Episode.8 Re:BUILD

「ふぅ……………やっと着いた………」


私たちは町の前まで来ると、使い魔から降りて辺りを見回す。


寂れた田舎町だ。
人の気配はあまりしないけど…………




「「………」」


とりあえず人を探す前に……やることがある。

私たちは目の前の看板に“意識”を向ける。


無意識だと“それ”は理解出来ないが、こうして“意識”を向けることで、どういうわけか文字や言葉を理解することができる。

そのせいだろうか?

今まで行った異世界やそこで出会った人たちとは何故か言葉が通じていた。



本当に“何故か通じていた”と表現するのが適切ではないかというくらいだ。


だからこそその原理も説明できないし、いつ身につけたものなのか……というのも分からない。



ただわかるのは………この“力”は便利だ。




「なになに………

“ようこそ。希望の町・エスポワールへ”………

なるほど、この町は『エスポワール』っていうんだ」


まずはセッテがその文字を読み上げる。

意識していなかった頃にはその文字の意味すら理解できなかったが、今はこうして文字を読むことすら出来る。



しかし………エスポワールかぁ………





「……なんかざわ……ざわ……してそうだよね」


「なんで?むしろシーンとしてるじゃん」


セッテのクール(?)なツッコミ。

ちょっと場を明るくしたかったからボケたんだけど、手厳しいなぁ。

…………あ、元ネタ知らないのか。



まぁ、それはおいといて。




「ま、まぁ。行こうよ。まずは情報収集!」


「だね………ってノゾミ!?」


むしろビミョーになってしまったこの空気を何とかするべく、私はセッテの手を掴みエスポワールの街へと入っていった。



私に手を引かれ困ったように笑うセッテには言えない。




この世界に来るまでに何があったかは思い出せない。


でも、それは思い出しちゃいけない。


少なくとも今は混乱をもたらすだけだ。





………いや、これは建前なのかもしれない。




私はただ………………





───思い出すのが怖い。


きっとそれをどこかで認めたくないのだ。
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