Episode.9 HOPE

「……私、やっぱりセッテに会いたいです」


「ノゾミ……」

茶色の瓶を握る手に力が入る。
本当はわかってた。
セッテがもう持たないことも。
死期を悟ったセッテが私を呼んでいることも。


「たしかにみんないなくなった。
ふるさともなくなった……。

セッテは今も戦ってるのに私は逃げてしまった……。

だからせめて私はっ……!セッテをひとりぼっちにしたくない!!」


「ノゾミ……」


「彰一さん、ローラさん。
私をセッテに会わせてください……!

なにをしていいかまだわかんないけど……

どうしたらセッテが助かるかもわかんないけど……

今、私に出来ることはセッテに会うことだから……それだけは分かるから……!」


私は彰一さんとローラさんの目をまっすぐ見据える。
2人の姿がハッキリと映る。


やがて二人は根負けしたように微笑むと、彰一さんの方が私に手をさしのべた。


「よく言った……その言葉を待ってたよ」

「ごめんなさい。遅くなってしまって」


──この世界に来てから私は多くのものを失った。

仲間も、家族も、故郷も……なにもかも。

そして唯一残った親友の命すら尽きようとしている。


でもまだ諦めたくない。
希望を捨てたくない。

それでもセッテの命が消えるなら、私はそれを受け入れるしか出来ないのだろう。

だったら私に出来ることはセッテに会うことだけ。


私は彰一さんの手を取ると、セッテの待つ部屋へと向かっていくのであった。


(続く)
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