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Beside you....

ねーむちぇんじ

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「卵と出汁は1:3が黄金比って言うよね」

「卵1個に対して出汁は180ミリリットル程度が目安だにゃ」

『……このくらい…?』

「そそ!これ難易度高めだから計量して比率を守ることが大事なんだぞー」

『ふむふむ…』

「じゃ、次は卵!あ、まぜるとき、泡立てちゃダメだかんね!」

『え?』

「菜箸をボウルの底につけたまま左右に動かして、卵白のコシを切るようによくほぐすんだにゃ
卵液の中に空気が入ってると加熱したときブツブツした“す”ってのが入る原因になるからにゃ!」

『へぇ〜』

「クスッ  さすが英二。教えるのがうまいね」





ここ、家庭科室では今、菊丸に教えてもらいながら、不二に見守られながら、由衣が料理をしている。



『えっと……出汁を冷やしたら卵を入れて、塩で味つ…』

由衣ちゃん、それ砂糖」

『わっ!…塩で味付け』





そう、料理。
シンプルな料理だが、加熱が難しかったり、味つけがうまくいかなかったり…
いつかは上手に作りたい、ちょっと憧れのメニュー
和食の定番、茶碗蒸し。




「はじめてなわりに、なかなか上手にできてるんじゃないかな…?」

『ほんと?!やったーっ
これで王子も喜んでくれるかなぁ?』

「んー…それは、どうかな?彼、そういった事には興味なさそうだし」

「あちゃー、耐熱容器あるにはあるけど、サイズがかなり大きめー…」

『…大きめじゃできないです?』

「出来ないことはないけど、大変だよ?」

『がんばるです』

「んじゃこれでっ」



菊丸が持ってきたのは、さっき由衣が卵をまぜていたボウルとあまり変わらない大きさの耐熱容器。


「そんじゃ具を切って入れてこー!」

『おーっ!』

「ところで、由衣ちゃんはどうしていきなり料理したいなんて思ったの?普段、そういうの言わないじゃない?」

「そういえば茶碗蒸し作りたいって言われただけで理由は聞かなかったなー」

「あ、由衣ちゃん、その切り方だと、食材じゃなくて自分の手、切っちゃうよ?」


『……んー…料理はひとつのアイジョウヒョーゲンって言ってたから』

「誰が?」

『テレビです』

「相変わらず影響されやすいというか純粋というかなんと言うか…」

『料理は気持ちを込めてつくるものだから、手料理はアイジョウでつくられてるから、おいしいって』

「おチビのこと大好きだもんね!」

『伝えたいこといっぱいあるです…
感謝、妬み、嫉み、仕返し……
ありすぎて何から伝えていいかわからない』

「妬み嫉み仕返し!?…おチビとなんかあったの?」

「好きな人のために手料理…ね
クスッ
なんだか少し、羨ましくなってくるな」

「え、無視!?
……まぁいいや。そんじゃ器に8分目くらいまで卵液入れて、アルミホイルでフタしよー!」

『………よし』

「ここまでくれば、あとは蒸すだけかな? 」







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お昼、菊丸が越前を呼び、越前のそばにいた桃城、近くを通っていた海堂と乾も一緒に家庭科室へやってきた。


「連れてきたにゃー」

「あ、いらっしゃい」

「あれ、不二先輩もいたんスか」

「いちゃ悪かったかな?」

「いやいやいや!英二先輩から由衣先輩が待ってる、としか聞いてなかったんで驚いただけっス!」



菊丸が越前の背中をグイグイ押して席に着かれる。
頭にハテナを浮かべながらも越前は大人しくしたがった



『王子待っててねっ』

「……っス」



熱いうえに重いので、ボウルを慎重に運ぶ。


「だ、大丈夫っスか?」

「…フシュー」

『大丈夫です』



ゆっくり、ゆっくりと運んできたものを越前の前に置いた。

それを不二、菊丸、由衣以外の人がぽかんと見つめる。
美味しそうな香りを漂わせ、湯気を上げる目の前の茶碗蒸しに。



「……茶碗蒸し…?」

「ふむ、なるほどね。
日頃の感謝を伝えるために手料理を振る舞おうとして選んだ品が、越前の好物の茶碗蒸し…
菊丸に教えてもらった確率100%」


海堂のつぶやきに乾が事細かに分析する。


菊丸に教えてもらったとはいえ、まさか由衣がこんなものを作れるとは思わず、まして自分のために自分の好物を作ってくれた由衣に感謝と、そんなことも出来るのかと感心し、少し頬が緩む



「…食べていいの?」

『もちろん!』

「……いただきます」


「「……………」」


「どう!?おチビ…!!ダークマターじゃないよって言って!!!俺ら超頑張ったんだから!」

「うまいのか!?まずいのか!?どっちだ越前!!」

『おいしくなったかなぁー…?』

「妬み嫉みが、多かったのかな?」

「フシュー……」


「…あんたらうるさい。
べつに、マズくないっスよ

味薄いけど」

「ねねね!ちゃんと気持ちこもってる?」

「気持ち?」

「料理は愛情表現、らしいよ」

「でもでも!妬み嫉み仕返しとか言ってたからうまさ半減されてそう」

『えーちゃんってば失礼な!
妬み嫉み仕返しもアイジョウのひとつです♡』

「歪んでんね…」

『料理がおいしいのは、アイジョウのおかげなのです』

「愛情…?」

「普段、由衣が越前に対して、伝えたくても言葉が見つからなかったりして伝えられないいろいろな気持ちを、この茶碗蒸しにぜんぶ込めたんだよ」

「じゃあ越前は由衣の愛情を今独り占めしてるわけだね
よかったじゃないか、独り占めできて」

『やっぱりおいしくない?妬み嫉み仕返しの気持ち多すぎたかな…?…ダークマターじゃなくてもう消滅してるかな…?具材、えーちゃんがテキトーに切ってって言ったからほんとにテキトーに切ったけどテキトーすぎってぐっちゃだったかな…?』

「うるさいあんた
…うまかったよ、ふつうに。」

『ほんとっ!?よかったです♡』

「…茶碗蒸し、どうも」

『こんどね、えーちゃんとオムライスつくる約束したです』

「オムライスって英二先輩の得意料理じゃなかったスか?」

「そ!菊丸印のオムライスを由衣に伝授してやんの!」

「あんたオムライス好きなの?」

『んー…好きだけど、わたしのぶんと王子のぶんもつくるです』

「また?」

『またいっぱいアイジョウこめるから、こんどはいっしょに食べよーねっ!』

「…っ!」



嬉しそうに、楽しそうに笑う由衣に胸がときめいたの秘密
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