Episode.6 RAINY

────星葉埠頭。

姫矢市最北端の区画である星葉区に位置する姫矢港。
その北端に位置するのが星葉埠頭である。

岸壁水深が13mもあり大型船の入港も可能である。
たまに海外の大型貨物船も停泊していることもある。

6年ほど前は釣り場としても人気があったようで、釣り人が多く見られた。

しかし、近年では使われていない資材倉庫が不良グループのたまり場として使われるケースが増えており、釣り人はめっきり減ったようで、現在の姫矢市の治安の悪さを物語っている。


「ここか………って広いな」

俺たちは姫矢港の資材倉庫周辺にたどり着くと辺りを見回す。

俺たちがたどり着いたのは、国際コンテナターミナルと呼ばれている場所の近くにある車両用の休憩スペース。

休憩スペースからは山のように積んである巨大なコンテナや、70m級のカントリークレーンが動く様が見える。

コンテナフレートステーションというコンテナに詰められる前の貨物が運び込まれる場所があるのだが建物の老朽化に伴い新しく建て直されたばかりであり、以前まで使われていたフレートステーションは血の聖誕祭のこともあり、取り壊しの目処が立っておらず現在は立ち入り禁止区域となっている。

恐らく、バンディットアローの根城はその古い方のフレートステーションの事だろう。


「少し大変かもしれないがここからは歩きな」

「……えー……倉庫までちょっと遠いぞ?」

「文句言うなよ。それとフレートステーションな。
コンテナに詰める前の荷物を詰めたり取り出したりする所!

それに使われてない方のフレートステーションは立ち入り禁止なんだから。
そんなところをバイクで走ってたら目立つだろ?」

「「……えー」」

尚も文句ばかり言うアルと勇騎さん。
まぁ、本音をいえば俺もあまり歩きたくはねぇけど生憎今日は人が何人も彷徨いている。
こんな雨の日に何の仕事があるのかは知らねぇけど……派手に動いて見つかってしまったら正直都合が悪い。


「……分かったよ。案内してくれ勝利」

「了解。アルは動けるか?腹減ってない?」

「うん、大丈夫」

「あれだけ人の金で食ったからな……忘れねぇぞ絶対」

「勇騎さんもういいから」

金欠になるまで飯を食われた我らが勇騎さんの件はとりあえず置いといて。
俺たちは使われていない方のフレートステーションを目指し歩きだすのであった。
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