短編
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熱病と恋情
身体が怠い。
鉛のように重く、息も上がってきた。
昨日の野外実習で雨に打たれたのが原因なのだろう。実習を終え学園に帰ってきてから先生方に報告し、その後風呂に入り体を清めると途端に疲れが出てきた。
今日の午後は休みの為、自室に戻り布団に倒れ込む。
『うっ……』
部屋に差し込む夕日の眩しさで目を開ける。
横に誰かが居る。
「大丈夫か、名前。」
『……っ、文次郎。』
「まったく。お前はバカタレだ。」
布団の脇には、あぐらをかいて座っている恋仲の文次郎が居た。
『あれ。……文次郎も実習の筈、だったよね?』
「もう終わった。ったく、忍びが体調を崩すだなんて情けないぞ。」
普段なら軽く流せるような彼の軽口も、今の弱り切った身体には妙に酷く応える。
悔しいけれど、今の私には言い返す気力すら湧いてこなかった。
「身体はましになったのか。」
『うん……。』
「その様子じゃ、今日はまだ無理だな。お前は静かに休め。」
そう言い捨てて立ち上がろうとする文次郎。
ここ最近はお互いに実習やら忍務やらで忙しく、すれ違いばかりで二人きりで過ごす時間など全く作れずにいた。去っていこうとする文次郎の広い背中が視界を塞ぎ、寂しさが胸を突く。去ってしまうのが嫌で、思わず伸ばした手で裾を掴み、引き留めていた。
『行かないで……。』
その絞り出すような小さな声に、文次郎はぴたりと足を止める。
「お前はちゃんと休まないといけないだろう。」
『まだ側にいて。……お願い。』
熱でうるうると潤む目で見つめ返すと、文次郎は「はぁ……」と呆れたような、けれどどこか降参したような深々とした溜め息をついた。そして再び足をこちらへと向け、静かに部屋の扉を閉める。
「……少しだけだぞ。」
『うん。』
数刻、時を遡る。
実習を終えて学園に戻ったのは昼過ぎだった。
確か名前も今日は実習で帰ってきているはずだ。ここ最近、俺も委員会や授業等で忙しく、名前にろくに会えていなかった。
幸い午後からは空いている。少しでも名前の顔が見たくて、俺は足音を殺してくのたま長屋へと忍び込んだ。
名前の部屋の前に立ち、そっと襖を開けると、布団に丸くなって寝ている姿があった。
まだ昼過ぎだというのに寝ている様子に、ふと疑問を抱く。
気配を消したまま部屋へ上がり込み、覗き込むように様子を窺うと、いつにも増して顔色が赤い。体調でも悪いのだろうか。
そっと額に手をかざすと、手のひらから伝わってきたのは明らかな熱だった。
(まったく……忍びの卵だというのに体調を崩すとは情けない。)
内心で呆れつつも、これ以上邪魔にならないよう部屋を出ようとしたその時、布団の中で名前が目を覚まそうと身じろぎした。
辛そうに眉を寄せるその姿を目にしてしまっては、そのまま立ち去ることなどできるはずもない。俺は溜め息をひとつ吐き、暫くここで様子を見ることにしたのだった。
側にいて数刻が経つ。
布団の脇で、互いの手がそっと伸ばされ、指を絡め合っていた。
先に手を伸ばしたのは私だったけれど、人肌の温もりが欲しくて縋るように差し出した手を、文次郎は何も言わずに力強く握りしめてくれた。
いつもなら「バカタレ」と照れ隠しに小突かれるはずなのに、今の文次郎は驚くほど素直に手を握り返してくれている。
『ねぇ、文次郎……こっちに来て。』
不意に、名前がぽつりと呟いた。
「ここで充分だろ。」
『……少しだけ、一緒に寝たいの。』
「なっ……!?」
名前はそう言いながら、自分が入っている布団の端を少しだけめくり、俺を中へと誘い込んでくる。
その瞬間、俺の脳裏に忍びの三禁の戒めが警鐘のように響き渡った。
駄目だ、駄目だ。いくら恋仲とはいえ、病人に付き添うこの状況で同じ布団の中へ入り込むなど忍者としても男としても決して許されることではない。
だが、名前は熱に浮かされたうるんだ瞳で、なおも俺を誘うように見つめてくる。
ここ最近、忍務ですれ違いばかりでろくに側にいられなかった自責の念もあり、俺の理心は易々とぐらついてしまうのだった。
『ねっ? お願い……。』
「すっ、少しだけだぞ……!」
『……うん!』
