Episode.9 HOPE

「晩御飯、持ってきたんだ。食べてくれ」


「ごめんなさい………私には食べる資格なんて………」


ぐぅぅぅ~~………


「っ!?///」



───最悪だ。


お腹は空いてたのは理解していた。

でも、なんでこんなタイミングで腹の虫がなるの!?


ダメだ………恥ずかしすぎて、彰一さんの顔をまともに見ることができないっ!!




「……食べる資格が云々とか言ってる場合か………ホラ」


テーブルに料理の乗ったお盆を置くと、彰一さんは私に肩を貸す。


さすがにこれ以上わがままを言う訳にも、彰一さんたちを困らせる訳にはいかない。


私は彼の肩を借りて立ち上がるとテーブルまで行き、椅子に座る。



お盆に乗った料理は卵雑炊。

解きほぐした卵とトロトロのご飯、そして小ネギを散らしただけのシンプルなもの。

私の世界にも普通にあるフツーの料理。


だが、消化にいい優しい食べ物である。



「………俺にはこんなモンくらいしか作れなかったが、食べてくれ。

何も食わねぇよりマシだろ?」


「はい………」


隣で親友が起き上がれないほどに苦しんでいるのに……私は何をぬくぬくとしているのだろう。


本当は私が苦しむべきなのに。


それでも私は、れんげを手に取りお椀から雑炊を掬って口に入れる。




「…………美味しい」


口の中で広がる優しいおだしの味。


………懐かしい味だった。



小さいころにお母さんが食べさせてくれたっけ。




「…………」



そこからは何も話さなかった。


………何も話せなかったと思う。


ただひたすらに雑炊を口に放り込んで、飲み込む。


少しずつ、少しずつ塩っ辛くなっていったのを覚えている。




隣にいる彰一さんの笑顔が少しずつ滲んで…………





それから…………それから………………!






「…………そんな慌てて食べなくてもいい。ゆっくり食べな?」



「うん………!うんっ………!!」



───ごめんなさい。


みんなごめんなさい。


私はどうしようもない子だよね。



みんなのこと助けられなくて。

セッテも苦しませて、ひとりぼっちにして。




痛かったよね?怖かったよね?




なのに………私はこうしてひとりだけ助かってしまった。




私だけ……こうしてぬくぬくと美味しいご飯を食べている。







「ごめんなさい………!ごめんなさいっ……!!


………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



私を包み込む腕に甘えるようにしがみつき泣き叫ぶ。




──あぁ、私は本当にどうしようもない子だ。



こないだ私のおしっこやウンチで彰一さんのスーツをダメにしたばっかりなのに、今度は彰一さんの上着を濡らしてしまった。
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