Episode.9 HOPE

「………おぉやぁ?

“シンギュラリティ”に達したヒューマギアに負け犬の仮面ライダーのコンビとは珍しいねぇ」


「「───!?」」


想い出に浸る時間に終わりを告げるかのように響く声。

ザリッ……ザリッという砂利を踏む足音が近づくと黒いスーツを着た眼鏡の男が現れた。


私はローラさんから離れるとローラさんを護るように構える。


この間のことといい、コイツも私が仮面ライダーであることを知っている。


もしかしたらアイツの……ジニアの仲間なのかもしれない。



「フフッ……うちのボスと戦って負けたライダーってキミだよねぇ?

せっかくヒューマギアもいるんだ。

………俺の実験にも付き合って貰おうかなァ」


その端正な顔を邪悪な笑みで歪ませる眼鏡の男。

その手には簡素な作りのベルトのようなものが握られている。



《RAID RISER!》


装着すると同時にコールされる音声。

ガイダンスボイスによるとそのベルトは『レイドライザー』と呼ぶようだ。


まさか………仮面ライダー!?




「………っ!」


私も指輪を構えるのだが、この間の戦闘での傷は全くと言っていいほど癒えていない。


特に脚の傷は深く、松葉杖がないとまともに動けないほどだ。




「俺は“ルーイン”……。

実験が大好きなだけの通りすがりの『レイダー』さァ」


《WAVE!》


眼鏡の男………ルーインが取り出したのはカードキーのようなアイテム。

ジニアが変身していた滅とかいうライダーが使っていたものと同型のものだ。



「実装」


《RAID RISE……SPLASHING WHALE!》

《An aqua current that encompasses everything around it.》


起動させたアイテムをベルトに装填し、ベルト側のボタンを押し込むと、奴の体は無数の配管のようなものと水色の二重螺旋のエネルギー体に包まれその姿を変える。


鯨のような仮面、白いロボットのような体、上半身を覆う青いマント。

そして鯨の尾を思わせる杖状の武器。



「レイダー………!
どうしよう……彰一さんを呼ばなきゃ………!」


「“レイダー”……?

“ライダー”じゃないんですか?」


名前の差異はあれどベルトやアイテムで変身する以上、俗にいう疑似ライダーというやつだろうか?



「………さぁ、俺と遊ぼうぜェ、負け犬さん?

ハハハッ……!」


ルーインという男が変身した異形の戦士、“レイダー”。

固有名があるとするならば、使用したアイテムと組み合わせて『スプラッシングホエールレイダー』だろうか。


そんなことはどうでもいい。今は………




「……この状況をどうにかしないと………!」


私は自分自身の浅慮さにより、セッテを危険に晒してしまった。

下手に動けばローラさんまで危険に晒すことになる。



私は指輪を構えながら敵の行動を伺うのであった………。
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