Episode.6 RAINY

「なんだその姿……」


ダルそうに首を鳴らす目の前の怪人。

新たな姿となった俺とα、ローズはそれぞれ並び立つ。



「ふたりとも……」



《ローズ!バースト!》



「いくぞ!!」

「「うん!」」


ローズのカプセルを読み込ませた瞬間、俺たち3人の前に薔薇の花模したエネルギーの球体が現れる。

それに触れた途端、俺たちの身体は深紅のオーラに包まれる。



「なんだか知らねぇが新しい姿になったんなら………

少しくらいは楽しませろよなぁ!!」


《オウルハードスマッシュ》


奴も喰らった怪人の能力を発動。

背中に光の翼が発現する。



「行くぞコラァァァ!!」


「「「だぁぁぁぁぁぁっ!!」」」


四人同時に地面を蹴ると勢いよく駆け出した。

瞬きの間に縮まる距離。
高揚感と共に体が軽くなっていくのが分かる。

仲間と共に戦える喜びによる錯覚かと思ったがそうではない。

これはワイルドローゼスと呼ばれるヴァルツの新たな姿の固有能力。


それは………



「ちっ……速ぇ……!」


先ほどまでそのチカラで俺たちを圧倒していた目の前の男が押されるほどのスピードで俺たち3人は奴を翻弄し、切り裂き、殴り飛ばす。

ヴァルツはともかく、ローズにもαにも高速移動能力の類の能力はない。


これがワイルドローゼスの固有能力……『ローゼスギフト』。

自分だけでなく、仲間にも『時間に干渉する能力』を付与するチカラ。

つまりは、高速で動き回る相手に対抗手段のない仲間にもこうして高速移動能力を授けることができるのだ。


ディアマンテエモーションの固有能力『ディアマンテオーラ』とよく似た能力だが、あちらが元ある能力を全て底上げするのに対し、こちらは高速移動能力を後づけで付与する。

故に使い分けも重要……という訳か。



「邪魔くせぇんだよ……ちょこまかちょこまかとォォ!」


《カーバンクル》


取り込んだ怪人の力を発揮すると弾幕を張るように奴の全身から無数の宝石が放出される。

しかし、その弾丸は驚くほど遅い。


俺たち三人は宝石の弾丸の隙間を縫うように奴の弾幕を潜り抜けてみせた。


──当然だ。

こちらは高速移動能力を発動しており、その副次効果にて動体視力を初め様々な感覚が強化されているのだ。

この副次効果がなければ今頃自分のスピードに体がついてこれずに建物に激突しているのだろうが。



「「はぁぁっ!」」 


まずは俺とαが攻撃に転じる。

俺は変形させたヴァルツクローで、アルは肥大化させた右腕の刃で、それぞれすれ違い様に奴の体を切り裂いた。



「ちっ……!」


「まだまだァ!」


《Rose Impact……》


俺たちに続き、ローズがその刃を振るう。

俺たちの攻撃を受けよろけた所に、ローズはすかさず専用武器であるローズサーベルを召喚。

サーベルにエネルギーを集中させると乱れ突きを放つ。


凄まじい速さの刺突の連撃に奴の装甲にも亀裂が走る。



「そんなんじゃ効かねぇよ!」


《スタッグハードスマッシュ》


またもや喰らった怪人の能力を発動し、至近距離から強烈な斬撃をローズに叩き込む。

ローズは斬撃をモロに喰らってしまったのかよろけたように……見えた。



「理緒っ!!」


「雑魚は雑魚らしく消えろ!!」


「………誰が消えるって?」


しかし、俺の心配はただの杞憂。

ローズは……理緒は奴の攻撃を喰らってはいなかったのだ。

よろけたように見えたのもただの残像。

俺の能力で得た高速移動能力を十二分に活かし奴の攻撃をやり過ごしたのだ。



「ちっ………!」


「“ローズ……インパクト”!はぁぁっ!!」

ローズの必殺技のひとつ、“ローズインパクト”。

サーベルで対象を貫き、サーベルからエネルギーを流し込んで内部から破壊する強烈な必殺技。

理緒が戦っている姿を見るのはほとんど今回が初めてだが……なるほど、たしかに無駄がない。

洗練された攻撃で急所だけを確実に攻め落とす。

ローズは奴に一撃入れるため、奴の装甲に亀裂が生じるまで乱れ突きを放っていたようだ。


「ぐぉぉぉぉっ!?」

こうして………奴の右肩をローズサーベルが貫くと、エネルギーの炸裂とともに奴の右肩の装甲を破壊したのだった。
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