「気持ちは分かるがな…………」


バツの悪そうな顔をする彰一さん。

確かに会って数日だが、この人がいい人だってのは分かる。


初めてここに来た日、日が暮れて部屋が真っ暗になった時に私はパニックになってしまったのだ。

泣きわめいて暴れて、恐怖や開いた傷の痛みで…………恥ずかしいことに失禁してしまい、服や床、そして私を落ち着かせるために抱き締めてくれた彰一さんのスーツを盛大に汚してしまった。


それなのに、彰一さんやここにいる人たちは嫌な顔ひとつせずに私がしでかした粗相の後始末までしてくれた。
　
彰一さんのスーツもダメにしてしまった。


本当は困らせたくないのに。



それでも…………。




「ごめんなさい………

今はひとりにしてください…………！」


怖くて、悔しくて、情けなくて………。

涙が次から次にあふれでてくる。


拭っても拭っても涙は止まりはしない。


彰一さんは私の頭を撫でる。



「わかった………。

気が向いたらいつでも俺なり他の仲間なり呼んでくれればいいからな」


彰一さんはそういって微笑む。

それが申し訳なくてまた涙が溢れてくる。



「親方ーーーーー！！」


家中に響き渡る女性の声。

それと同時にバンッと勢いよくドアが開く。



「オイ、騒々しいぞローラ！どうした？」


白いアオザイに身を包む褐色肌の女性。

金色に染めた長髪を後ろでまとめており、そのスタイルはモデル並みのプロポーションのよさ。

両耳には機械的なモジュールをつけており、右手の甲にバーコードを思わせる刻印。


彼女は『ローラ』。


私とセッテの二人の面倒を彰一さんと見てくれている女性。

着替えや体を洗う手伝いをしてくれるのも彼女だ。

私が粗相をしたときに体を洗ったり、着替えさせてくれたりしてくれたのも彼女だ。


ちなみに彼女は人間ではない。

汎用人工知能搭載人型ロボ……『ヒューマギア』。


人間の仕事をサポートするロボットなのだそうだ。


ちなみにローラさんは“今は”介護用のヒューマギアなんだそうな。


私を掘り起こした時に彰一さんといた三人の男の人たちもヒューマギアみたい。




「ノゾミちゃん大丈夫ですかーーー！？」


「声でけぇよ！ノゾミがびっくりするだろうが！」


「私、心配なんですよぉ！」


彰一さんに引き続き、私を心配してくれるローラさん。



───なんか更に情けなくなってきた。



まさかロボットにまで心配されるなんて………。


私は再びベッドに横になると毛布にくるまる。

無論、真っ暗にならないように顔は出して………だ。



「えっ！？どうしたんですかノゾミちゃん！？」


「お前がやかましいからだバカタレ」


私は二人の漫才(？)が終わるのを、ずっと待っているうちにいつの間にか眠りに落ちていた。