Episode.9 HOPE

「ふんっ!!」


「ぐっ!!」


彰一さんは奴の顔面に拳を叩き込む。

ドンっという鈍い音と共に、鯨男は大きく仰け反る。



彰一さんの拳からは血が滴り落ちた。

しかし、彰一さんは奴から一瞬たりとも目を離さない。




「………よくやってくれたノゾミ。感謝する」


「彰一さん………」


「あとは任せろ」


彰一さんは何処からともなくベルトを取り出す。

その手にはあの鯨男……スプラッシングホエールレイダーと全く同じベルト……レイドライザー。



《RAID RISER!》


「そのベルトは!?」


彰一さんはレイドライザーを装着すると、先ほどの奴と同じようにカードキーのような機械を取り出した。

奴と違うのはそのカラーリングと絵柄。


彰一さんのものは黄色の……バッタが描かれたものだ。



《JUMP!》


「実装」


《RAID RISE……RISING HOPPER!!

A Jump to the sky to a Rider kick》


design


黄金の光が螺旋状に彰一さんの体を包む。

やがてそれが弾けて消えると、その姿を現した。



機械に包まれたロボットのようなボディ。

六角形の赤い瞳。二本の触覚。バッタの脚を模した角。

両肩にはバッタの脚を模したブレードが二本。



機械的でありながら、それは………

私の思い浮かべる仮面ライダーのイメージと何一つ遜色ない姿をしていた。




「………全く、こっちのライダーシステムのメンテナンス中に来やがって。
手間かけさせんなよ。」



───“ライジングホッパーレイダー”。



目の前の敵と同じ法則でネーミングするならこういう名前になるのだろうか。


バッタ男となった彰一さん……ライジングホッパーレイダーの大きな背中を私は見つめる。



──頼もしかった。



そこには私の憧れる戦士の姿があった。

私のお父さんとお母さんがそうだったように、目の前の彼も“希望の担い手”……仮面ライダーだった。



──私はきっとこの人のようになりたかったんだ。

この人のように誰かの心を救い、
この人のようにみんなから頼られて、
この人のように強く……。



だがそのことに私は、ずっと後になってから気づいた。

辛すぎたんだ。
この頃のことを思い出すのも、
どうすればよかったのかって考えるのも。



だから私は心に蓋をして、自暴自棄になって………。






───私はこの大きな背中を、一生忘れることができない。
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