Episode.6 RAINY

「ふたりともどうして!?」


「理緒が寝てたから、ホントは私ひとりで行こうとしたんだけど」


「起きて早々アルちゃんが血相変えて出ていったのを見たらそりゃ気になるじゃん?」


たしかにアルも昨日の戦いで怪我をしていたとは言え、俺は理緒が心配でならない。

あれだけ精神的に追い詰められてて疲れきっていたのに無理やり戦わせるみたいで気が引けてしまう。




「……大丈夫なのか?」


「うん!」


本人の負担がどうしても心配になり訪ねてみるのだが、やっぱり仮面越しでは理緒の表情は分からない。
声こそ明るいが、明るく振る舞ってるだけかもしれない。


だけど……



「ボクもさ、決めたんだ……。
巴ちゃんのためにも……ボク自身のためにもさ……。

まずは自分たちの世界に戻る方法を見つける。

今はまだ辛いし、自分の幸せが何かなんて分かんないけど……それでも、もう立ち止まったりなんかしない。

全部終わらせた後に、これからのことを考えるよ。

無理して乗り越えなくていいなら……きっとこういう選択肢もアリだよね?」


「上等……!」


どうやら仮面ライダーから離れていた理緒も戦う理由を見つけたようだ、

それならもう、止める理由なんてない。



「……だったら俺も行かなきゃな……!」


《リヒト!バースト!》


吹っ切れた理緒を見られたんだ……休んでいられない。

エクスライザーでリヒトカプセルを読み込ませ、もう一度自らの傷を癒す。

やはり複数回使っても完治には至らないが、それでも十分だ。



「俺も戦う……!」


「待った。ならコレ使って!」


「おっと……ってこれは!」


傷も癒え、変身するべくエクスライザーを構えるとローズこと理緒がなにかを投げてきた。

それを受け取って見てみると、それはローズの姿が描かれたライダーカプセルだった。

さながらローズカプセルといったところか。
でもなんで理緒がこれを……。


「自分のポッケ確認してみ?……多分お店出る時に落っことしていったんだと思う。

お店の玄関先にライダーカプセル落ちてたから、こんなこともあろうかとボクの力入れといたよ!タップリとね!」


「ははっ……本当に最っっ高だ!」


《ローズ!》


どうやら理緒は俺をライダーとして認めてくれたようだ。

俺は真っ先にローズのカプセルを起動した。

目の前のアイツや、来栖さんの持っていた怪人の力を宿した黒いカプセルではなく、リベルやアイン、それからαと同じくライダーの力を宿していた白いカプセルの中にローズの力が宿っている。


ローズは……理緒は、正式に仮面ライダーとして認められたのだ。



《α!》


ローズのカプセルをカプセルホルダーに装填すると、次はアルがメロンパンのお礼にとくれたカプセル……αカプセルを起動しホルダーに装填。

読み込ませたローズとαのカプセルが共鳴しており、互いの力を高めあっているのがわかる。


これなら行ける!



「立ち向かうぜ……悲しみ!

──変身!」


《デュアルフュージョン!ヴァルツ!ワイルドローゼス!》


身体に刻みつけられる刻印。
それと共に激しい突風と薔薇の花弁が俺の身体を包む。


俺の身体に纏われる装甲。

それはセンザンコウを模した刺々しい装甲を持つαにも、薔薇を模した美しきローズにも見える、まさに2人の特徴を兼ね備えたものである。


やがて『変身』を遂げると俺は突風を振り払った。




《──託された祈り!揺るがぬ誓い!

今こそ悲しみの雨を断ち切れ!》


毎度お馴染みのエクスライザーの名乗り口上と共に俺の姿は今までのどのヴァルツとも違う第3の姿となった。


センザンコウの鱗が薔薇の花弁のように複雑に組合わさることで成り立つ複雑な形状の装甲。

それでいてリベルとアインの力を掛け合わせることで変身していたディアマンテエモーションとはうってかわってスマートなシルエットとなっている。

目元は騎士を思わせるバイザーを複眼の上から被っており、あたかも展開するかのように配置された口元の装甲。


まさに理緒の意思とアルの強さが融合したような姿のヴァルツが誕生した。


『ヴァルツ・ワイルドローゼス』。

これが俺の……いや、俺『たち』の新たな力だ。


俺と理緒とアルと………

それから理緒に想いを託した巴ちゃんの想いの結晶の力だ。
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