Episode.7 REUNION

「さて、と………」


俺をからかい倒し、ひとしきり笑うと理緒は立ち上がった。

そして、カウンターの後ろからエコバッグを取り出すと俺にエコバッグを突き出してくる。

キティちゃんのマスコットのついた可愛らしいやつだった。




「へっ?なにこれ?」


「買い出し行ってきて?」


「えー…………」


俺は窓の外を見た。

昼時を少し過ぎた真夏の街中は、太陽の熱を受けて一目見ても暑いってよくわかる。

しかもなんか蜃気楼的なアレ、見えてんじゃん。

絶対出たくない。
暑いのが嫌だからお店に来たわけで。



「嫌だよ……これで買い出しなんていったら本末転倒じゃん。
死ぬよ俺。ミイラになる」


「こんなに暑いんだ…………今行けばミニスカートのお姉さん一杯いるかもよ?

こんなに暑いからきっとお姉さんたちも隙だらけだろうなぁ」


「なんですとっ!!」


ミニスカートのお姉さんが隙だらけ!
これは眼福モンだぁ!


だが、ちょっと待て………




「で、でも……この暑さで外に出るのは………」


この暑さで店の外に飛び出すのは弾丸飛び交う戦場を全裸で飛び込むようなもの。

リスクも何も考えず外に飛び込めば文字通りの『飛んで火に入る夏の虫』になっちまう。


……あれ?なんか違う?




「それとも………ノエルちゃんだけでなくボクの事までイヤらしい目で見てたこと、ノエルちゃんにはなす?」


わざわざスカートの裾を掴み、ほんの少しだけたくしあげながらニッコリ。

おぉ、あと少しでお召し物が……!

だが、ここで本能に任せて真夏の炎天下に飛び込む?

いやいやいや……それは文字通りの死を意味するぞ俺。
本能に振り回されるなっ!



「うっ………。俺に夏の虫になれと?火中に飛び込めと?」


「じゃあさ……」


ニッコリと笑い、理緒は椅子に座る俺の太ももに座るとぐっと自身の胸を俺の体に押し付けてきた。

そして………



「帰ってきたら…………


………ご褒美あ・げ・る☆」


更に顔をぐっと近づけると理緒は俺の耳元で囁く。

なんともいいかおり。
なんとも柔らかい感触。



───その瞬間、理性と共に俺の躊躇いは完全に消え去った。








「行きます。ごほうびのため炎天下の中で買い出しに行きます」


「よろしい!じゃこれリストと袋ね!」






「行ってきまぁぁぁぁぁす!!!」





そう、俺は健全なる日本男子。

大和の魂を受け継いだ男。


ご褒美の為なら自ら炎の中に飛び込むし、なんなら弾丸が飛び交う戦場でも全裸で盆踊りするさ。



俺は理緒から買い物袋と財布、そして買ってくるものが記されたメモを受け取ると勢いよく店を飛び出した。







嗚呼、俺って…………ホント、バカ。
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