Episode.4 CROSS

「ふぅ…………」

ベルトから二本のオブラートを引き抜き変身を解除する。

変身を解除して纏っていた鎧が分解されバックルに格納されると、日本の初夏特有の熱気が肌を刺激する。


「……さて、俺はそろそろ帰るとしますかね」

あの阿呆共の尻拭いはしてやった。
あとはさらわれたノエルを助けるだけだが……それはアイツらに任せるとしようか。

俺が出るまでもないというのもそうだが、ノエルには“アイツらの傍にいてもらう方が都合がいい”からな。
アイツらに助けて貰わないと困る。

それに赤津 将……仮面ライダークロスも合流した。
これであの阿呆も『ヴァルツの真の力』に気づくだろう。


「…………随分とご機嫌みたいだな?」

背後からの声。
若い女の声だ。
そうだな、年はノエルよりも2つほど上……十代後半くらいの少女の声だ。

この声の主は分かってる。
最近この世界に迷いこんできた、ギラついた目をした赤毛の女。

出会ったばかりの頃は何の感情も感じられなかったが、最近ではほんの少しだけ声色に怒気が孕むようになった。


……どうやらコイツにも“不安”という感情が芽生えはじめてきたようだ。

芽生えた感情が何であれ、コイツにとってはいい兆候なのかもしれん。

まぁ、アイツ本人からしたらたまったもんじゃないだろうがな。



「あぁお前か……ネス。

俺を迎えに来たってのか……?」

俺は振り向くとその赤毛の女を視界に捉える。

残念ながらコイツのいうように“機嫌がいい”という訳ではない。

俺にとっては全てがどうでもいいことだ。
特に自分のことについては尚更。

自分の趣味嗜好や機嫌など二の次三の次だ。

だからなんだかんだで気に入ったコイツが迎えに来ようとも、どうだっていいことなのだ。


「ふざけたことを言うのも大概にしろ……」

「……オイオイ、俺に八つ当たりか?」

赤毛の女……ネスは赤い刀身の刀を俺に向けてきた。

これには流石に目を丸くするしかない。

愚かだ。本当に愚か。

俺に従いたくないというのは分かるが、流石に自身の身の丈を分かっていなさすぎる。

それほどにまで自分の実力に自身があるのだろう。



無駄なことが嫌いだが……どうも舐められっぱなしというのは性に合わん。



──少し、こらしめてやるか。



「仕方ねぇ……そんなに特訓に付き合って欲しいなら付き合ってやるよ」

《ジュエルドライバー……!》

俺はエクスドライバーとはまた異なるドライバーを装着し、奴の出方を伺う。

どうやら奴もやる気満々だったようで既に腰には黒いドライバーを装着している。

そしてその手には“魔性の小箱”ことガイアメモリ。

その内包された記憶はさながら『極限の絶望』か。


──くだらない。

俺はとうの昔にそんなものは味わい尽くしている。


《EXCEED DESPAIR!》

「……私の主はお前じゃない………!変身……!」


《EXCEED DESPAIR!!》


その極限の絶望を味わっているのはコイツだろうか。

奴がガイアメモリをバックルのスロットに装填すると、奴の体は漆黒の闇と雷に包まれた。


(続く)
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