Episode.8 Re:BUILD

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「……………見えたか?これがお前が見た、ウェズぺリアの最期の瞬間だよ」


気がつくと目の前には紫のライダー。

私の意識は現実へと戻ってきた。




「っ!!

ヴッ………!ヴェッ……!」


最期の光景に吐き気を催してしまい、たまらずに変身を解除すると、その場で嘔吐してしまう。


びちゃびちゃという音と共に、吐瀉物が撒き散らされ、すえた匂いが充満する。




「ふん……そんなに恐ろしい光景だったか?」


「なんで…………。なんでこんな事を……っ!!」


吐瀉物にまみれながらも私は口をぬぐい、奴をにらむ。

奴は黄色の複眼を不気味に輝かせながら、私と未だ壁に寄りかかるイージスを一瞥する。



奴の瞳の妖しく冷たい光が私たちを貫く。







「お前たち“人間”って………醜くないか?」


「醜い………?」


奴の吐く言葉に、私は奴を睨み返す。

ありきたりな悪役のありきたりな戯れ言。


そう、思えたからだ。


だが、奴は言葉を続ける。




「アハハ……そんな顔すんな。

俺が一番解ってるさ………。

ありきたりな悪役の、ありきたりな戯れ言だってな。


だが……奴らは“可能性”だとか“希望”だとか。

綺麗事をぬかしながら、その本質は他人を踏みつけて傷つけて……。

ちっぽけな欲望を満たすことしか考えてねぇ…………

それはお前も心当たりあるだろ?」


まるで自嘲するかのように笑うと、言葉を紡いでいく。

しかし、その表情(かお)は仮面に阻まれて見えない。




「それは………」


「……俺は“正義のヒーロー”だとか“誰かの希望”だとか。

そんなものになるつもりはねぇし、
もちろん“神”だとかくだらないものになるつもりもサラサラねぇよ。

そんなモン、自覚して目指した瞬間から“失格”だからなァ。


だが………いや『だからこそ』、かな。

……俺は“どんな泥を被ってでも”世界を再構築(リビルド)すると決めた。


悪と罵られようが、どんな罪を背負おうと……
 

悪役らしくそういえば、少しは満足するのか?」


「黙れェェ!!!」


私はただ醜く叫ぶ。

奴のために私の世界は、私の大切な人たちは消えてなくなったんだ。


私から大切なものを全て奪ったんだ。



こいつは………紛れもなく“悪”だ!
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