Episode.10 LUCY

「もう………。これ、恥ずかしいんですよ………」

ルーシーは恥ずかしそうに顔を赤らめながら、ノエルの後ろへと隠れる。


そもそもロボットが『顔を赤らめる』ってどれだけ精巧に作られてるんだ………。


『顔を赤らめる』という表情を作るための人間に近い肌や自然に絶妙な表情を作るアクチュエータ、そして『恥ずかしい』と感じる人工知能、それら全てを一気に制御するための機構………。

パッと思い付くだけでもこれだけのことをあの一瞬でやらなきゃいけないんだ。

そもそもルーシーの人工知能の原理は何だ?

確率論なのか?それとも非決定論?


いやいや………コイツの人工知能の原理はそれどころの話じゃないぞ…………。


本当にこれをあの女の子アレルギーのチー牛の勇騎さんが作ったのか?



現にここにいる勇騎さんの作ったのって…………。





「キタネーニンゲンハホロビロ……キタネーニンゲンハホロビロ………キタネーニンゲンハホロビロ………」


………人間に敵意丸出しの戦闘妖精中村さんだぞ。

まぁ、こいつも現実世界のAIよろしく人間を滅亡させる使命に目覚めているが。


確かに戦闘妖精も間違いなく凄いのかもしれないが、明らかにルーシーはそれ以上。

もはや人間のそれと遜色ない。


『AIが人類最後の発明になる』とはいうが、ルーシーを見ればそれも納得出来てしまう。



人類はあらゆる手段を用いて『命の創造』という『神の領域へたどり着く』挑戦が行われてきた。

それは時には遺伝子操作で。
時には機械工学で。


メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』だとか、リディック・K ・フィリップの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のだとか。


人間の死体のツギハギで作った怪物だとか、人間と大差ない人造人間……アンドロイドだとか。


何世紀も前から人類は『自分たちの技術で『命』を産み出す』という夢を抱き続けていた。


そして人類は新たな命を産み出した。


それがAI……人工知能という訳だ。


そして現在ではAIを神として信仰する新興宗教まで出来てしまった有り様だ。



これから人間はどこへ行くのか………




まぁ、そんな小難しい話は置いといて。






「なぁ、ルーシー」


「ハイ、なんでしょう?」


「君は一体何者なの?」


ルーシーに単刀直入に質問する。

ルーシーを……人間によって作られた新たな“命”を俺たちは本当の意味で理解しなければならない。


………なーんて、そこまで深い理由ではないけども。


少なくとも俺はルーシーに……『目の前の完成されたAI』に興味がある。


俺は小首を傾げるルーシーに、熱い視線を送る。




「………いてっ!」


………何故かムスッとしたノエルが俺の尻の肉をつねってきたけども。
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