Episode.9 HOPE

「これはね、オロナミンCっていうジュース!
私はヒューマギアだし飲めないけど美味しいんだってさ!」


ここでローラさんが私の持つ茶色の瓶を解説する。

どうやらこの瓶のなかにはジュースが入っているようだ。



「ビタミンC!ビタミンB!着色料保存料オールエクスティンクション!!

これを飲めば元気ハツラツだよ!」


「ローラ、“オールエクスティンクション”だと色々アブナくないか?」


「……………」


なんなんだろう。

ローラさんがボケて彰一さんがツッコむ。


二人のしょうもない夫婦漫才をみていると、ちょっとだけ元気になれるような気がする。


人間とヒューマギア……異なる者同士がこんなにも心を通じ合わせることができるのか。



きっと、これが……………





「…………っ」


私は瓶の栓を開けるとオロナミンCを一気に飲んだ。

………量は少ないが凄く美味しかった。



炭酸と甘味が程よくマッチしていて……






セッテと………ウェズぺリアのみんなと、一緒に飲みたかったな。

今、生きてるセッテもそう遠くもない未来にみんなの元に逝くのだろう。

……ホントに今のままでいいのかな?

私がひとり残されることが宿命だとしても、セッテがひとり寂しく旅立つのは違うはずだ。


───違うな。

それはあくまでも建前。


私はセッテの存在まで過去にしたくない。

セッテの命が危ういと言う現実を叩きつけられて尚、セッテの命を諦めてない自分がいる。

むしろ諦められるわけなどない。






「…………美味しい」


真夏の空に、口の中に広がる炭酸飲料特有の爽やかな風味。

私の両隣には彰一さんとローラさんの優しい笑顔。




「ノゾミちゃん…………」


ローラさんが私の頭を撫でる。



………この暑さだ。

きっと、汗が目に入ったんだ。




2人の笑顔が、オロナミンCの瓶が滲んでいく。

私は目元をぬぐった。
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