Episode.10 LUCY

───ここに来る途中、現場へ戻るべく走りながらという形になったルーシーとの作戦会議を思い出す。



『ルーシー!君は相手の能力の分析とか出来るのか!?』


『は、はいっ!アナライズくらいなら私にも!!』


互いに走りながらで、息もあがってしまうので妙に声も大きくなってしまう。

ていうか、ルーシーはロボットなのになんで走って息があがるんだよ………妙に人間臭くね?
 

………って言うのはどうでもいいとして。




『じゃあアナライズながら他の作業は!』


『もちろん可能です!!』


『じゃあ!ルーシーにお願いがある!!』



………どうも俺には共に戦ったあの子………星宮 月音(ほしみや つきね)のようにスマートに作戦会議する余裕はないようだ。


もしこの内容が筒抜けだったら………とは思うがそんなことよりも早く戻らなければという意識が勝った。

それだけのことだ。




────



「へぇ…………!」


奴の右掌にエネルギーが蓄積されていく。

こんな攻撃を食らえば確実に俺の体は消し飛ぶだろうな。


だけど………。




「さしずめ、その機械人形に僕の弱点を探らせてるんだろうね………。

でも、無駄だよ?

弱点なんかないし………それに!」



奴の右掌からエネルギーの弾丸が放たれる。

狙いはルーシー。


やはり、奴はルーシーを潰しにかかるか………!



俺はルーシーに駆け寄るが、満身創痍の俺が走るよりエネルギーの弾丸の方が速い。





「お前の魂胆なんか見え見えなんだよ………!」



間に合わない。このままじゃルーシーが……………!
















─────なんてことは、想定の範囲内なんだよ。









「こっちの台詞だ!」


「…………なっ………?」



俺は咄嗟に奴の足元に弾丸を放つ。

爆炎と土煙が巻きあがり、爆音がカプセルの起動音を掻き消す。



《ディリンク!!》


その一瞬で俺は隠し持っていたカプセルを起動する。

カプセルに宿ったライダーは『ディリンク』。



そう、少し前に一緒に戦った月音の力だ。

現時点でどのライダーのカプセルとも組み合わせることは出来なかったが、このカプセルはエクスライザーで読み込ませたり、単体でカプセルを起動するとモノクロのオーロラのような壁が現れる。


このオーロラの壁はいわゆるどこでもドアのようなもので潜り抜けることで別の場所へと行くことが出来る。



……つまり空間と空間を繋げることが出来るのだ。




「………っ!!」


ルーシーが顔を伏せた瞬間、ルーシーと奴の間にオーロラの壁が現れ、ルーシーへの攻撃はオーロラの壁の向こう側へと消えていく。


その直後俺たちの頭上が眩く光る。

どうやら奴の攻撃は何もない上空へと飛んでいったようである。





「……うそーん………」



「へっ…………驚いたかボクちゃん………

これがハンドパワーってやつだ」



ハンドパワーなんて嘘。

俺はただ月音の力を借りただけ。


でも『他の奴らにその存在を内緒にする』ってのは一応守ってるからいいだろ?




「へぇ………何をしたかは知らないけど、少しはやるみたいじゃん」





「………さて、一丁反撃開始といこうか。ルーシー!」


「はいっ!!」


ルーシーのバイザーが緑に光り、ピロロロ……という音が鳴り響く。


どうやら、すべての作業が完了したようだ。



俺は勇騎さんと輝の決め台詞を拝借すると二人のカプセルを起動した。




《リベル!》《アイン!》



「“マックス大変身”!!」



カプセルの輝きと、俺たちの隣に並び立つ二大ライダー。


そして二人のライダーの幻影が俺に折り重なると俺の体は白金に染められるのであった。
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