Episode.6 RAINY

───

「おつかれさん、理緒」


「うん、ありがと」


結局あのアポロンとかいう男は通りすがりの仮面ライダーことゼロワンに回収されたし、勇騎さんに続き将さんと輝も入院することになった。

将さんと輝、ふたりの入院手続きを終え、俺と理緒はBATTLERで一息つく。


俺は手作りのコーヒーを注いだマグカップを差し出すと窓の外を見た。


窓の外にはどこまでも続く青い空。
昨日から降っていたいた雨も上がり、日の光が射し込んでいた。


そして、アルはというとお店の外の広場にてノエルのお守りに手を焼いている。
クールなのは見た目だけで、普段マイペースなアルがノエルたちに振り回されているのはなかなかお目にかかれる光景ではない。




「イヌヌワン!イヌヌワン!」


「ま~てまて~」


「あなたたちが待ちなさい……!

あー……もう!おなかすいたー……」


こないだ拾ったバイク犬・ヒメとおいかけっこをするノエル。

そんなノエルたちに振り回されるアル。

うーん、なんとも微笑ましい光景だ。


流石にそこに割り込む体力もないので、アルとノエルたちの姿を窓の外から眺めるだけにしているが。




「良かったな、晴れて」


「ん?」


「いーや、雨嫌いって言ってたからさ」


俺もグラスにお冷やを注ぎ、飲み干す。

キンキンに冷えた水が夏の日差しに火照った体をほどよく冷やしてくれる。



「うん、ホントよかった。

巴ちゃんも喜んでる……」


「そっか……」


そういうと理緒はBATTLERの店内へと視線を向けると、そこにいる誰かに笑いかけた……ように見えた。


……そうだよな。

今でも理緒の親友は……巴ちゃんは理緒の傍にいるんだよな。


理緒のこと、護ってくれてるんだよな。




「本当によかった……。

──理緒たちの“雨”も晴れたんだな、これで。


……って俺のキャラじゃねぇな」


我ながら臭い台詞を吐けたものだと思ってしまった。
言葉を紡いだあとでガラにもないことを言ってしまったと後悔し、お冷やを飲み干した。



「ううん……本当にありがと。

やっと晴れた。やっとあの雨雲の外に出られたんだ。

……本当に、ありがとね」


そういってはにかむ理緒の顔は、今までの愛想笑いとは違っていた。
とても柔らかな雰囲気のものであった。

見ているこっちも優しくなれるような……。


たとえその悲しみを乗り換えられなくても、それでも理緒はこれからも前に進んでいくのだろう。


たとえ離ればなれになっても、死がふたりを引き裂いても、それでも……もう一人じゃないのだから。

今の理緒には、巴ちゃんとの約束がある。


それに……ここから村瀬 理緒の……仮面ライダーローズの物語が始まるのだから。

(続く)

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