文次郎が意を決したように、そっと布団の中へと滑り込んできた。
私自身の熱気と、それ以上に温かく包み込んでくる文次郎のぬくもり。鍛錬によって隙なく鍛え上げられた逞しい胸板や体格を間近に感じ、彼が男なのだと否応なしに意識させられる。久しぶりの至近距離に胸が跳ねるように踊った。
文次郎の胸元にそっと手をかけ、甘えるように頭を彼の胸へと擦り付けると文次郎の耳の先が一気に真っ赤に染まっていくのが見えた。その様子に、会えなくて寂しかったのは自分だけじゃなかったのだと分かり愛おしさが胸いっぱいに込み上げてくる。
『ようやく一緒になれた。』
「……バカタレ。」
『ふふっ、幸せ。』
「なっ! そ、そんなに近づくな!」
『可愛い、文次郎。』
そのまま彼の首元へと愛おしさを込めて腕を回すと、文次郎は慌てて身体を強張らせた。いつもの厚い忍装束とは違う薄手の寝巻き越しだからこそ、動揺して跳ねる文次郎の鼓動や動きが、直に私の素肌へと伝わってくるのだった。
『いいでしょ、恋仲なんだから。』
「これ以上は……。」
文次郎のいつもと違う焦り具合を不思議に思っていると、自分の太ももあたりに硬く熱を帯びた膨らみが直接当たっていることに気づいた。文次郎がここまで狼狽していた本当の理由を察する。
『……ふふ、反応しちゃった?』
「っ……! わざわざ口に出して言うな、バカタレ!」
『文次郎、こっち向いて。』
照れと恥ずかしさで明後日の方向を向いていた文次郎の顎に手を添え、強引にこちらを向かせるとそのまま彼の唇へと口吸いを落とした。
ただ同じ布団に入り、少し抱きついただけで男として素直に反応してしまう文次郎が愛おしくてたまらなくなり、我慢できなくなってしまったのだ。
男らしい逞しさとは対照的な彼の少し薄い唇から、熱い吐息と温もりが直接伝わってくる。何度も角度を変えて深く唇を重ね、そこから滑らせるように彼の赤くなった頬や目元にも愛おしさを込めて口付けを落としていった。
「……なっ! バッ……バカタレ!」
『んっ……嫌……だった?』
顔を真っ赤に染めた文次郎が、慌てて私を強引に突き放した。
本当に可愛い文次郎。本人に可愛いと言いすぎると本格的に怒り出すので普段はあまり口にできないけれど、こんなウブな反応をされてしまっては、どうしても意地悪して虐めたくなってしまう。
『嫌なら……ごめんね。』
文次郎の顔に添えていた手をそっと外し、あえてしゅんと悲しそうな表情をつくってポツリと呟いてみる。
すると文次郎は、何かを必死に耐え忍ぶような顔をしてぐっと言葉を詰まらせ黙り込んでしまった。
ふふっ、耐えてる、耐えてる。
「……嫌とは、言ってない。」
『…………。』
「俺だって……久しぶりだから……だ……っ。」
顔を真っ赤に染めながら明後日の方向へそっぽを向き、必死に照れ隠しをする文次郎。
これ以上ないほど意地らしく欲を掻き立ててくる彼の姿が、愛おしくてたまらない。
ふと互いに目が合うと、張り詰めていた空気がふわりと和らぎどちらからともなく自然と笑みが溢れ出していた。
『っふ、ん……文次郎……っ。』
「んっ……名前……。」
その後、自然とどちらからともなく口吸いの続きが始まった。もう互いに止めることなどできない。
浅く重ねるだけだった唇は徐々に濃密で深いものへと変わり、文次郎の逞しい腕がそっとこちらの腰へと回される。そんな些細な力強い動きでさえ、今の身体には強烈な興奮の材料になっていた。
『んむっ……!』
文次郎の手がゆっくりと滑り降り、胸元へと触れてくる。
薄い寝巻き越しに伝わる感触にどこか物足りなさを覚えつつも、彼が不器用かつ繊細に揉みほぐす手付きそのものに痺れるような快感が全身を駆け巡った。
文次郎の熱い吐息が耳元に漏れ聞こえるたび背筋が甘く跳ね上がってしまう。
『はぁっ、んあっ……もんじ……っ!』
「……感じてるのか?」
『だって……久しぶり、なんだもん……んっ!』
文次郎の手によって胸元の衣がはだけ、乱れた隙間から素肌の乳房へと直接手が触れる。
久しぶりに味わう大好きな彼の愛撫。どれだけこの肌の温もりと触れ合いを待ち望んでいたことだろう。ただ優しく触れられるだけじゃ、到底足りない。もっと激しく、もっと深く触ってほしいと身体の奥が疼いて仕方がなかった。
『はぁ、もっと……触って、んぁっ!』
