Episode.3 EIN

《Energie charge!》


《エクスライザーバースト!!》


響きわたる電子音声。

それと同時にそれぞれの右足にエネルギーが蓄積される。


そして飛び上がり………………



「ライダーキック………!うおりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「せあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


膨大なエネルギーを纏った右足を着き出せば同時に突撃。


スネークアンゲロスの巨体を貫く。




「………ナンデ………」


「………」


地面に着地し振り返る。

胴体に2つの風穴を開けたスネークアンゲロスがそこにはいた。



「………私は………ただ生きていたかっただけなのに。

ただ普通に………生きて…………」


アンゲロスの……いや、女子高生の瞳から涙が溢れる。

本当なら友達と遊んで、恋をして、そんな在り来たりながらもかけがえのない青春を送っていたのだろう。

だが……何を願ったのだろうか。

彼女は悪魔……ヴァイトップに魂を売り、アンゲロスになってしまった。

しかもその心すらもヴァイトップに奪われて、だ。


当然本人もそんなこと望んでなかっただろう。

いや、この子だけじゃない。

今まで殺してきたアンゲロスになった人たちもだ。



そして………残念ながら隣にいるこいつも、孟や亨多も………その真実を知らない。




「………」


何か言わなくちゃと思ったけど彼女の涙を前にして何も言えなかった。

思考がぐちゃぐちゃになる。

きっと俺はヴァイトップに乗っ取られた女子校生に同情してるんだ。

ヴァイトップは冬虫夏草。
あの女子高生は宿主の虫。

冬は人間だったのに夏になればアンゲロス……いやヴァイトップに、か。

それがアンゲロスの真実。

ただ人間をアンゲロスに変えるんじゃなくて、人間を殺してその体を乗っ取ったヴァイトップが殺した人間の体を材料に自分の身を護るための鎧としたものがアンゲロスなのだ。

つまりはヴァイトップが本体で、宿主の人間はヴァイトップに操られた人形に過ぎないのだ。



死体に同情の余地はない。それは分かってる。

後悔はしないと、アンゲロスは全て滅ぼすと誓ったはずなのに。




「安心しな……お前の想いは俺たちが背負って生きる」


同じく先ほどまで黙ってたアインが口を開く。

この男は、篠原輝は仮面の下でどんな表情をしているのだろう。


俺には想像も出来ないけど………




「………お願いね」


その一言を残すとスネークアンゲロス……いやあの女子高生はその場に横たわり、そのまま動かなくなった。
26/33ページ
スキ