Episode.8 Re:BUILD

「………ここはウェズペリア……じゃないよね……?」


私はガルーダの背中から辺りを見舞わす。


ウェズペリアにも『ビャッコの森』という大きな森があるのだが、ビャッコの森特有の植物も見られなければ、あの森で生態系を築いていた原生生物や魔物たちの気配すら感じられないのだ。


本当に何もない、ただ鬱蒼と繁った木々が行く手を阻むだけの森。


常に命の危険と隣合わせで、魔物の巣窟であったビャッコの森とはまた違う恐怖すら感じてしまう。



そう………“当たり前だと思っていたもの”が足元から崩れ落ちていく、そんな感覚。



他の世界に飛ばされたことはこれまでも何回もあったし、いろんな世界に行った。


ただ、今回はどう説明したらいいのだろうか…………




──“今までと何かが違う気がする”。





「多分別の世界なんだと思う………。

とりあえず早く町に出て、情報収集しなきゃね」



セッテの言うとおりだ。

まずは自分たちの状況をちゃんと把握する必要がある。


何をするにしても、状況の把握とこの場所に関する情報がなければ動けやしない。



だから……なんとしても日がくれる前に町を目指さなきゃ。




「もっと飛ばして!ガルーダ!」


「ユニコーンも!」


それぞれ使い魔に指示を飛ばす。


それに呼応するかのように鳴き声をあげ、使い魔たちはその移動スピードを早める。



風を切りながら空を飛ぶ、このなんとも言えない感覚。



まるで自分が小鳥になったようなそんな感覚が心地よかった。


でも今はそんな心地よさすら感じる余裕なんてなかった。


『早く安心したい』
そんな不安に急かされてるような気分だった。






「………セッテ!町が!町が見えてきたよ!」


「よかった………!日がくれる前に着いて」


『小鳥になって空を飛ぶ』。

普段ならきっと楽しいショータイムになっていたのだろうけど、それはもうおしまい。


目的地である町が見えてきた。

とりあえずさっさと情報収集しないと。




「もう少しだよ!頑張って!」


ガルーダとユニコーンを励ましつつ、私は目の前の町の入口を見る。


どことなく懐かしい雰囲気の漂う町。


どことなく私たちの故郷に似たその町の名前は………今はまだ読めないけども。



これでやっと休める。



私はほっと胸を撫で下ろすのでした。まる。



…………って、私は誰に話しかけているのだろう?まっ、いっか。
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