熱のせいなのか、それともずっと文次郎に会いたかった反動なのか、自分でも驚くほど淫らに彼を求めてしまう。
「っ……名前、お前……そんな顔……。」
欲望と理性の間で葛藤するように文次郎が低く掠れた声を漏らす。
直後、彼の大きな手がさらに強い力で胸を揉み込み、親指で先端の突起をキュッと強めに捻り上げた。
『んあぁっ……!』
「……そんな声を上げたら、隣にまで丸聞こえだぞ。」
そう言いながらも、文次郎の刺激は止まるどころか熱を増していく。
もう片方の手が滑るように帯の結び目へと向かい、ゆっくりと解かれていく感覚に、身体の奥がじんじんと熱く疼き続けていた。
俺の手の中で、甘い声を漏らしながら翻弄される名前。その素直な反応も相まって、久しぶりの愛撫にどうしても手が止まらない。
引き寄せられるように名前の柔らかな乳房へと腕が伸び、俺の指先ひとつで敏感に感じて跳ねる姿に溢れ出る興奮を抑えきれなくなっていた。
固く張り詰めた先端の突起は薄い寝巻き越しからでも存在感を主張している。
そんな布切れが一刻も早く邪魔になり、胸元を強引に開け放つと、白く露わになった肌と主張する突起へ夢中でかぶりつくように吸い付いた。
『あっ! んっ! はぁ……っ!』
頭上から名前の切ない嬌声が降ってくる。俺の頭をぎゅっと抱き寄せるその腕からは愛おしい名前の匂いが立ち上り、全身を包み込んでくる。
その香りに脳まで痺れさせられ、俺の股間の熱はますます跳ね上がっていった。もはや己の欲に歯止めなど効かない。
ゆっくりと名前のなめらかな内股をなぞるようにさすると、それだけでびくっと全身を跳ねさせて反応する。
布越しに少し触れただけで容易にわかるほど、彼女の中心部はすでに十分すぎる湿り気を帯びていた。
そのまま秘部へと直接指を滑り込ませると、そこは熱い潤いで溢れかえっている。指先をゆっくりと挿し込み、内側をかき回すように動かせば静かな室内にクチョクチョと濡れた卑猥な音が水音を立てて響き始めた。
「……いつもよりすごいな。」
『だって……っ』
恥ずかしそうに頬を朱に染め、たまらず顔を背けられる。
今だけは、忍びの三禁など破ってしまってもいいだろう。
普段あれだけ「三禁を守れ」と周囲にも豪語しているこの俺が、今は一切の我慢などできそうにない。
俺をここまで乱し、理性を狂わせるのは後にも先にもこいつだけなんだろうな――。
己の不甲斐なさと、それ以上にこいつを愛おしく思う気持ちに、俺は心の中でそっと自嘲の笑みを浮かべるのだった。
『文次郎……っ。』
「なんだ?」
『もっ、いいから……んっ! ……中に、挿れて……っ。』
「なっ……! まだしっかり解れてないだろうが。」
そう言いながらも、涙目の潤んだ瞳で俺をすがるように見上げてくる名前。
その毒気のない艶やかな姿に俺は思わず喉を鳴らして生唾を飲み込んだ。こっちは倒れそうなほど理性を抑え込んで我慢しているというのに、こいつは容赦なく俺を煽り立ててくる。
『欲しいの……早くっ……!』
――ぷつん、と頭の中で何かが切れる音がした。
ガバッと名前の両足を割るように股を開くと、溢れ出た透明な粘液がそのまま尻の肉へと一筋垂れ落ちていた。
その淫らな光景を目にした瞬間、押し込めていた本能が激流となって噴き出し、俺自身にももう動きを止めることなど不可能となったのだった。
文次郎が自身の固く立ち上がった怒張を露わにする。
肉棒の亀頭からは溢れ出た先走りがしずくと垂れ、それを見るだけでこちらの秘部の濡れがさらに増していく。太い肉棒に幾本も浮き出た脈打つ血管が荒々しく、熱に浮かされた頭では早く入れてほしいという欲望しか浮かんでこない。
私はたまりかねて文次郎の首元に手を回して引き寄せ、懇願に近い形で必死に強請った。
『もう……待てないの……っ。お願い……。』
「っ……! ………後で泣いても知らんぞ。お前が誘ったんだからな……。」
荒い吐息を吐き出しながら、文次郎の熱い怒張を自身の割れ目へと誘導し、ゆっくりとあてがう。
クチュ、と肉棒と秘部の粘液が混ざり合う卑猥な水音が響き、頭からぬめりを伴ってじわじわと奥へと侵入してきた。熱と溢れ出る蜜で充分すぎるほど濡れそぼっていた膣内は抵抗することもなく容易に彼の太さを最奥まで受け入れてしまう。
