Episode.5 DUAL FUSION

「………」


変身を解く。

そして、胸に手を当てた。


…………ほんの少し、胸がいたい。

まるでトゲでも刺さっているかのように。



そして、勇騎さんたちに顔を見せたくない。



そして………その理由はわかってるけど言いたくない。




「………お疲れ」


そんなことを思っているとを勇騎さんがこっちにやって来た。


勇騎さんは俺の肩に手をおき笑いかける。



「何がともあれ………まぁ、ノエル戻ってきたから今回は解決だな」


どこか楽観的な輝もやってくる。

俺はそんなふたりを見ては何故か『ほっと胸を撫で下ろした』のだ。



まるで、その“奥底の想い”を気づかれなかったことを安堵するかのように。



「勝利くんやったじゃん!

ノエルちゃんも帰ってきたし一件落着だね!」


「お疲れさま………」


理緒とアル、それからノエルもこちらにやってくる。

理緒はいつものように明るく話しかけてくれた。


そしてノエルも…………



「ありがと」


にっこりと笑ってくれた。




…………よかった。誰も………誰も“咎めない”。

誰も俺を責めたりはしない。



むしろ『ノエルを助けてくれてありがとう』って言ってくれる。


俺はまだここにいれるんだ。ここにいていいんだ。




……そうだよ。あいつらは“怪物”。


いくら人をベースにしているとはいえ、もう人間じゃない。


優里香だって、他のアンゲロスたちだって、この間のスネークアンゲロスの女子高生だって………人の心を失っていた。


その上でヴァイトップが人の真似事をしているんだ。


そして、俺はそんな奴らから人を護るために戦ってる。




だから…………




だから俺は………………



“人殺し”なんかじゃない…………!




「…………勝利?」


ノエルが心配したかのように俺の顔を覗きこむ。



「なんでもない………」


どんな顔をしていたかは覚えていない。


笑って返したのか、それともなにかを堪えているような顔をしていたのか分からない。



ただわかるのは………この胸の痛みの正体がずっと抱えていたものだってこと。


そして決して目を背けることも忘れることも許されないもの。



それは“罪悪感”。




────俺の胸を突き刺す、決して抜けないトゲの名前だ。




(続く)
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