短編
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狂気を秘める
『伊作先輩?』
「あはは……やぁ、名前ちゃん。」
今日も今日とて大きく音がした方向に向かうと、穴の空いた地面から土煙が立ち上がっていた。
覗き込むと其処には伊作先輩が居た。
「見られちゃったね…」
『大丈夫ですか!?』
「いやぁ、ちょっと作業してたら落ちちゃって。」
『急いで縄梯子持ってきます!』
急いで用具倉庫に向かい縄梯子を借りて伊作先輩の元へ向かう。
息を切らしながら向かうと穴の底で伊作先輩が力無く笑みを浮かべていた。
『伊作先輩、これを使って下さい!』
「ありがとう。恩に切るよ。」
下ろした縄梯子に伊作先輩が掴み、登り始める。
無事に穴の出口まで登る事ができ、穴から這い上がることが出来た。
砂にまみれた伊作先輩だが私に向ける笑顔は眩しい。
『先輩、怪我はありませんか?』
「大丈夫だよ。怪我はしてなさそう……っ!」
伊作先輩が地面に崩れ落ちる。落ちた時に踏み外したのか視線を下ろすと左足を押さえその箇所は腫れていた。
『伊作先輩!足が!』
「痛た……ちょっと捻ったみたいだ。」
それでも伊作先輩が立ち上がろうとする為、無理矢理止める。
伊作先輩並みの怪我の知識はないがこの腫れが酷いのは私でも見て分かる。
『ちょっと待って下さい!この腫れで歩いたらいけません!』
「これぐらい大丈夫だよ。なんとか歩けるから心配は要らないよ。」
片膝を着きながら立ちあがるがその足元はおぼつかない。
嫌な予感が頭をよぎる。この様子だとまた穴に落ちて足を痛めてしまうかも。そんな事はさせない。
『私にもたれかかって下さい!医務室までお連れします!』
「えっ!」
『行きますよ!』
「えっ、名前ちゃん!」
伊作先輩の返事を待たずに自身の腕を先輩の肩に回し、早急に医務室に向かう。
『伊作先輩、着きました。』
「ありがとう。」
医務室の襖を開けると不運にも誰もいない。
奥に進み、畳の上に伊作先輩をそっと下ろす。
「重かったのにごめんね。」
『こちらこそ無理を言ってすみません。先輩、足は?』
「これぐらいならあとは冷やして安静にしとけば治まるよ。」
『私にできる事ならなんでもします。』
「大丈夫。ここまでしてもらったら充分だよ。」
『でも……』
伊作先輩の事が心配だがあまりグイグイ行き過ぎるといけない。でも気になっている人が怪我をしていたら看てあげたいと思うのは私の我儘かもしれない。がっくりと肩を落とす。
「名前ちゃんは優しいね。」
バッと顔を上げると伊作先輩がクスッと笑ってる。まさか必死な私を見て笑っている?その事実に一気に顔が真っ赤に染まり始める。
「なら、ちょっと手伝ってもらっていいかな?」
『!!!……はい!勿論です!』
伊作先輩の指示通りに動く。
桶に水を入れ、手拭いを濡らし伊作先輩の患部を冷やす。自分の怪我を治療する時とは違い先輩相手だと思うと緊張する。
私、うまく手当て出来ているかな。呆れさせたくない。期待に応えたい一心で手を動かす。
「ありがとう。手当て、上手だったよ。」
『伊作先輩が手取り足取り教えてくれたので。』
「いやいや、初めてなのにテキパキしてたから思わず感心したよ。」
伊作先輩に褒められた。それが何より私を嬉しさで染まり上げていく。
「あの時、名前ちゃんが通りかかってくれて良かった。」
伊作先輩の言い方に下ろしていた視線を向ける。
私だって伊作先輩の助けになれて良かった。
「でも保健委員長として情け無い所を見せてしまったね。」
伊作先輩の顔に影がかかる。そんな事私は一度たりとも思った事ないのに。
少し不謹慎かもしれないけど、寧ろ私にとっては紛れもない幸運な事で。
