「ごめんなさいね、ノゾミちゃん。

親方はTシャツの趣味が最悪だから」


「このTシャツのセンスが解らんとは……フッ、見る目ねぇな」


苦笑するローラさんに対し彰一さんは全く動じずに一言。


…………ごめんなさい、どうやら私も見る目ないみたいです。



「ノゾミ、お前なら解るよな？このTシャツの良さが」


「え………あ………」


……困った。さすがに命の恩人に面と向かってそのセンスはないとは言えない。


て言うか、今私が着ているローラさんが用意してくれた着替えのTシャツも多分彰一さんのセンスだ。


なんか黒字に地球のイラストが書いてあってデカデカと『うちゅ～ん』って書いてあるんだもん。



「ちなみにこのTシャツは俺がネットで買った奴だ……あるアパレルショップのオーナーが直々にデザインしたものだ。

今はプレミアだって………」


「もぉ～……なにいってるんですかぁ……つきませんよ、そんなの。

あっ！ホントごめんねノゾミちゃん！

着替えの服なかったとはいえファッションセンス皆無の親方が選んだTシャツ着させて！」


「いっ……いえ………」


だ、ダメだ………気まずい………。

プレミアものといっても、彰一さんのセンスに関しては、ローラさんに全面的に同意なのだけども流石に面と向かって『ダサい』とは言えないっ！



どうしよう………本当にどうしよう……！



「ローラ……あまり怪我人を困らせるな……。

ホラ、女の子が好きそうなのもあるぞ」


そういって彰一さんが自慢気に見せてくるのは魚に４本の脚が生えたキャラクターがプリントされた水色のTシャツ。

キャラクターの下には『メザシイヌ』と書かれている。


………いや、これ犬なの！？魚じゃなくて！？



「明日の朝はこれに着替えるといい。

きっと似合うと思うぞ。ハハハ……」


「あ、ははは……

ごめんね。ホントごめんねノゾミちゃん。

うちの親方、Tシャツに関しては人の話聞かないから……明日何か他の買ってくるね」


ものすごくいい笑顔の彰一さんと苦笑いして私に耳打ちするローラさん。





うん………これは流石に………




………ローラさんに何か買ってもらおうかな。