『っぁああ……っ!』
「くっ……!」
奥深くまで一気に貫かれた感覚に全身が震える。
挿入を果たした直後、上着を脱ぎ捨てて裸体となった文次郎の逞しい腕が、逃がさないように強く抱き締めてきた。
鍛え上げられた分厚い胸板の熱気、そして鼻腔をくすぐる文次郎固有の汗と男の匂いに包み込まれ、その強烈な存在感に興奮した秘部がぎゅうっと彼を締め付けるように収縮した。
『はぁっ、文次郎……っ、口吸い、してぇ!』
「っあ……名前……っ!」
最奥まで挿入されてなお、欲しがるようにねだると、文次郎は貪るように唇を重ねてきた。
引き剥がせないほど深く激しく唇を吸われ、互いに混ざり合った蜜のような唾液が口元から糸を引いて顎へとつうっと流れ落ちていく。
もっと、もっと、もっと――。
どれだけ繋がっても満たされないほど大好きな文次郎と、上も下も一切の隙間なく結ばれている歓びに溢れ出す愛おしさと快感がどうしても抑えきれない。
「くっ……んっ、名前……名前っ!」
腰を打ちつけるたび、繋がった秘部からはクチュクチュと激しく卑猥な水音が部屋中に響き渡る。
文次郎の容赦ない激しい律動によって最奥を何度も強く突き上げられるたび、私はその強烈な快楽にどこまでも酔いしれた。激しい突き上げを受けるたびに膣奥がぎゅっと几帳面に締め付けられ、熱い快感の波に呑み込まれては幾度も小さく達してしまう。
「名前……好きだ。」
『んっ!……そんな事!っあ!……言われたらぁ!あっ!』
「くっ!……こっちを向け!」
『んっ!!!』
何度も激しい律動を繰り返すたび、熱く濡れた膣内が締め付けてくる。
たまらなくなった俺は名前の唇に獣のように噛み付いた。するとその刺激にさらに強く締め上げられ、溢れ出そうになる情熱を必死に耐える。
『もっ! またぁ!……んぁあ!!!』
目の前で何度も絶頂に達し、歓喜に震える名前の姿に、俺自身もいよいよ限界を迎え弾け飛びそうになる。
最後は深々と口吸いを交わしながら、あふれ出る嬌声を自身の口で塞ぎ、濃厚に舌を絡め合った。
必死に舌を絡め返してくる名前の愛おしい姿と、それに追従するように激しく締め付けられる肉棒の感触に押し切られ、俺は最奥へと腰を強く打ち付けたまま、激しい絶頂を迎えたのだった。
『ふふっ、元気出た。』
「無理をさせたな……すまん。」
『大丈夫。』
ことの後の片付けを済ませ、互いに肩を寄せ合いながら、そっと指を絡め合う。
普段なかなか触れ合えない時間が続いていただけに、心も身体も深く満たされていくのが分かった。
『文次郎。』
「なんだ。」
『ありがとう。』
顔を寄せ、そっと優しく唇を重ねる。
次に温め合えるのはきっとしばらく先になるのだろうと、溢れるほどの想いを込めて。
文次郎は何も言わずただ静かにその口付けを受け入れてくれた。その素直な優しさに胸が温かくなり、私は愛おしさを込めてそのまま彼の体を力強く抱き締める。
『んっ?』
「…………」
『あの……膨らみが……』
「……うるさい。」
『この後……用事は?』
「……ない。」
『…………もう一回、する?』
心より身体の方が正直というか、なんというか。
あれだけ深く身体を重ねたはずだというのに到底足りない。だが、そんな恥ずかしい本音を面と向かって口にする度胸などあるはずもなかった。
せっかく着替えたはずの装束を少しだけ着崩し、名前が熱を帯びた瞳で妖艶に俺を誘ってくる。その無防備で艶やかな姿を目にした瞬間、おさまったはずの俺の熱が、再び激しく込み上げてきた。
『おいで、文次郎。』
導かれるまま、俺は名前の柔らかな胸元へとゆっくり引き寄せられていく。
肌から伝わる熱と香ばしい甘い匂いが鼻腔をくすぐりせっかく引き戻しかけた理性を易々と溶かしていった。
一度重なり合ったことで解けてしまったタガはもう元通りには結べそうにない。
文次郎…っと名を呼ぶ吐息をその唇ごと再び塞ぎ込み、今度は急かすことなく、確かめ合うように深く深く舌を絡めていく。
「……明日、起きられなくなっても知らんぞ。」
掠れた声で意地悪い囁きを落としながら、着崩された装束の隙間へと滑り込ませた手が熱を帯びた素肌を愛おしむように撫で上げていく。
――忍びの三禁も、責務も、今は全てどうでもよかった。