でもこんな事言ったら更に伊作先輩の気を落としてしまうかもしれない。
『私は情け無いだなんて一切思っていません。』
「……… 名前ちゃん。」
『むしろ先輩は1人で抱え込みすぎです。………でもその時は頼りないかもしれませんが私を頼って欲しいです。』
自分で言っときながら耳先まで赤くなるのが分かる。
私、なんておこがましい事を。保健委員長である伊作先輩が私をわざわざ頼りにする事なんかないのに。
でも伊作先輩にも頼りにされて欲しい。
理性と我儘で必死に言葉を取り繕っているのに、これ以上なんて言葉を繋げたらいいのだろう。
「名前ちゃん……」
伊作先輩が自身の腕を伸ばし私の手を取る。
伊作先輩の温もりに胸が大きく高鳴る。
「そう言って貰えて嬉しいな。僕も保健委員長として責任があるから頼れる人がいるのは凄く心強いんだ。」
『先輩……。』
「……何かあったら君を頼っていいかな?」
伊作先輩の熱の入った視線が私の目と重なる。
それはつまり……その先を続ける事が出来ない。
何故なら伊作先輩の発した言葉の意味を理解するのに時間がかかったのは自身の思考が停止してしまったからだ。
「ふぅ。」
名前ちゃんが出て行った襖を見つめ、彼女の巻いてくれた包帯を愛おしく撫でる。
このくらいの怪我なんか自分でいかようにもできる。でも彼女に触れて欲しいが為に治療してもらったものだ。
「名前ちゃん、可愛かったな。」
僕はあの子を前にして先輩の顔が出来ていたかな。
気さくで優しい先輩の顔を利用して、まさか僕が君の前でわざと穴に落ちたなんて気付いてないよね。
僕の為にあんなに一生懸命になって治療してくれるんだなんて僕は幸せ者だ。
この為だったら何回も自身に傷をつけたいぐらいだ。
「また僕の為に治療して欲しいな。」
狂気に近い独占欲と保健委員長としてあるまじき考えが普段の僕を遠ざける。
なんて君は僕を狂いさせるんだ。
『伊作先輩?』
「あはは……やぁ、名前ちゃん。」
今日も今日とて大きく音がした方向に向かうと、穴の空いた地面から土煙が立ち上がっていた。
覗き込むと其処には伊作先輩が居た。
「見られちゃったね…」
『大丈夫ですか!?』
「いやぁ、ちょっと作業してたら落ちちゃって。」
『急いで縄梯子持ってきます!』
急いで用具倉庫に向かい縄梯子を借りて伊作先輩の元へ向かう。
息を切らしながら向かうと穴の底で伊作先輩が力無く笑みを浮かべていた。
『伊作先輩、これを使って下さい!』
「ありがとう。恩に切るよ。」
下ろした縄梯子に伊作先輩が掴み、登り始める。
無事に穴の出口まで登る事ができ、穴から這い上がることが出来た。
砂にまみれた伊作先輩だが私に向ける笑顔は眩しい。
『先輩、怪我はありませんか?』
「大丈夫だよ。怪我はしてなさそう……っ!」
伊作先輩が地面に崩れ落ちる。落ちた時に踏み外したのか視線を下ろすと左足を押さえその箇所は腫れていた。
『伊作先輩!足が!』
「痛た……ちょっと捻ったみたいだ。」
それでも伊作先輩が立ち上がろうとする為、無理矢理止める。
伊作先輩並みの怪我の知識はないがこの腫れが酷いのは私でも見て分かる。
『ちょっと待って下さい!この腫れで歩いたらいけません!』
「これぐらい大丈夫だよ。なんとか歩けるから心配は要らないよ。」
片膝を着きながら立ちあがるがその足元はおぼつかない。
嫌な予感が頭をよぎる。この様子だとまた穴に落ちて足を痛めてしまうかも。そんな事はさせない。
『私にもたれかかって下さい!医務室までお連れします!』
「えっ!」
『行きますよ!』
「えっ、名前ちゃん!」
伊作先輩の返事を待たずに自身の腕を先輩の肩に回し、早急に医務室に向かう。
『伊作先輩、着きました。』
