Episode.6 RAINY

高速移動と瞬間移動による攻撃の応酬。

互いの攻撃を見切ってはかわし、見切ってはかわし……その繰り返しであり、戦況は依然として拮抗している。


αも隙を見つけては奴に攻撃を仕掛けるのだが、なんの特殊能力も持たないαでは奴を捉えることなど出来る訳もなく、虚しくその攻撃は宙を切る。



「……アル!前だ前!!」


「わかってる……!」


「アル!判断が遅い!」


俺は今にも奴の攻撃を喰らいそうになっているαを抱え、共に奴の攻撃を回避する。


高速化のエナジーアイテムの効果で一緒に戦っているアルの動きすら遅く感じられる。

高速化のエナジーアイテムの副次効果により高速移動を行っている自分以外のものがある程度遅く見えるのだ。


しかし、その高速化のエナジーアイテムの恩恵を受けた俺でも、スキャッフォルドオーガの姿を捉えるのは困難を極めており、また奴の攻撃を回避するだけでも精一杯なのだ。



「アルッ!!」


「シャッ………!!」


αを抱え、奴の攻撃を掻い潜りながら隙を見つけてはαがセンザンコウ由来の舌による攻撃を放つ。

αの舌は暗器として機能する。


その柔らかさと長さを利用して首を締め上げたり、鞭のように使ったり。

更に鋭さを利用して槍のように貫くことすらも出来てしまう。




「遅ぇ遅ぇ!!」


しかし、ベルゼバブ特有の空間操作による瞬間移動と空間操作でことごとく回避されてしまう。

しかも、こちらの高速移動はあくまでもエナジーアイテムの効果によるもの。無限に続く訳ではない。

その点奴の能力は使用者の意思で自由自在に使用できる。


やはりここは短期決戦しかないか……。


──ちょうどいいエナジーアイテムも見つけたしな!



《鋼鉄化!》


俺はαを降ろすと、見つけたエナジーアイテム『鋼鉄化』を取得。

高速化の効果が切れる代わりに全身が鋼のように固くなる。



「シャァァァァ!!」


瞬間移動により現れた奴の爪が俺の体を捉えた。

しかし、その一撃は鋼のように強化された俺の体を貫くことは敵わない。


───そう、まさに先ほどと立場が逆転したのだ。




「なにっ!?」


「レベル差ってのはな……こうやって埋めるんだよッ!」


《キメワザッ!》


奴の腕をしっかりと掴むと、ベルトのボタンを押し込みキメワザを発動。


鋼鉄化により纏われたオーラを全てデンガッシャーの刀身に集中させる。


鋼鉄化のエナジーアイテムは己の体だけではなく、刀から弾丸に至るまで、己が所有する武器の強化もできる汎用性の高いエナジーアイテムなのだ。



《時空特急!クリティカルストライク!!》


エナジーアイテムとキメワザによりデンガッシャーの切れ味が強化され、刀身が白熱化する。

その強化されたデンガッシャーを奴の肩に叩きつけるとそのままデンガッシャーを握った右腕に力を込める。

デンガッシャーの刀身とそれに触れる奴の装甲から勢いよく火花が迸る。


このまま一気に溶断する算段だが、もちろん俺一人だけでコイツを倒す気はない。



「来い!アル!!」


「ガッテン……!」


αを降ろしたのは奴の虚を突くため。

αがベルトを操作すると右腕の刃が更に肥大化する。

その刃を俺とは反対方向から突き立てた。



《Genocide……Slash》



「「これで……終わりだァァァァァァ!!」」


白熱する俺たちの刃。

いくら強敵とはいえ、これでは流石の奴も耐えられないはずだ。



「ぐっ………!!」


「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」



交差する刃と刃。

それは確かに処刑台の鬼を滅する刃となり、奴を切り伏せた。


崩れ落ちる奴の体。


しかし………。
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