Episode.10 LUCY

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「…………金が……」


「一人だけスイーツ食べようとしたバチが当たったんだよ」


結局勇騎さんの奢りで俺とノエルは新作のスイーツの新作を、ルーシーはロボットだからということもあり、最高級の機械用オイルを戴くこととなった。

ポリ容器にストロー挿して経口摂取しているルーシーの姿は実にシュールだ。


しかし、一目四肢のスリットを見れば機械だと分かるのか、誰もツッコミやしない。


ルーシーもうちのヒメみたいに経口摂取した牛乳をエネルギーに変換出来れば、同じようにスイーツを楽しめたのにな。



「………ルーシー、勇騎さんがおかわりしてもいいってよ」


「やめろ!本当に金がねぇんだよ!

ルーシー、本当にダメだからな!フリじゃねーからな!?」


この様子だと、本当に金欠なのか。

まぁ…………そんなことはどうでもいい。



「お待たせしました、『ナンテコッタ・パンナコッタ』です」


耳に当たる部分に特殊なモジュールを着けた女性店員が新作のスイーツ………『ナンテコッタ・パンナコッタ』を持ってきた。

この新作のパンナコッタ、クリームチーズベースのパンナコッタにソフトクリームをのせてそこにヨーグルトソースをかけたものだ。

どうやらその旨さから『なんてこった!』となるため、この名前がつけられたようである。


しかし………名前、長くねぇか?



まぁ、そんなことはどうでもいいとして。




「ルーシー、この店員さんがさっきいってたヒューマギアだよ」


そう。今まさにパンナコッタを運んできた女性店員がヒューマギア。

女性店員ヒューマギアは同族であるルーシーを見ては、物体認識を開始する。

それを証拠に両耳のモジュールが青く点灯し、機械音が鳴り響いている。


おなじように、ルーシーも女性店員ヒューマギアをまじまじと見つめる。


こちらのモジュールも緑色に点灯し機械音が鳴り響いた。



「はじめまして。売田(うりた) こまちです」


「ルーシーです……よろしくお願いします」


やがて互いに物体認識に成功し、女性店員ヒューマギア売田こまちとルーシーは互いに自己紹介する。

女性店員ヒューマギア・売田こまちも客として同族の存在がやってくるとは思ってなかったのか心なしか表情が柔らかくなった。


なんと表現すればいいのだろうか。

人間に生み出されたロボット同士がこうして人間社会に溶け込んで、自分たちと同じように生活して、共に生きる。

『これぞ未来の姿!』というものを垣間見た気がする。



これを感動と言わずしてなんと呼ぶのか。





本当に………


かがくの ちからって すげー!






「………じゃなった!スマイルで住まい売る!スマイルーシーですっ!」



「………ルーシー、君は住宅販売なんかしないでしょ」



まぁ……ルーシーの方は産みの親てある勇騎さんに似たのか、変なタイミングで誰かに吹き込まれたであろう自己紹介をやってのけたのだが。
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