短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
傾慕
ギンギーン!と夜間の学園内に響き渡るあの人の声。
私が恋焦がれている潮江文次郎先輩だ。
私が潮江先輩に抱えている淡いこの恋心に対して同級生のくのたまは苦い顔をしていたけど私は潮江先輩が好き。
ギンギンに忍者している姿、会計委員長であの予算会議でも他の委員会を圧倒する姿、激しい鍛錬に励みたまに見せてくれる優しさも含め心を奪われた。
でも仲の悪いくのたまにそんな目で見てくれるなんて思っていない。
だけど私は潮江先輩が好き。これだけは変わらない。
『やっ!はぁ!』
今日は裏山で一人鍛錬をしている。
敵を想像して苦無の使用を試みるが思うように上手くいかない。もっと鍛錬して強くならないと。
おぼつかない動きにとうとう自分の足に引っかかり、ドサっと地面に倒れ込む。地面の砂利が勢いよく身体を擦る。
『つっ……』
立ちあがろうとすると擦った膝から鈍い痛みが生じる。
地面に尻を付き、座り込み膝を見ると血が滲んでいる。
これぐらいどうって事ないが立とうとする度に痛みに酷さが増す。
確か手持ちに包帯があった筈。装束の上から探すがそこには携帯していた筈の包帯がない。
仕方ない。このまま鍛錬を続けようか。
だが傷は容赦なくズキズキと痛み、思うように身体を動かせない。不幸にも周囲に人の気配も感じない。
ガサッ
『…ひっ!』
いきなり目の前の茂みがガサガサと動き出す。
茂みの動きに激しさが増し気配を感じる。
この山の中、いつ何処から獣が出てもおかしくない。
落ちていた苦無を急いで手に取る。猪か熊か。或いは山賊か。
胸の動悸がみるみる高まり、呼吸が連れて荒くなる。
『はっ……はっ……』
苦無を持つ手が恐怖で震える。だが迎え打つしかない。
ガサガサッ!!!
『っ〜!』
喉から漏れた空気が声になる。あまりの恐怖で目を塞ぐ事さえ出来ないが顔を逸らしてしまった。
「お前、何をやっているんだ?」
『潮江……先輩……』
そこには私の想い人でもある潮江先輩がいた。
力んでいた全身の力が抜け落ちる。
茂みをかき分け私に歩み寄ると、座り込んでいる私に視線を下ろす。
「お前、怪我したのか。」
『は、はい。そうです…』
ご自分にお厳しい方だ。鍛錬が甘いなど言われるのだろう。だが実際事実なのだからしょうがない。何よりこの姿を見られてしまった事に不甲斐なさを感じる。
「見せてみろ。」
そう言い潮江先輩は擦れた膝を診る。
想定していなかった潮江先輩の行動に驚きで目を開いてしまう。
だが慣れた手付きで器用に手当てをする潮江先輩。意外にも手付きは優しい。
恥ずかしく黙り込んでしまい押しつぶされそう沈黙が流れる。周囲の樹々や葉の揺れ動く音がはっきりと耳に入る。
『申し訳ありません。手間を取らせてしまって。』
「ったく、鍛錬不足だ。」
潮江先輩の言葉が胸に刺さる。言葉の通りだ。
手当てを終えた潮江先輩が立ち上がり背中を向ける。飽きられてしまったのだろう。
顔に暗い影がかかり目の前を見ると潮江先輩がしゃがみ込み私を背負おうとしている。
「乗れ。」
『えっ!いや!だ、大丈夫です!』
咄嗟に返事してしまうが内心は混乱していた。
あの潮江先輩が怪我した私を背負う?関わりがない筈の私を?でも申し訳なさと恥ずかしさ、嬉しさが混ざり合う。
「さっさとしろ。」
『は、はい。』
先程より圧のかかった声に従い、恐る恐る潮江先輩の背中にのる。
すると潮江先輩は私をひょいと背負い歩き出す。その背中は想像していた以上に広く頑丈で、安心感が体中に広がる。
そのまま学園まで背負ってくれた潮江先輩。
医務室までは自分の足で歩く事を必死で伝えると渋々下ろしてもらえた。
『ありがとうございました。』
「ふんっ。怪我なら自分でもどうにかしろ。」
『はい、その通りです……』
「怪我を甘く見るな。命を取られるぞ。」
『おっしゃる通りです…』
潮江先輩の言葉に気分が落ち込むと潮江先輩がしまったと言わんばかりの顔をし出す。
気まずい雰囲気が漂う中、頭の上に大きくてゴツゴツした手を置かれ撫でられる。
「苗字。だがな、中々いい線いってたぞ。」
『…………えっ?』
ハッとし顔を上げると、目の前には笑みを浮かべている潮江先輩が居る。だがすぐその笑みは普段の表情に戻され、学園内に戻っていった。
『私の名前………』
知ってくれていた?
数刻前の出来事が忘れられず、いつまでも佇んでいる私に保健委員から声を掛けられる。その時既に傷の痛みなんか全て吹き飛んでいた。
________________________
(なんだ文次郎、もう戻ったのか)
(あぁ)
(くのたまを助けたらしいな)
(下手な鍛錬で傷を負ってたからな)
(ふむ……最近やたらあのくのたまを気にかけているみたいだがお前の嫁か?)
(な!別にそんなつもりはない!!!)
(顔を赤くしても説得力ないが)
(う、うるさい!!!)
