太刀筋が軽いわけなどないのだ。 




『勝利さん今です!そのままリベルカプセルの力を解放してください!』


「……りょーかいっ!」


……だけどこっちには作戦の要たるルーシーがいる。

俺は奴の攻撃を受け止めながら、脳波コントロールによるリベルカプセルのバーストを試みた。



《リベル!バースト!》

《アクティブ!エグゼイド!ダブルアクション!》


エクスライザーを介さず、脳波のみでリベルカプセルのバーストに成功。

リベル……もとい勇騎さんの所有するライダージュエルの力が解放された。


そう、これがもうひとつのルーシーの仕事。


『エクスライザーのリミッター解除』だ。

ヴァルツをはじめとするエクスライザーを用いる戦士はカプセルに宿った力を解放することでその力を使用できるが、脳波コントロールで解放するより、エクスライザーで読み込ませるという一手間を加えることでその力はより引き出される。

だがリミッターの解除により、一時的だが脳波コントロールでもエクスライザーで読み込ませるのと同じだけの力を解放することが可能になり、またヴァルツ自体のスペックも底上げされる。


そして…………




「なっ!?………ぐっ……!!」


俺の体から抜け出す“何か”。

ヴァルツ・ディアマンテエモーションの姿から更に姿が変わる。



そして奴の背後に回り込んだ何かは、剣を振り下ろし奴の背中を切り裂いた。

予想外の攻撃によろける奴を俺は蹴り飛ばした。



俺の視線の先にいたのは………




「よう、マイブラザー……」


「え……?アンタだれ?」


「呆けてんじゃねぇよ……俺はオメェだよ……ケケッ」


そこにいたのは変身解除されて倒れている筈のリベル。
その手に握っているのは、奴が俺からはたき落とした青龍剣・アインセイバー。

しかし……その声は勇騎さんのものではない。
紛れもなく俺の声そのもの。


俺の声を発するリベルは俺の手を取ると俺を立ち上がらせてくれた。

そこで気づいたのだが、対する俺本人の姿はディアマンテエモーションからどういう訳かアイン・スタンダードフォームの姿となっている。



──どうやらエクスライザーのリミッター解除は思わぬ効果も生んでくれたようだ。
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