Episode.8 Re:BUILD

─────


「……………ミ…………


……………………………ゾミ……………」





───声が聞こえる。




聞き覚えのある声。


懐かしくて………優しくて。


今はもう、思い出せないけども。



目が開けられない。

体が重くて、ダルくて………。



上下左右すらわからない。



ただ、体を包む気だるさと、“声”が聞こえるだけだ。




私は…………一体どこにいる?





私は………“誰”なの?



どんな“形”をしてたっけ?



何になりたかったんだっけ?




何も……………何も分からない……………!




「ゾ………………ミ………………」



────助けて!

しかし、そんな助けを求める声すら出ない。



その間にも声は遠退いて行く。

どんどん私を“何か”が蝕んで行く。


どす黒いものが私を私たらしめているものを侵食し、私を形作っていた領域を蝕んでいく。




怖い…………誰か…………助けて……………




このままじゃ私は…………………!






「─────ノゾミィィィ!!」


「っ!!」


一段と大きな声が響きわたる。


それと同時に眩い光が私を包む。



そして“光”が私を形作り、この世界に引き戻したのだ。




「よかった…………ノゾミ……………!」


「…………セッテ」



───気がつけば私は森の中にいた。


目の前には涙を浮かべた“親友”。

彼女は私の体を抱き締める。

彼女のピンクの長髪が私の首筋に触れ、くすぐったいがその感触を確かに味わえているのが幸せだと思う。



私は……夢でも見ていたのだろうか?



だが……………




「ねぇ……………ここは……………どこ?」


薄暗い森の中に、私と親友……セッテのふたりだけ。


ここがどこかすら“分からない”。



『思い出せない』のではなく、『分からない』のだ。



まるで記憶の一部を消されたかのように。

過程を飛ばして結果だけ見せられているかのように。



とにかく、なにがなんだか分からないのだ。




「分からない………私も気づいたらここにいたの」


ここにいるのは私とセッテのふたりだけ。


何もない状態で放り投げられた未知の世界。




───これが私たちの長い戦いの始まりだったのだ。
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