短編
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視線の行方
「あら留三郎、こんなところで何をしているの?」
シナ先生のくのいち組の授業を終えて帰りの廊下を歩いていると、見慣れた同級生の姿が目に飛び込んできた。彼は自慢の鉄双節棍を手に、しなやかな動作で黙々と自主練に打ち込んでいる。
「おぉ、名前か! いやなに、部屋で勉強していたら伊作が薬を作り始めてな。部屋中に妙な匂いが充満して堪らんから、外へ避難してきたんだ。」
そう言って苦笑いを浮かべながらも、彼は手元の鉄双節棍を鮮やかに旋回させ、自主練を再開する。風を切るヒュンという鋭い音が廊下に響いた。
「ふふ、伊作も医務室で作業すればよかったのに。……あ、でもあそこは怪我をした生徒が来るところだから、匂いの強い薬を作るのは難しかったのかしらね。」
「ははっ、まあな。それも分からん訳ではないんだが……それにしても限度というものがあるだろう。」
やれやれと肩をすくめつつも、言葉とは裏腹にその表情には同室への親愛が滲み出ている。
目の前で繰り出される彼のしなやかで力強い動作を見つめていると、やはり男女の身体つきや骨格の違いというものをまざまざと見せつけられ、驚かされる。
『男と女の差……そう考えると、女に生まれたことが少しだけ悔しくなることもあるけれど。でも、くノ一にしかできない戦い方で活躍している先輩方はたくさんいるものね。』
思考を巡らせながら何気なく視線を落とすと、装束から覗く彼の引き締まった腕に目が留まった。力を込めるたびに浮かび上がる腕の筋肉の筋が、あまりにも男らしくてすごい。思わずじっと凝視してしまう。
「……おい名前、そんなにまじまじと見られると、流石の俺でもなんか照れるんだが……。……あー、そういえば名前、お前は授業の帰りだったろ? 次の授業は大丈夫なのか?」
「あっ、忘れてた! うっかりしてたら先生に怒られちゃう! 教えてくれてありがとう、留三郎!」
慌てて叫ぶと、私は裾を翻して駆け出した。
一方、バタバタと走り去っていく背中をポカンと見送っていた留三郎は、小さく息を吐いて頭を掻いた。
「……ったく。あいつに見られると、どうも調子が狂うな。」
ポツリと漏らしたその呟きは、初夏の風に舞って消え、誰の耳に届くこともなかった。
「あら留三郎、こんなところで何をしているの?」
シナ先生のくのいち組の授業を終えて帰りの廊下を歩いていると、見慣れた同級生の姿が目に飛び込んできた。彼は自慢の鉄双節棍を手に、しなやかな動作で黙々と自主練に打ち込んでいる。
「おぉ、名前か! いやなに、部屋で勉強していたら伊作が薬を作り始めてな。部屋中に妙な匂いが充満して堪らんから、外へ避難してきたんだ。」
そう言って苦笑いを浮かべながらも、彼は手元の鉄双節棍を鮮やかに旋回させ、自主練を再開する。風を切るヒュンという鋭い音が廊下に響いた。
「ふふ、伊作も医務室で作業すればよかったのに。……あ、でもあそこは怪我をした生徒が来るところだから、匂いの強い薬を作るのは難しかったのかしらね。」
「ははっ、まあな。それも分からん訳ではないんだが……それにしても限度というものがあるだろう。」
やれやれと肩をすくめつつも、言葉とは裏腹にその表情には同室への親愛が滲み出ている。
目の前で繰り出される彼のしなやかで力強い動作を見つめていると、やはり男女の身体つきや骨格の違いというものをまざまざと見せつけられ、驚かされる。
『男と女の差……そう考えると、女に生まれたことが少しだけ悔しくなることもあるけれど。でも、くノ一にしかできない戦い方で活躍している先輩方はたくさんいるものね。』
思考を巡らせながら何気なく視線を落とすと、装束から覗く彼の引き締まった腕に目が留まった。力を込めるたびに浮かび上がる腕の筋肉の筋が、あまりにも男らしくてすごい。思わずじっと凝視してしまう。
「……おい名前、そんなにまじまじと見られると、流石の俺でもなんか照れるんだが……。……あー、そういえば名前、お前は授業の帰りだったろ? 次の授業は大丈夫なのか?」
「あっ、忘れてた! うっかりしてたら先生に怒られちゃう! 教えてくれてありがとう、留三郎!」
慌てて叫ぶと、私は裾を翻して駆け出した。
一方、バタバタと走り去っていく背中をポカンと見送っていた留三郎は、小さく息を吐いて頭を掻いた。
「……ったく。あいつに見られると、どうも調子が狂うな。」
ポツリと漏らしたその呟きは、初夏の風に舞って消え、誰の耳に届くこともなかった。