「ありがとう。」
医務室の襖を開けると不運にも誰もいない。
奥に進み、畳の上に伊作先輩をそっと下ろす。
「重かったのにごめんね。」
『こちらこそ無理を言ってすみません。先輩、足は?』
「これぐらいならあとは冷やして安静にしとけば治まるよ。」
『私にできる事ならなんでもします。』
「大丈夫。ここまでしてもらったら充分だよ。」
『でも……』
伊作先輩の事が心配だがあまりグイグイ行き過ぎるといけない。でも気になっている人が怪我をしていたら看てあげたいと思うのは私の我儘かもしれない。がっくりと肩を落とす。
「名前ちゃんは優しいね。」
バッと顔を上げると伊作先輩がクスッと笑ってる。まさか必死な私を見て笑っている?その事実に一気に顔が真っ赤に染まり始める。
「なら、ちょっと手伝ってもらっていいかな?」
『!!!……はい!勿論です!』
伊作先輩の指示通りに動く。
桶に水を入れ、手拭いを濡らし伊作先輩の患部を冷やす。自分の怪我を治療する時とは違い先輩相手だと思うと緊張する。
私、うまく手当て出来ているかな。呆れさせたくない。期待に応えたい一心で手を動かす。
「ありがとう。手当て、上手だったよ。」
『伊作先輩が手取り足取り教えてくれたので。』
「いやいや、初めてなのにテキパキしてたから思わず感心したよ。」
伊作先輩に褒められた。それが何より私を嬉しさで染まり上げていく。
「あの時、名前ちゃんが通りかかってくれて良かった。」
伊作先輩の言い方に下ろしていた視線を向ける。
私だって伊作先輩の助けになれて良かった。
「でも保健委員長として情け無い所を見せてしまったね。」
伊作先輩の顔に影がかかる。そんな事私は一度たりとも思った事ないのに。
少し不謹慎かもしれないけど、寧ろ私にとっては紛れもない幸運な事で。
でもこんな事言ったら更に伊作先輩の気を落としてしまうかもしれない。
『私は情け無いだなんて一切思っていません。』
「……… 名前ちゃん。」
『むしろ先輩は1人で抱え込みすぎです。………でもその時は頼りないかもしれませんが私を頼って欲しいです。』
自分で言っときながら耳先まで赤くなるのが分かる。
私、なんておこがましい事を。保健委員長である伊作先輩が私をわざわざ頼りにする事なんかないのに。
でも伊作先輩にも頼りにされて欲しい。
理性と我儘で必死に言葉を取り繕っているのに、これ以上なんて言葉を繋げたらいいのだろう。
「名前ちゃん……」
伊作先輩が自身の腕を伸ばし私の手を取る。
伊作先輩の温もりに胸が大きく高鳴る。
「そう言って貰えて嬉しいな。僕も保健委員長として責任があるから頼れる人がいるのは凄く心強いんだ。」
『先輩……。』
「……何かあったら君を頼っていいかな?」
伊作先輩の熱の入った視線が私の目と重なる。
それはつまり……その先を続ける事が出来ない。
何故なら伊作先輩の発した言葉の意味を理解するのに時間がかかったのは自身の思考が停止してしまったからだ。
「ふぅ。」
名前ちゃんが出て行った襖を見つめ、彼女の巻いてくれた包帯を愛おしく撫でる。
このくらいの怪我なんか自分でいかようにもできる。でも彼女に触れて欲しいが為に治療してもらったものだ。
「名前ちゃん、可愛かったな。」
僕はあの子を前にして先輩の顔が出来ていたかな。
気さくで優しい先輩の顔を利用して、まさか僕が君の前でわざと穴に落ちたなんて気付いてないよね。
僕の為にあんなに一生懸命になって治療してくれるんだなんて僕は幸せ者だ。
この為だったら何回も自身に傷をつけたいぐらいだ。
「また僕の為に治療して欲しいな。」
狂気に近い独占欲と保健委員長としてあるまじき考えが普段の僕を遠ざける。
なんて君は僕を狂いさせるんだ。