Episode.6 RAINY

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「……寝ちゃったか」


泣きつかれて眠ってしまった理緒の眼鏡を外しフレームを畳むとテーブルに置いた。

それからテーブルに突っ伏したまま眠った理緒の背中にブランケットをかけてやる。


さて、ここからはこの俺、椿勝利の提供でお送りしよう……っていつもならやるんだけど、そうやってふざける気分にもなれない。



「この雨が止むのも、もう少しかな……」


昨日ほどではないが、外は相変わらずの雨。
救いなのは昨日のように土砂降りではなく、雨足が弱くなっていること。

俺は傍らで眠る理緒の頭を数回撫でてみる。

どんな夢を見ているのかは分からないが……せめて夢の中くらいは幸せそうに笑っていて欲しいものだが……。



「勝利……」


「のえるんか……しーっな、しーっ」


いつもならノエルが来た瞬間に通常の三倍テンションが上がるのだが、あの後だもんな……理緒に示しがつかない。
少しでも自重しなければ。

口の前で人差し指を立てると、ノエルも頷き俺の反対隣に座る。



「理緒、どうしたの?」

「まっ、色々な……疲れたんだよ理緒も。休ませてやって?」


相手がノエルとはいえ、理緒に無断で理緒の過去を話す訳にも行かない。

人には触れてはならぬ領域がある。

しかし理緒は俺を信用してくれたのかそれとも気まぐれか、その触れてはならぬ領域……巴ちゃんのことや仮面ライダーローズのことを俺に話してくれた。
だから俺もそんな理緒に答えなければ。

適当な言葉ではぐらかしたのだが、ノエルはそれで納得してくれたようで頷いてくれた。



「いっぱい、働いてくれてるもんね」


「そうだな……」


「お母さんみたい」


「ふふっ、お母さん、か……」


確かにそうかもしれねぇな。

俺とそこまで歳変わらないのに包容力があってさ……
俺以外にも亨多や孟もここに来ることが多くなったのも納得できる。

理緒と一緒にいると安心出来るんだよな……。


俺たちは少し理緒に甘えすぎてたのかもな。



「誰かいるか!?」


「「しーーっ!」」


静まり返った店内に、ドアを勢いよく開け輝が中に入ってきた。

理緒を起こしてはならないと、静かに抗議する俺とノエル。

それを見て輝も困惑しつつ声を圧し殺す。



「わ、わりぃって……勝利、怪人が暴れてる。

多分、お前の言ってたエクスキメラって奴だ………いけるか?」


「わかった……。

ノエル、理緒を頼めるか?」


「うん」


せっかく寝てるのに、理緒を起こすのも悪い。

俺はノエルに理緒のことを頼むとノエルは頷いた。



「ありがとう。輝、行こう……静かにな」

「おう……静かにな」


そして俺と輝は理緒を起こさないように静かに外に出ると現場へと向かった。

でもよかった。
輝あたりは少し怪しかったけど、理緒が眠っていると知った途端大人しくなった。


ここにも理緒を想ってくれる人がいる。

それが自分のことのように嬉しくて仕方ないんだ。
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