Episode.9 HOPE

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『アイギス』。

東南アジア(……でしたよね彰一さん?)に位置する『シャングリラ』という国の中にあるこの街は、私の故郷であるアトラン王国を思わせるレンガ作りの建物の数々が見るものを圧倒する。


彰一さん曰く、『時代錯誤が過ぎる』とのことだが、私は故郷を思い出させてくれるこの街には……

ノスタルジックな気分に浸らせてくれるこの街にはこんな事件がなくても何度も足を踏み入れたいと思う。




「………どう?素敵でしょ?ここの街も人も」


ローラさんに言われ、松葉杖をつきながら辺りを見回す。



──そこはまさに“理想郷”。

人々の笑い声で賑わうこの街は、私の世界“ウェズペリア”と違い、狂暴な原生生物も悪の組織もなく、人々は皆穏やかな表情をしていた。




「はい………。

でも、なんでこの街はこんなに平和なんですか?」


私は思ったことをそのままローラさんにぶつけてみる。

この間のあの男……ジニアのこともあるからだ。


この世界にも怪人はいるし、ジニアのような強力なライダーが彷徨いているというのに………この街の住人たちはその存在も知らないのだろうか?




「それはね、“三戒”っていうものがあるから………だってさ」


「……“三戒”?」


「アイギス………ううん、このシャングリラって国の国民たちが共有する教えだよ。

“人間を信じろ”

“人間同士で争うな”

“争うための力を持つな”


………簡単に言えばこんな感じの教えなんだけど、この教えによって国が守られているから争いが起きないんだってさ。

私はこの国のヒューマギアじゃないからよく分かんないけども」


「へぇ………」


私もよくわからないのだが、この教えで争いが起きないのなら越したことはない。

ただ……争いは何も自国の中だけで起こるものではない。


仮にこの国の外にいる者たちに敵意を向けられたとき、“この三戒とやらは本当に機能するのだろうか”?



………いや、やっぱり今は余計なことを考えるのはやめにしよう。



私はもう疲れきってしまったのだから。
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