(はぁ………さっさとくっつけばよいものを)
ギンギーン!と夜間の学園内に響き渡るあの人の声。
私が恋焦がれている潮江文次郎先輩だ。
私が潮江先輩に抱えている淡いこの恋心に対して同級生のくのたまは苦い顔をしていたけど私は潮江先輩が好き。
ギンギンに忍者している姿、会計委員長であの予算会議でも他の委員会を圧倒する姿、激しい鍛錬に励みたまに見せてくれる優しさも含め心を奪われた。
でも仲の悪いくのたまにそんな目で見てくれるなんて思っていない。
だけど私は潮江先輩が好き。これだけは変わらない。
『やっ!はぁ!』
今日は裏山で一人鍛錬をしている。
敵を想像して苦無の使用を試みるが思うように上手くいかない。もっと鍛錬して強くならないと。
おぼつかない動きにとうとう自分の足に引っかかり、ドサっと地面に倒れ込む。地面の砂利が勢いよく身体を擦る。
『つっ……』
立ちあがろうとすると擦った膝から鈍い痛みが生じる。
地面に尻を付き、座り込み膝を見ると血が滲んでいる。
これぐらいどうって事ないが立とうとする度に痛みに酷さが増す。
確か手持ちに包帯があった筈。装束の上から探すがそこには携帯していた筈の包帯がない。
仕方ない。このまま鍛錬を続けようか。
だが傷は容赦なくズキズキと痛み、思うように身体を動かせない。不幸にも周囲に人の気配も感じない。
ガサッ
『…ひっ!』
いきなり目の前の茂みがガサガサと動き出す。
茂みの動きに激しさが増し気配を感じる。
この山の中、いつ何処から獣が出てもおかしくない。
落ちていた苦無を急いで手に取る。猪か熊か。或いは山賊か。
胸の動悸がみるみる高まり、呼吸が連れて荒くなる。
『はっ……はっ……』
苦無を持つ手が恐怖で震える。だが迎え打つしかない。
ガサガサッ!!!
『っ〜!』
喉から漏れた空気が声になる。あまりの恐怖で目を塞ぐ事さえ出来ないが顔を逸らしてしまった。
「お前、何をやっているんだ?」
『潮江……先輩……』
そこには私の想い人でもある潮江先輩がいた。
力んでいた全身の力が抜け落ちる。
茂みをかき分け私に歩み寄ると、座り込んでいる私に視線を下ろす。
「お前、怪我したのか。」
『は、はい。そうです…』
ご自分にお厳しい方だ。鍛錬が甘いなど言われるのだろう。だが実際事実なのだからしょうがない。何よりこの姿を見られてしまった事に不甲斐なさを感じる。
「見せてみろ。」
そう言い潮江先輩は擦れた膝を診る。
想定していなかった潮江先輩の行動に驚きで目を開いてしまう。
だが慣れた手付きで器用に手当てをする潮江先輩。意外にも手付きは優しい。
恥ずかしく黙り込んでしまい押しつぶされそう沈黙が流れる。周囲の樹々や葉の揺れ動く音がはっきりと耳に入る。
『申し訳ありません。手間を取らせてしまって。』
「ったく、鍛錬不足だ。」
潮江先輩の言葉が胸に刺さる。言葉の通りだ。
手当てを終えた潮江先輩が立ち上がり背中を向ける。飽きられてしまったのだろう。
顔に暗い影がかかり目の前を見ると潮江先輩がしゃがみ込み私を背負おうとしている。
「乗れ。」
『えっ!いや!だ、大丈夫です!』
咄嗟に返事してしまうが内心は混乱していた。
あの潮江先輩が怪我した私を背負う?関わりがない筈の私を?でも申し訳なさと恥ずかしさ、嬉しさが混ざり合う。
「さっさとしろ。」
『は、はい。』
先程より圧のかかった声に従い、恐る恐る潮江先輩の背中にのる。
すると潮江先輩は私をひょいと背負い歩き出す。その背中は想像していた以上に広く頑丈で、安心感が体中に広がる。
そのまま学園まで背負ってくれた潮江先輩。
医務室までは自分の足で歩く事を必死で伝えると渋々下ろしてもらえた。
『ありがとうございました。』
「ふんっ。怪我なら自分でもどうにかしろ。」
『はい、その通りです……』
「怪我を甘く見るな。命を取られるぞ。」
『おっしゃる通りです…』
潮江先輩の言葉に気分が落ち込むと潮江先輩がしまったと言わんばかりの顔をし出す。
気まずい雰囲気が漂う中、頭の上に大きくてゴツゴツした手を置かれ撫でられる。
「苗字。だがな、中々いい線いってたぞ。」
『…………えっ?』
ハッとし顔を上げると、目の前には笑みを浮かべている潮江先輩が居る。だがすぐその笑みは普段の表情に戻され、学園内に戻っていった。
『私の名前………』
知ってくれていた?
数刻前の出来事が忘れられず、いつまでも佇んでいる私に保健委員から声を掛けられる。その時既に傷の痛みなんか全て吹き飛んでいた。
________________________
(なんだ文次郎、もう戻ったのか)
(あぁ)
(くのたまを助けたらしいな)
(下手な鍛錬で傷を負ってたからな)
(ふむ……最近やたらあのくのたまを気にかけているみたいだがお前の嫁か?)
(な!別にそんなつもりはない!!!)
(顔を赤くしても説得力ないが)
(う、うるさい!!!)
(はぁ………さっさとくっつけばよいものを)