Episode.9 HOPE
「………そうだ、ローラさんはヒューマギア……でしたっけ?
この国の外から来たみたいですけど」
話題を変えるべく、私はローラさんに話を振る。
ヒューマギア……すなわち機械(オートマタ)という訳だが、人間と遜色ない優しさと感情を見せる彼女の事が気になったからだ。
しかし、これが見事に地雷を踏むこととなってしまう。
「あー………私ね、『日本』って国の『飛電インテリジェンス』っていう会社で作られたの」
「シャングリラの次はニホン………ですか」
「うん………」
えーっと、確かニホンって彰一さんの故郷、だっけ。
もしかしてニホンで彰一さんと出会って、結婚して一緒にこの街に引っ越してきたのかな?
………当時、私はそういう風に思っていたんだ。
だって彰一さんとローラさん、あんなに仲がよくて二人とも優しいし、それにローラさんも凄く明るいからきっと辛いこととかそんなの経験してないって、そう思ってたの。
でも………
「私はね、親方に出会う前に別のご主人様がいたの」
「そうなんですか?」
「……飛電インテリジェンスはね、Webサイトからヒューマギアを発注することが出来るの。
お金さえ積めば容姿すら自由にカスタマイズできる。
そう、ヒューマギアは始めから人間の“道具”………。
私は人気のある女優を模して作られた風俗嬢ヒューマギアなの」
「風俗嬢?」
本当なら空気を読んでそれ以上聞かなければ良かったんだ。
それに私は“そういう知識”に関してはからっきし。
自身の場の空気を読めない頭の悪さと無知を呪うしかなかった。
「うーんとね……ざっくりいうとお客様とセックスしてお金を貰う……って感じ。
私はヒューマギアだからお金なんて貰えないけど」
「………え……?」
少し困ったような顔をしながら彼女は一言。
ここでようやく、私はこの質問をしたことを後悔した。
「ヒューマギアって元々人間のお仕事をサポートするために作られたものだから、そういうヒューマギアだっているの。それが私。
だから私のボディは普通のヒューマギアと違って特殊なシリコンが使われてるし、骨格も軽くて頑丈なものが使われてる。
………ちょっと触ってみて」
「え!?ちょっと!?」
ローラさんは私の手を掴むと自分の胸に私の手を押し当ててくる。
………ロボットとは思えないくらいに柔らかい。
て言うか人間の私の胸より柔らかいかもしれない。
「………どう?」
「やっ、柔らかい………です。凄く………」
顔が熱い。そして恥ずかしい………。
でもローラさんの顔を見て見ればローラさんの顔からは笑顔が消えており、どこか辛そうな顔をしていた。
きっとそれほど思い出したくないことなのかもしれない。
「風俗嬢ヒューマギアとして作られた私は人件費も休息も必要ない風俗嬢として、日本のお店で働かされた。
やっぱりモデルになった女優さんの人気がすごかったからお客さんはたくさん来てくれた。
ハードなプレイを強要するお客さんもいたし、調教なんて言って私に暴力を振るうお客さんもいた。
でも、これが私に与えられた役割なんだって……
私が私として産まれてきた“宿命”なんだって……
そうやって疑問にすら思わなかった」
「…………」
聞くのも辛い話だし、辛そうにしている彼女に話させるのも辛い。
こんなときに気の効いた返しが出来れば、と本当に思う。
そしてそれが出来ない自分に本当に腹が立つ。
私は………彼女に何が出来るのだろうか?
「でもね、結局私は自身の存在すら許されなかった………
人間が作った法律………『人工知能特別法』のせいで………」
「え………?」
この国の外から来たみたいですけど」
話題を変えるべく、私はローラさんに話を振る。
ヒューマギア……すなわち機械(オートマタ)という訳だが、人間と遜色ない優しさと感情を見せる彼女の事が気になったからだ。
しかし、これが見事に地雷を踏むこととなってしまう。
「あー………私ね、『日本』って国の『飛電インテリジェンス』っていう会社で作られたの」
「シャングリラの次はニホン………ですか」
「うん………」
えーっと、確かニホンって彰一さんの故郷、だっけ。
もしかしてニホンで彰一さんと出会って、結婚して一緒にこの街に引っ越してきたのかな?
………当時、私はそういう風に思っていたんだ。
だって彰一さんとローラさん、あんなに仲がよくて二人とも優しいし、それにローラさんも凄く明るいからきっと辛いこととかそんなの経験してないって、そう思ってたの。
でも………
「私はね、親方に出会う前に別のご主人様がいたの」
「そうなんですか?」
「……飛電インテリジェンスはね、Webサイトからヒューマギアを発注することが出来るの。
お金さえ積めば容姿すら自由にカスタマイズできる。
そう、ヒューマギアは始めから人間の“道具”………。
私は人気のある女優を模して作られた風俗嬢ヒューマギアなの」
「風俗嬢?」
本当なら空気を読んでそれ以上聞かなければ良かったんだ。
それに私は“そういう知識”に関してはからっきし。
自身の場の空気を読めない頭の悪さと無知を呪うしかなかった。
「うーんとね……ざっくりいうとお客様とセックスしてお金を貰う……って感じ。
私はヒューマギアだからお金なんて貰えないけど」
「………え……?」
少し困ったような顔をしながら彼女は一言。
ここでようやく、私はこの質問をしたことを後悔した。
「ヒューマギアって元々人間のお仕事をサポートするために作られたものだから、そういうヒューマギアだっているの。それが私。
だから私のボディは普通のヒューマギアと違って特殊なシリコンが使われてるし、骨格も軽くて頑丈なものが使われてる。
………ちょっと触ってみて」
「え!?ちょっと!?」
ローラさんは私の手を掴むと自分の胸に私の手を押し当ててくる。
………ロボットとは思えないくらいに柔らかい。
て言うか人間の私の胸より柔らかいかもしれない。
「………どう?」
「やっ、柔らかい………です。凄く………」
顔が熱い。そして恥ずかしい………。
でもローラさんの顔を見て見ればローラさんの顔からは笑顔が消えており、どこか辛そうな顔をしていた。
きっとそれほど思い出したくないことなのかもしれない。
「風俗嬢ヒューマギアとして作られた私は人件費も休息も必要ない風俗嬢として、日本のお店で働かされた。
やっぱりモデルになった女優さんの人気がすごかったからお客さんはたくさん来てくれた。
ハードなプレイを強要するお客さんもいたし、調教なんて言って私に暴力を振るうお客さんもいた。
でも、これが私に与えられた役割なんだって……
私が私として産まれてきた“宿命”なんだって……
そうやって疑問にすら思わなかった」
「…………」
聞くのも辛い話だし、辛そうにしている彼女に話させるのも辛い。
こんなときに気の効いた返しが出来れば、と本当に思う。
そしてそれが出来ない自分に本当に腹が立つ。
私は………彼女に何が出来るのだろうか?
「でもね、結局私は自身の存在すら許されなかった………
人間が作った法律………『人工知能特別法』のせいで………」
「え………?」