これまで一緒にいられなかった空白の時間の分まで、夜が明けるまで何度もお前の全てを貪り尽くして溶け合おうか。
身体が怠い。
鉛のように重く、息も上がってきた。
昨日の野外実習で雨に打たれたのが原因なのだろう。実習を終え学園に帰ってきてから先生方に報告し、その後風呂に入り体を清めると途端に疲れが出てきた。
今日の午後は休みの為、自室に戻り布団に倒れ込む。
『うっ……』
部屋に差し込む夕日の眩しさで目を開ける。
横に誰かが居る。
「大丈夫か、名前。」
『……っ、文次郎。』
「まったく。お前はバカタレだ。」
布団の脇には、あぐらをかいて座っている恋仲の文次郎が居た。
『あれ。……文次郎も実習の筈、だったよね?』
「もう終わった。ったく、忍びが体調を崩すだなんて情けないぞ。」
普段なら軽く流せるような彼の軽口も、今の弱り切った身体には妙に酷く応える。
悔しいけれど、今の私には言い返す気力すら湧いてこなかった。
「身体はましになったのか。」
『うん……。』
「その様子じゃ、今日はまだ無理だな。お前は静かに休め。」
そう言い捨てて立ち上がろうとする文次郎。
ここ最近はお互いに実習やら忍務やらで忙しく、すれ違いばかりで二人きりで過ごす時間など全く作れずにいた。去っていこうとする文次郎の広い背中が視界を塞ぎ、寂しさが胸を突く。去ってしまうのが嫌で、思わず伸ばした手で裾を掴み、引き留めていた。
『行かないで……。』
その絞り出すような小さな声に、文次郎はぴたりと足を止める。
「お前はちゃんと休まないといけないだろう。」
『まだ側にいて。……お願い。』
熱でうるうると潤む目で見つめ返すと、文次郎は「はぁ……」と呆れたような、けれどどこか降参したような深々とした溜め息をついた。そして再び足をこちらへと向け、静かに部屋の扉を閉める。
「……少しだけだぞ。」
『うん。』
数刻、時を遡る。
実習を終えて学園に戻ったのは昼過ぎだった。
確か名前も今日は実習で帰ってきているはずだ。ここ最近、俺も委員会や授業等で忙しく、名前にろくに会えていなかった。
幸い午後からは空いている。少しでも名前の顔が見たくて、俺は足音を殺してくのたま長屋へと忍び込んだ。
名前の部屋の前に立ち、そっと襖を開けると、布団に丸くなって寝ている姿があった。
まだ昼過ぎだというのに寝ている様子に、ふと疑問を抱く。
気配を消したまま部屋へ上がり込み、覗き込むように様子を窺うと、いつにも増して顔色が赤い。体調でも悪いのだろうか。
そっと額に手をかざすと、手のひらから伝わってきたのは明らかな熱だった。
(まったく……忍びの卵だというのに体調を崩すとは情けない。)
内心で呆れつつも、これ以上邪魔にならないよう部屋を出ようとしたその時、布団の中で名前が目を覚まそうと身じろぎした。
辛そうに眉を寄せるその姿を目にしてしまっては、そのまま立ち去ることなどできるはずもない。俺は溜め息をひとつ吐き、暫くここで様子を見ることにしたのだった。
側にいて数刻が経つ。
布団の脇で、互いの手がそっと伸ばされ、指を絡め合っていた。
先に手を伸ばしたのは私だったけれど、人肌の温もりが欲しくて縋るように差し出した手を、文次郎は何も言わずに力強く握りしめてくれた。
いつもなら「バカタレ」と照れ隠しに小突かれるはずなのに、今の文次郎は驚くほど素直に手を握り返してくれている。
『ねぇ、文次郎……こっちに来て。』
不意に、名前がぽつりと呟いた。
「ここで充分だろ。」
『……少しだけ、一緒に寝たいの。』
「なっ……!?」
名前はそう言いながら、自分が入っている布団の端を少しだけめくり、俺を中へと誘い込んでくる。
その瞬間、俺の脳裏に忍びの三禁の戒めが警鐘のように響き渡った。
駄目だ、駄目だ。いくら恋仲とはいえ、病人に付き添うこの状況で同じ布団の中へ入り込むなど忍者としても男としても決して許されることではない。
だが、名前は熱に浮かされたうるんだ瞳で、なおも俺を誘うように見つめてくる。
ここ最近、忍務ですれ違いばかりでろくに側にいられなかった自責の念もあり、俺の理心は易々とぐらついてしまうのだった。
『ねっ? お願い……。』
「すっ、少しだけだぞ……!」
『……うん!』
文次郎が意を決したように、そっと布団の中へと滑り込んできた。
