Episode.6 RAINY

「「はぁっ!」」
 

奴より早く奴の間合いの内側に潜り込むと俺たちは同時に拳を突き出した。

奴は避けることも防ぐこともしなかった。

ガコンッという鈍い音だけが響き、拳は確かに奴の胸部に直撃したが奴は微動だにしない。


──ダメだ。手応えがない。




「硬ッ……!」


「……なんだそりゃ」


「……ッ!!」


刹那、何かが眼前に現れたと思うと激しい痛みと共に吹っ飛ばされる。

防御も回避も出来なかった。
そもそも、何が起こったかすら分からない。

朦朧とする意識が全身を走る痛みすら掻き消していく。

どうやらまともに食らってしまったらしい。



「勇騎!……グッ!」


「あ、アルッ……!


俺の体が背後の壁に激突し、アルの方を見た時にそれを理解した。

アイツはただ俺を殴り飛ばした“だけ”だったのだ。


なにひとつ特別なことはしていない。


それにしても、ただの打撃であの速さと破壊力かよ……。
ここまで圧倒的だと本当に『既存のライダーでは対処不可能』だと思ってしまう。


アル……もといαはというと、奴に殴り飛ばされるものの、野生の勘なのか、まるで猫のように体をしならせるとその場で体勢を建て直し、俺を護るように立つ。

俺のように直撃は避けられたようである。



「ほぅ……白いのはともかく、そっちの女の方はなかなかやるみてぇだな……。

お前、名前は?」


「…………アル」


「アルか……。気に入ったぜ。

俺は“アポロン”……もう弱い人間相手には拳が満足できなくなった男……!

お前が俺の力にどこまで耐えられるかは知らねぇが………


あまり早くにくたばってくれるなよォォ!!」


奴が地面を蹴りあげ、駆け出すと粉塵が巻き上がり、コンクリートの床にクレーターが出来上がる。

それほどまでの筋力なのだろう。


筋力にものを言わせ、トップスピードに達すると、目にも止まらぬ速さでラッシュを繰り出した。



「……グッ………!」


一撃は紙一重で避け、もう一撃は受け流し、それでもダメなら防ぎ………

αは奴の攻撃を見極めながらも必死に奴の攻撃を捌く。

確かに一撃一撃は単調な攻撃に見える。

しかし、そのスピードは明らかに常人の……いや、俺たちライダーですらも捉えるのは困難を極める。


しかも……間違いなく直撃を食らえば即死。
そして『僅かな隙を突く』といっても、殆ど隙などなくタイミングを見誤り下手に動いてしまえばかえって攻撃を貰ってしまう。


それはアルも分かっているから、だからこそ反撃に転じることが出来ないのだ。



「ぐっ………!」

《ライズアーーーップ!リベル!ライザー!!》


俺はあの一撃をまともに食らってしまった。

このまま何もしなかったら俺はそのまま意識を失うだろう。


俺はリベルライザーに強化変身を遂げるとリベルガンブレードの刃先で自らの左腕を突き刺した。



「……ぐっ……!あぁぁっ……!!」


痛みと共に白い装甲が赤黒く染まっていく。

だけど、これで意識はハッキリし始めた。
我ながらかなりの無茶だが……このまま気を失っても、どのみち死ぬだけだ。



「……俺を、忘れてねぇか……?ダァァァッ!」


《ストライクリベル!!》


自ら刺し抜いたリベルガンブレードの刃先を強引に引き抜くとリベルガンブレードにジュエルを装填。


刀身にエネルギーを蓄積させ、奴に肉薄。

奴の左肩目掛けて振り下ろした。



「………ッ……!」


叩きつけられた俺の刀。

奴に大したダメージを与えることこそ叶えられなかったが、奴をアルから引き離すことには成功した。



「勇騎……大丈夫なの?」


心配そうに俺の左腕を見つめるα。
意識をつなぐためとはいえ、自分で自分の腕を突き刺してるからな……。

スーツの機能が負担や怪我を軽減してくれるとはいえ、あまり長く戦えないのは事実だ。



「お前、くたばってなかったのかよ……めんどくせぇ」


「そういうなよ……祭りはここから、だろ?」


刃こぼれしたリベルガンブレードを投げ捨てると俺は新たなジュエルを取り出した。

これが奴を倒す切り札になり得るかは分からないが賭けるしかない。


俺はリベルライザーのジュエルを取り外すと手に持ったジュエルを装着するのであった。
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