Episode.6 RAINY

「……ッ!!」

ガランッ!という音と共にドアが開き、ドサッと何かが倒れる音がした。

思わずビクンッと体が跳ね上がってしまった。

ボクは恐る恐る音がした方に振り向くとそこにいたのは……


「か、勝利くん!?」

そこにいたのは昼間にお店を飛び出していった勝利くん。
その体は傷だらけであり、閉めたドアを背もたれにして座りこんでいる。


「どうしたのその傷!?勇騎さんは!?」

「…………一緒に最近話題になってた事件を調査してたんだ。
俺と同じように呼び出されたアルと一緒に。

それで俺は途中でふたりとはぐれてさ………その直後に妙なライダーに襲われた。

黄色のバッタみたいなライダーだった……そいつがめちゃくちゃ強くてさ……殺されないように抵抗するので精一杯だった」

肩で息をしながら、勝利くんは負傷した経緯を話していく。
要するに勇騎さんは勝利くん以外にアルちゃんも呼んでてそれから埠頭に向かった。

そして、勝利くんだけが戦闘になったというわけか。


ただ、その勝利くんのいう黄色のバッタみたいなライダーというのは心当たりがある。

『仮面ライダーゼロワン』。

この間、勝利くんに貸したベルトのオモチャ……『ゼロワンドライバー』で変身するライダーがゼロワンなんだけど、ゼロワンってテレビの中のヒーローなんじゃ……。

実際勝利くんにつけさせたあのオモチャも、朝の仕込みをしながら再放送として放送されていたものを見て、そこからハマってしまい近くのデパートで買ってきた。

勇騎さんたちが仮面ライダーとして戦っている中、テレビで放送されている仮面ライダーを視聴するという状況もなかなかおかしな話だが、この世界では『仮面ライダーの名前を名乗り怪物と戦っている戦士』と『テレビの中の特撮ヒーローとしての仮面ライダー』が同時に存在しているのだ。

ただ、勇騎さんもその『テレビの中の特撮ヒーローとしての仮面ライダー』に変身していた。

例えば『仮面ライダードライブ』。

主人公を演じていた俳優さんが好きだったからボクだって巴ちゃんと一緒に見ていた。
だから勇騎さんがドライブに変身したときは驚いたものである。
あとエグゼイドもそう。あっちはヒロインの女の子が好きだったケド。


だから、その理屈でいけば仮面ライダーゼロワンが実際に存在している世界だってあるのは確実なんだけど……。

でもなんでゼロワン?

ゼロワンに変身している人物があのテレビ通りの人物なら勝利くんを襲う理由なんてないと思うけど……。


「もういい、話さなくていいから!
……ちょっと待ってて、いまお医者さんに」

勝利くんを襲ったとされるライダーの正体を考えるのはやめだ。
とりあえず勝利くんをお医者さんにみてもらわないと。

ボクは慌ててスマホを取り出した。

しかし、その手を勝利くんが掴む。


「……大丈夫だ、少し休んだら戻る」

「なにいってんの!?」

そういうとヨロヨロと立ち上がる勝利くん。
どう見たって体力の限界という感じだ。

何がそこまで勝利くんを駆り立てるのだろうか。

様子を見ている感じただならぬ様子という感じだけど………。
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