Episode.9 HOPE

「ボケッとすんなよ!そらっ!」


大振りに振るわれる鯨の尾びれを模した扇状の巨大武装。

そこから放たれるのは文字通りのビッグウェーブ。



それは周囲の家屋すら飲み込み私たちに襲いかかる。



「くっ………!!」


《ディフェーンドっ!プ・リーズ………》


怪我のせいで彼女を運んで逃げるなんて不可能だ。

私は咄嗟に魔法を発動させ、魔法陣の盾で奴の水流を防ぐ。



「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「にっ、にげろーーー!!」


スプラッシングホエールレイダーが暴れ始めた途端、住人たちは恐れおののき、我先にと逃げていく。




「くっ………!!」


──もう変身して戦うしかない。

ローラさんを護りながら怪我を背負った脚で、奴を倒すしかこの現状を打破する方法はない。


私は指輪をベルトに翳した。



《ドライバーオン!プリーズ……》


出現するベルト。
そして両腰に装着するメモリスロット。



《EXCEED HOPE!》


今度はガイアメモリを起動し、スロットに装填。

眩い光と共に変身シークエンスへと突入する。


そう………私の最強の力。

不利な状況を逆転させるのなら、もうこれしかない。



《シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!》


「変身!!」


《インフィニット!エクシーーードッ!!》


幾重にも重なる魔方陣は私の体に白き魔法衣を纏わせた。

直後、私は魔力で脚の痛みを遮断する。


脚の痛みはこれで完全に消えた。

少なくともこの戦いの間は誤魔化せるはずだ。



「うわぁ………。

本っっ当、無駄だらけの変身シークエンスだよ、なぁッ!!」


軽口を叩きながら再び扇を振るう鯨男。



しかし………



「お願い!来て!!」


私は動かない。

奴の凶刃が私に迫る。


だが、それが私に届くことはなかった。



───ガキンッ!!



「あぁ………?」


鈍く響き渡る金属音。

露骨に語気が荒くなるスプラッシングホエールレイダー。



私の眼前には、ホープ最強の武装『シザースセイバーガン』が現れていたのだ。
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