私自身の熱気と、それ以上に温かく包み込んでくる文次郎のぬくもり。鍛錬によって隙なく鍛え上げられた逞しい胸板や体格を間近に感じ、彼が男なのだと否応なしに意識させられる。久しぶりの至近距離に胸が跳ねるように踊った。
文次郎の胸元にそっと手をかけ、甘えるように頭を彼の胸へと擦り付けると文次郎の耳の先が一気に真っ赤に染まっていくのが見えた。その様子に、会えなくて寂しかったのは自分だけじゃなかったのだと分かり愛おしさが胸いっぱいに込み上げてくる。
『ようやく一緒になれた。』
「……バカタレ。」
『ふふっ、幸せ。』
「なっ! そ、そんなに近づくな!」
『可愛い、文次郎。』
そのまま彼の首元へと愛おしさを込めて腕を回すと、文次郎は慌てて身体を強張らせた。いつもの厚い忍装束とは違う薄手の寝巻き越しだからこそ、動揺して跳ねる文次郎の鼓動や動きが、直に私の素肌へと伝わってくるのだった。
『いいでしょ、恋仲なんだから。』
「これ以上は……。」
文次郎のいつもと違う焦り具合を不思議に思っていると、自分の太ももあたりに硬く熱を帯びた膨らみが直接当たっていることに気づいた。文次郎がここまで狼狽していた本当の理由を察する。
『……ふふ、反応しちゃった?』
「っ……! わざわざ口に出して言うな、バカタレ!」
『文次郎、こっち向いて。』
照れと恥ずかしさで明後日の方向を向いていた文次郎の顎に手を添え、強引にこちらを向かせるとそのまま彼の唇へと口吸いを落とした。
ただ同じ布団に入り、少し抱きついただけで男として素直に反応してしまう文次郎が愛おしくてたまらなくなり、我慢できなくなってしまったのだ。
男らしい逞しさとは対照的な彼の少し薄い唇から、熱い吐息と温もりが直接伝わってくる。何度も角度を変えて深く唇を重ね、そこから滑らせるように彼の赤くなった頬や目元にも愛おしさを込めて口付けを落としていった。
「……なっ! バッ……バカタレ!」
『んっ……嫌……だった?』
顔を真っ赤に染めた文次郎が、慌てて私を強引に突き放した。
本当に可愛い文次郎。本人に可愛いと言いすぎると本格的に怒り出すので普段はあまり口にできないけれど、こんなウブな反応をされてしまっては、どうしても意地悪して虐めたくなってしまう。
『嫌なら……ごめんね。』
文次郎の顔に添えていた手をそっと外し、あえてしゅんと悲しそうな表情をつくってポツリと呟いてみる。
すると文次郎は、何かを必死に耐え忍ぶような顔をしてぐっと言葉を詰まらせ黙り込んでしまった。
ふふっ、耐えてる、耐えてる。
「……嫌とは、言ってない。」
『…………。』
「俺だって……久しぶりだから……だ……っ。」
顔を真っ赤に染めながら明後日の方向へそっぽを向き、必死に照れ隠しをする文次郎。
これ以上ないほど意地らしく欲を掻き立ててくる彼の姿が、愛おしくてたまらない。
ふと互いに目が合うと、張り詰めていた空気がふわりと和らぎどちらからともなく自然と笑みが溢れ出していた。
『っふ、ん……文次郎……っ。』
「んっ……名前……。」
その後、自然とどちらからともなく口吸いの続きが始まった。もう互いに止めることなどできない。
浅く重ねるだけだった唇は徐々に濃密で深いものへと変わり、文次郎の逞しい腕がそっとこちらの腰へと回される。そんな些細な力強い動きでさえ、今の身体には強烈な興奮の材料になっていた。
『んむっ……!』
文次郎の手がゆっくりと滑り降り、胸元へと触れてくる。
薄い寝巻き越しに伝わる感触にどこか物足りなさを覚えつつも、彼が不器用かつ繊細に揉みほぐす手付きそのものに痺れるような快感が全身を駆け巡った。
文次郎の熱い吐息が耳元に漏れ聞こえるたび背筋が甘く跳ね上がってしまう。
『はぁっ、んあっ……もんじ……っ!』
「……感じてるのか?」
『だって……久しぶり、なんだもん……んっ!』
文次郎の手によって胸元の衣がはだけ、乱れた隙間から素肌の乳房へと直接手が触れる。
久しぶりに味わう大好きな彼の愛撫。どれだけこの肌の温もりと触れ合いを待ち望んでいたことだろう。ただ優しく触れられるだけじゃ、到底足りない。もっと激しく、もっと深く触ってほしいと身体の奥が疼いて仕方がなかった。
『はぁ、もっと……触って、んぁっ!』
熱のせいなのか、それともずっと文次郎に会いたかった反動なのか、自分でも驚くほど淫らに彼を求めてしまう。
