Episode.9 HOPE
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「ごめんなさい………私、ダメな子ですよね」
「ううん……ありがと」
ひとしきり泣いた後、私はローラさんから離れる。
涙をぬぐい、ローラさんを見つめるとローラさんは笑顔を見せてくれた。
どこも私たちと変わらない優しい笑顔。
到底ロボットだなんて思えない。
「…………親方ね、奥さんがいたの」
「………ローラさん……?」
ローラさんと共にベンチに座ると、ローラさんは口を開く。
その手は震えており、私は思わず彼女の手に自分の手を添える。
「でもね……親方の奥さんは6年前に日本で亡くなったらしいの。
殺されたの………怪物に」
「そんな……!?」
ここに来る前、ニホンという国で彰一は暮らしていたという。
しかし彰一さんは、ニホンで奥さんを亡くしてから単身でアイギスの街にやって来たのだと。
そして彰一さんの奥さんの命を奪ったという怪物……もしかしたらあのエスポワールの街にいたあの怪物だろうか?
心の傷が開くのであまり思い出したくはないが、忘れてはいけない“罪”のひとつだ。
「そして何か事情があるのかは分かんないけど、その息子さんにももう会えないらしいの………。
だから日本を離れてアイギスの街にいるみたいなんだけど………」
「………」
そっか……彰一さんも大切な人を失ったんだ。
しかも息子さんにも会えないなんて……。
………この世界に来てから、本当に泣いてばっかりだ。
なんかまた涙が溢れてくる。
……なんでこんなに辛いことばっかりなんだろう。
『希望の担い手』を自称して、今まで戦ってきたけど私は何も知らなかったんだ。
私にはお父さんもお母さんも、妹もいて、仲間も沢山いた。
この世界に来るまでは心が折れそうになったことは何回もあったけど、それでも環境には恵まれていたし、暗い過去なんてものは……正直なかった。
───絶望なんてものと無縁の、生ぬるい世界で生きてきたんだ、私は。
だから本当の意味での『希望』なんて一度も考えたことなかったんだ。
みんな大切なものを失って、絶望に打ちのめされて、それでも自分の両足で立って歩いている。
みんなそうやって絶望と戦って、折り合いをつけてきたんだ。
あぁ………『希望の担い手』なんて名乗ってた自分が恥ずかしくなってきた。
私は………何も知らなかった。
知ろうともしなかったんだ。
「………ノゾミちゃん」
「ご、ごめんなさい………みっともないですよね」
「ううん……ありがとね。私の代わりに泣いてくれて」
そういってローラさんは私の頭を撫でてくれた。
彰一さんとは対照的に細くしなやかな指。小さな掌。
でも、懐かしい感触だった。
そう、この手はお母さんの手。
彰一さんにお父さんの、ローラさんにお母さんの面影を重ねてようやく気がついた。
私はこんなにも弱いんだって。
誰かに甘えてなきゃ不安で仕方ないんだ。
でも今は…………少しだけでいいからこの掌の記憶に寄り添いたい。
私は、ローラさんに甘えるように静かに目を閉じた。
「ごめんなさい………私、ダメな子ですよね」
「ううん……ありがと」
ひとしきり泣いた後、私はローラさんから離れる。
涙をぬぐい、ローラさんを見つめるとローラさんは笑顔を見せてくれた。
どこも私たちと変わらない優しい笑顔。
到底ロボットだなんて思えない。
「…………親方ね、奥さんがいたの」
「………ローラさん……?」
ローラさんと共にベンチに座ると、ローラさんは口を開く。
その手は震えており、私は思わず彼女の手に自分の手を添える。
「でもね……親方の奥さんは6年前に日本で亡くなったらしいの。
殺されたの………怪物に」
「そんな……!?」
ここに来る前、ニホンという国で彰一は暮らしていたという。
しかし彰一さんは、ニホンで奥さんを亡くしてから単身でアイギスの街にやって来たのだと。
そして彰一さんの奥さんの命を奪ったという怪物……もしかしたらあのエスポワールの街にいたあの怪物だろうか?
心の傷が開くのであまり思い出したくはないが、忘れてはいけない“罪”のひとつだ。
「そして何か事情があるのかは分かんないけど、その息子さんにももう会えないらしいの………。
だから日本を離れてアイギスの街にいるみたいなんだけど………」
「………」
そっか……彰一さんも大切な人を失ったんだ。
しかも息子さんにも会えないなんて……。
………この世界に来てから、本当に泣いてばっかりだ。
なんかまた涙が溢れてくる。
……なんでこんなに辛いことばっかりなんだろう。
『希望の担い手』を自称して、今まで戦ってきたけど私は何も知らなかったんだ。
私にはお父さんもお母さんも、妹もいて、仲間も沢山いた。
この世界に来るまでは心が折れそうになったことは何回もあったけど、それでも環境には恵まれていたし、暗い過去なんてものは……正直なかった。
───絶望なんてものと無縁の、生ぬるい世界で生きてきたんだ、私は。
だから本当の意味での『希望』なんて一度も考えたことなかったんだ。
みんな大切なものを失って、絶望に打ちのめされて、それでも自分の両足で立って歩いている。
みんなそうやって絶望と戦って、折り合いをつけてきたんだ。
あぁ………『希望の担い手』なんて名乗ってた自分が恥ずかしくなってきた。
私は………何も知らなかった。
知ろうともしなかったんだ。
「………ノゾミちゃん」
「ご、ごめんなさい………みっともないですよね」
「ううん……ありがとね。私の代わりに泣いてくれて」
そういってローラさんは私の頭を撫でてくれた。
彰一さんとは対照的に細くしなやかな指。小さな掌。
でも、懐かしい感触だった。
そう、この手はお母さんの手。
彰一さんにお父さんの、ローラさんにお母さんの面影を重ねてようやく気がついた。
私はこんなにも弱いんだって。
誰かに甘えてなきゃ不安で仕方ないんだ。
でも今は…………少しだけでいいからこの掌の記憶に寄り添いたい。
私は、ローラさんに甘えるように静かに目を閉じた。