Episode.6 RAINY

『猿渡 一海(さわたり かずみ)』、またの名を『仮面ライダーグリス』。

かつて俺たちの世界にブラッド族が攻めてきた時に異世界からやってきたライダーであり、俺たちと共に戦った仲間のひとりだ。

俺自身はあまり一海と話していなかったが……でもなんで一海がここにいる?


まさかコイツの世界も……。
戦兎の世界も……。



「あぁ?なんだてめぇ?」

不良グループの男が一海と思わしき男に掴みかかった。
声を荒らげている不良グループの男に対し、一海と思わしき男は不敵な笑みを浮かべる。



「おぅおぅ……随分威勢がいいじゃねぇか。

えぇ?群がることしか能のない雑魚共がよ」

「何調子づいてんだてめぇ!」


挑発に乗った不良グループの男が殴りかかる。
しかし、一海と思わしき男は奴の拳を避けずに奴の拳を頬に受けた。

しかし、奴は微動だにしない。



「こんなもんかよ……しみったれてんなァ……!」

奴は自身に拳を振るった男の顔面に拳を叩き込む。
ドンッという爆音が倉庫中に響き渡る。

おおよそ人間の放ったものとは思えない凄まじき一撃だ。

一海と思わしき男に殴りかかった男はそのまま後ろに倒れこんだ。



「……ひっ!り、リーダー!?」

「し、死んでる!!顔潰れてますよコレ!」

「なっ!?」


まさかの展開だ。

かつての仲間と同じ顔をした男が犯罪に手を染めていた疑惑があるとはいえ、一般人を殺したのだ。
それもなんの躊躇いもなく。

一海は確かにバトルジャンキーで戦場で戦ってきたことから失われる命に対してどこか割りきったような考えを持っていると戦兎や『この世界にいるであろう一海と一番長くいた俺たちの仲間』から聞いてはいる。
だからこそ分かるのだ。
一海は、“カタギの人間の命を無闇に奪う真似は決してしない”。

それはアイツの矜持に反することだ。



「やめろっ!!」

俺はアルの制止を振り切り物陰から飛び出すと不良グループたちの前に立った。



「お前ら死にたくなかったらさっさと逃げろ!!」

「ひっ!ひぃぃぃぃぃ!!」


俺は不良グループの連中が逃がすと、奴に追撃させないようにベルトを構える。

同じタイミングでアルも俺の隣に並び立った。


──確かに顔立ちは一海とよく似ている。ていうか瓜二つだ。


だけど……コイツからは一海を突き動かしていた信念の類は全く感じない。
感じるものはどす黒い“悪意”と膨れ上がった“欲望”のみ。


決まりだ。コイツは……一海じゃない!



「……お前、何者だ……!
なんでソイツを殺した……?」

「お前ら……いきなり飛び出してきてそれかよ。
有象無象が調子づいてたから殴っただけだろうか。結局死んじまったけどな……。

まっ、そんなことどーでもいいんだよ……」


すると一海似の男は懐からデバイスと思わしきアイテムを取り出した。


それは………



「………っ!エクスライザー……!?

コイツもか………!!」


取り出した赤いグリップ型のデバイスは勝利が所有しているエクスライザーそのものであった。

ということはコイツも『あの男』の配下ということだ。



「さぁて……コイツの試運転だァ……!!

てめぇらも俺の糧になれ………!!」
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