「っ……名前、お前……そんな顔……。」
欲望と理性の間で葛藤するように文次郎が低く掠れた声を漏らす。
直後、彼の大きな手がさらに強い力で胸を揉み込み、親指で先端の突起をキュッと強めに捻り上げた。
『んあぁっ……!』
「……そんな声を上げたら、隣にまで丸聞こえだぞ。」
そう言いながらも、文次郎の刺激は止まるどころか熱を増していく。
もう片方の手が滑るように帯の結び目へと向かい、ゆっくりと解かれていく感覚に、身体の奥がじんじんと熱く疼き続けていた。
俺の手の中で、甘い声を漏らしながら翻弄される名前。その素直な反応も相まって、久しぶりの愛撫にどうしても手が止まらない。
引き寄せられるように名前の柔らかな乳房へと腕が伸び、俺の指先ひとつで敏感に感じて跳ねる姿に溢れ出る興奮を抑えきれなくなっていた。
固く張り詰めた先端の突起は薄い寝巻き越しからでも存在感を主張している。
そんな布切れが一刻も早く邪魔になり、胸元を強引に開け放つと、白く露わになった肌と主張する突起へ夢中でかぶりつくように吸い付いた。
『あっ! んっ! はぁ……っ!』
頭上から名前の切ない嬌声が降ってくる。俺の頭をぎゅっと抱き寄せるその腕からは愛おしい名前の匂いが立ち上り、全身を包み込んでくる。
その香りに脳まで痺れさせられ、俺の股間の熱はますます跳ね上がっていった。もはや己の欲に歯止めなど効かない。
ゆっくりと名前のなめらかな内股をなぞるようにさすると、それだけでびくっと全身を跳ねさせて反応する。
布越しに少し触れただけで容易にわかるほど、彼女の中心部はすでに十分すぎる湿り気を帯びていた。
そのまま秘部へと直接指を滑り込ませると、そこは熱い潤いで溢れかえっている。指先をゆっくりと挿し込み、内側をかき回すように動かせば静かな室内にクチョクチョと濡れた卑猥な音が水音を立てて響き始めた。
「……いつもよりすごいな。」
『だって……っ』
恥ずかしそうに頬を朱に染め、たまらず顔を背けられる。
今だけは、忍びの三禁など破ってしまってもいいだろう。
普段あれだけ「三禁を守れ」と周囲にも豪語しているこの俺が、今は一切の我慢などできそうにない。
俺をここまで乱し、理性を狂わせるのは後にも先にもこいつだけなんだろうな――。
己の不甲斐なさと、それ以上にこいつを愛おしく思う気持ちに、俺は心の中でそっと自嘲の笑みを浮かべるのだった。
『文次郎……っ。』
「なんだ?」
『もっ、いいから……んっ! ……中に、挿れて……っ。』
「なっ……! まだしっかり解れてないだろうが。」
そう言いながらも、涙目の潤んだ瞳で俺をすがるように見上げてくる名前。
その毒気のない艶やかな姿に俺は思わず喉を鳴らして生唾を飲み込んだ。こっちは倒れそうなほど理性を抑え込んで我慢しているというのに、こいつは容赦なく俺を煽り立ててくる。
『欲しいの……早くっ……!』
――ぷつん、と頭の中で何かが切れる音がした。
ガバッと名前の両足を割るように股を開くと、溢れ出た透明な粘液がそのまま尻の肉へと一筋垂れ落ちていた。
その淫らな光景を目にした瞬間、押し込めていた本能が激流となって噴き出し、俺自身にももう動きを止めることなど不可能となったのだった。
文次郎が自身の固く立ち上がった怒張を露わにする。
肉棒の亀頭からは溢れ出た先走りがしずくと垂れ、それを見るだけでこちらの秘部の濡れがさらに増していく。太い肉棒に幾本も浮き出た脈打つ血管が荒々しく、熱に浮かされた頭では早く入れてほしいという欲望しか浮かんでこない。
私はたまりかねて文次郎の首元に手を回して引き寄せ、懇願に近い形で必死に強請った。
『もう……待てないの……っ。お願い……。』
「っ……! ………後で泣いても知らんぞ。お前が誘ったんだからな……。」
荒い吐息を吐き出しながら、文次郎の熱い怒張を自身の割れ目へと誘導し、ゆっくりとあてがう。
クチュ、と肉棒と秘部の粘液が混ざり合う卑猥な水音が響き、頭からぬめりを伴ってじわじわと奥へと侵入してきた。熱と溢れ出る蜜で充分すぎるほど濡れそぼっていた膣内は抵抗することもなく容易に彼の太さを最奥まで受け入れてしまう。
『っぁああ……っ!』
「くっ……!」
奥深くまで一気に貫かれた感覚に全身が震える。
