Episode.8 Re:BUILD

「ノゾミ!待って!!」


「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


イージスの制止すら振り切り私はあの男に切りかかる。何度も何度も。


普段なら生身の相手に攻撃なんてことはしない。

でも今は事情が違う。

目の前の奴だけはそこまでしてでも倒さなければならない。


私の本能が警鐘を鳴らしているのだ。


“早く奴を殺せ”………と。



「はぁ…………」


しかし男はため息をつき、それら全てを僅かに体を反らして全てを避ける。


私だってウェズペリアで必死に戦ってきて、その度に強くなって………

少なくとも変身しなくてもある程度の怪物となら戦える身体能力はある。

そしてホープに変身することでその身体能力は爆発的に上昇する。



なのに、なんで私は変身もしていないこの男に苦戦しているの!?




「なんでっ!なんで私の事を知ってるの!?」


「そりゃ“視た”からな。

お前だけじゃない……お前のツレ……セッテ・クロハラのこともよーく知ってるよ」


「ふざけんなっ………うっ!!」


これは“恐怖”か“怒り”か………

奴の言葉ひとつで私の心が掻き乱され、そのせいで振るった刀が大振りになってしまう。


それを敵が見逃すこともなく、私は奴の蹴りを腹に受けて仰け反ってしまう。




「どうした?セッテの方は冷静だぜ……?」


うっすらと笑みを浮かべる男。

私を見下しているのだろう………




──だったらそんな顔出来ないくらいに力の差を………




「………“力の差を”………なんだ?」


「!?」


私の心を読んだかのように、再び呆れたような顔をする男。

その手には見覚えのあるベルトとジュエル。



男はベルトを腰に装着するとその昏(くら)い瞳を私に向ける。

哀れみといった感じだろうか?


その目を見ているだけで怒りが込み上げてくる………。




「………強化形態にでもなれば勝てるとでも思ってんのか?

──それはただの驕りだ………愚か者」



私たち……特に私への哀れみをはらんだ目、言葉。


頭に血が登っていたあのときの私は全く理解出来なかった。



なんであの男がそんな顔をしていたのか。


本当はどうするべきだったのか………。




私は…………本当にバカだ。




「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「はぁ………本当に哀れだな」


セッテを置き去りにして奴に切りかかる私。

私を哀れむ白髪の男………。



───こうして私はまた、過ちをおかそうとしていた。
11/35ページ
スキ