Episode.10 LUCY

「それではごゆっくり~」


売田こまちは一礼すると去っていく。

ルーシーはそんな彼女を手を振って見送った。



「いっただきまーす!」


「いただきます」


俺とノエルはナンテコッタ・パンナコッタを一口。

口一杯にパンナコッタそのものの甘さとヨーグルトソースの甘酸っぱさが広がる。


なんてこった!こりゃ旨い!




「美味しい……!」


「うーん旨いっ!

やっぱ勇騎さんの金で喰うスイーツは旨いなぁ~!!」


「……勝利、お前殴られたいのか?

……なんてこった、こりゃ伝説級に旨い」


勇騎さんの冷たい視線もナンテコッタ・パンナコッタの旨さに掻き消え、すぐさま驚きと笑顔に変わる。


流石はコメダ珈琲。

『爪の甘さや甘えからくる甘くない現実』と『甘いスイーツ』を融合させることで、ここまで旨いスイーツを作り上げるとは。




「なんかいいですね………こうやってボンヤリするのも」


オイルを飲みながらまったりとしているルーシー。

本当にロボットだとは信じられないくらいに表情が豊かだ。
なんていうか人間より人間臭い。


「俺はお前たち3人のせいで今月ピンチだけどな」


「ひとりでこっそりスイーツ喰いに行くなんて無粋な真似するからバチが当たったんだよ。ハハッ」


「お前本当にひねくれてんなっ!!」


勇騎さんはご機嫌ナナメだが、ルーシーの言う通りこうしてまったりとしている時間は尊いものだ。

日々の喧騒を離れ、まったりとスイーツやコーヒーの味を味わうことではりつめた心を癒す。


ルーシー、勇騎さんが作ったロボットなのにものすごくいいことを言うよ
、まったく。




「なぁルーシー……君は本当に俺が作ったのか?」


「はいっ!貴方様が私の製作者である呼道勇騎博士と99.98%一致しています!」


「マジか……俺、博士号なんて持ってないんだけどなぁ……」


ルーシーの答えに困惑気味の勇騎さん。

まぁ、何度も言うが高卒のフリーターがここまで精密なロボットを作り上げるなどとは思えない。

それは勇騎さん本人が一番分かっているし、勇騎さん本人が一番戸惑っている。




「まぁ、いいんじゃねぇの?こんなに可愛い娘さんが出来たんだ……そうだろ?お父さん」


「だからお父さんはやめろ!」


このルーシーというロボット娘は色々謎が多いし、何故空から降ってきたのかも分からないがまぁ……今は小難しく考えるのは辞めとこう。

俺たちはルーシーの言うようにまったりとすることにしよう。


俺は呼び出しボタンを押すとアイスコーヒーを注文するのだった。






「あ、勇騎さん。アイスコーヒー貰うね」



「止めろっ!本当に金ねぇんだよっ!!」




……………もちろん勇騎さんの奢りでね。
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