挿入を果たした直後、上着を脱ぎ捨てて裸体となった文次郎の逞しい腕が、逃がさないように強く抱き締めてきた。
鍛え上げられた分厚い胸板の熱気、そして鼻腔をくすぐる文次郎固有の汗と男の匂いに包み込まれ、その強烈な存在感に興奮した秘部がぎゅうっと彼を締め付けるように収縮した。
『はぁっ、文次郎……っ、口吸い、してぇ!』
「っあ……名前……っ!」
最奥まで挿入されてなお、欲しがるようにねだると、文次郎は貪るように唇を重ねてきた。
引き剥がせないほど深く激しく唇を吸われ、互いに混ざり合った蜜のような唾液が口元から糸を引いて顎へとつうっと流れ落ちていく。
もっと、もっと、もっと――。
どれだけ繋がっても満たされないほど大好きな文次郎と、上も下も一切の隙間なく結ばれている歓びに溢れ出す愛おしさと快感がどうしても抑えきれない。
「くっ……んっ、名前……名前っ!」
腰を打ちつけるたび、繋がった秘部からはクチュクチュと激しく卑猥な水音が部屋中に響き渡る。
文次郎の容赦ない激しい律動によって最奥を何度も強く突き上げられるたび、私はその強烈な快楽にどこまでも酔いしれた。激しい突き上げを受けるたびに膣奥がぎゅっと几帳面に締め付けられ、熱い快感の波に呑み込まれては幾度も小さく達してしまう。
「名前……好きだ。」
『んっ!……そんな事!っあ!……言われたらぁ!あっ!』
「くっ!……こっちを向け!」
『んっ!!!』
何度も激しい律動を繰り返すたび、熱く濡れた膣内が締め付けてくる。
たまらなくなった俺は名前の唇に獣のように噛み付いた。するとその刺激にさらに強く締め上げられ、溢れ出そうになる情熱を必死に耐える。
『もっ! またぁ!……んぁあ!!!』
目の前で何度も絶頂に達し、歓喜に震える名前の姿に、俺自身もいよいよ限界を迎え弾け飛びそうになる。
最後は深々と口吸いを交わしながら、あふれ出る嬌声を自身の口で塞ぎ、濃厚に舌を絡め合った。
必死に舌を絡め返してくる名前の愛おしい姿と、それに追従するように激しく締め付けられる肉棒の感触に押し切られ、俺は最奥へと腰を強く打ち付けたまま、激しい絶頂を迎えたのだった。
『ふふっ、元気出た。』
「無理をさせたな……すまん。」
『大丈夫。』
ことの後の片付けを済ませ、互いに肩を寄せ合いながら、そっと指を絡め合う。
普段なかなか触れ合えない時間が続いていただけに、心も身体も深く満たされていくのが分かった。
『文次郎。』
「なんだ。」
『ありがとう。』
顔を寄せ、そっと優しく唇を重ねる。
次に温め合えるのはきっとしばらく先になるのだろうと、溢れるほどの想いを込めて。
文次郎は何も言わずただ静かにその口付けを受け入れてくれた。その素直な優しさに胸が温かくなり、私は愛おしさを込めてそのまま彼の体を力強く抱き締める。
『んっ?』
「…………」
『あの……膨らみが……』
「……うるさい。」
『この後……用事は?』
「……ない。」
『…………もう一回、する?』
心より身体の方が正直というか、なんというか。
あれだけ深く身体を重ねたはずだというのに到底足りない。だが、そんな恥ずかしい本音を面と向かって口にする度胸などあるはずもなかった。
せっかく着替えたはずの装束を少しだけ着崩し、名前が熱を帯びた瞳で妖艶に俺を誘ってくる。その無防備で艶やかな姿を目にした瞬間、おさまったはずの俺の熱が、再び激しく込み上げてきた。
『おいで、文次郎。』
導かれるまま、俺は名前の柔らかな胸元へとゆっくり引き寄せられていく。
肌から伝わる熱と香ばしい甘い匂いが鼻腔をくすぐりせっかく引き戻しかけた理性を易々と溶かしていった。
一度重なり合ったことで解けてしまったタガはもう元通りには結べそうにない。
文次郎…っと名を呼ぶ吐息をその唇ごと再び塞ぎ込み、今度は急かすことなく、確かめ合うように深く深く舌を絡めていく。
「……明日、起きられなくなっても知らんぞ。」
掠れた声で意地悪い囁きを落としながら、着崩された装束の隙間へと滑り込ませた手が熱を帯びた素肌を愛おしむように撫で上げていく。
――忍びの三禁も、責務も、今は全てどうでもよかった。
これまで一緒にいられなかった空白の時間の分まで、夜が明けるまで何度もお前の全てを貪り尽くして溶け合おうか。