短編
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逃れられない
『あら、人が居る。』
「やぁ。久しぶりだね。」
野外実習で少し怪我をした為、帰りに医務室の伊作に薬をもらいに来たら曲者であるタソガレドキ城の組頭雑渡昆奈門が居る。確かに気配を感じなかった。雑渡さんと伊作が知り合いなのは知っているが勝手に入ったのだろう。辺りに微かな血の匂いが漂う。
『…何でこんな所に?』
「ちょっと怪我をしてね。」
『先生方にばれても知りませんよ。』
「これは内密にね。」
そう片目で言われ身体が身震いする。それを横目に調合された薬を探すがその間に頭から足まで視線を感じる。……何で私見られてるの。
『そんな見ないで下さい。』
「いい身体だなと思って。」
『変態ですか。』
「前も言ったよ。君に興味がある。」
『あぁ…そういえばそうですね。』
そういえば前に敵と勘違いして闘った記憶がある。その時に勧誘を受けた記憶も。だからと言ってじろじろと見られるのは気分が良くない。不快感を表情に出すと雑渡さんの眉がハの字になる。
「そんなに冷たくしないでよ。」
『貴方、一応敵の組頭ですからね。』
「私は忍術学園の敵ではないよ。」
『それよりも伊作に会えましたか?』
「いやまだだ。」
『……いい加減治療しましょうよ。』
そう言い近くにより雑渡さんの腕を引き寄せ傷を確認する。傷は深くはないが思ったより血が出ている。いつまでも医務室に血の匂いが充満するのは嫌なものだ。消毒し調合された薬を付け包帯を巻いていると忍び装束の右からみえる半月の目が弧を描く。
「…君に治療されるのはいい気分だ。」
『そう煽てても何も出ませんよ。』
「私と君の仲じゃないか。」
何を言っているんだこの人は。しかし敵であるが放置できないしこんなに警戒しないプロ忍者も珍しいのか舐められているのかほとほと溜め息が出る。
『はい、終わりましたよ。次は気をつけて下さい。』
「ありがとう。君のおかげだ。」
『そう思うなら余り伊作とか困らせないで下さいよ。』
「また君に助けられたね。」
『ほんとですよ。』
「そういえばうちの尊奈門が世話になったね。」
そう雑渡さんの口から覚えのある名前が出る。土井先生の因縁である諸泉尊奈門。
『彼あれから元気ですか?』
「君にお灸を据えられた時は大変だったよ。」
『ふふ、それは尊奈門がいけないんですよ。』
先日の件を思い出して笑ってしまう。出会い頭は最悪だったが話をしたら意外と言い奴だった事を思い出す。
「前に団子屋で会った時奢ってもらったのでお礼を言っといて下さ……い…ね…。」
そう言い雑渡さんを見ると目が笑ってなく雰囲気が先程より冷たい。この人さっきまで普通だったよね。
「ふふ、そうだね。」
そう言う雑渡さんは表面的に笑っているが目は冷酷にして虚無なものであり抑揚のない声をしている。どこかで地雷を踏んだのか。分からない。先程の様子と打って変わって今は離れた方が良い。そう自身の身体より警告音が聞こえる。道具を片付けるふりをして距離は取ろうと思い身体を動かす。
『ちょっと道具を片付けますね。』
「名前ちゃん、今私が何を考えているのか分かる?」
雑渡さんの発する言葉の真意が理解できない。それはそう忍者隊の組頭である雑渡昆奈門さんの考えなんか理解できる筈がない。緊張の糸が張り詰めた部屋の空気に汗が背中を伝う。
『……いいえ。私には雑渡さんが何を考えているかなんて想像つきません。』
「ほら、そう言う所だよ。」
『はぁ。』
「何故私の部下である尊奈門を下の名前で呼んでる?」
この人まさか自分の部下を呼び捨てにされた事に対して怒っているのか。確かに人の部下に対して馴れ馴れしかったのか自分の行い、発言を振り返る。既に怒っている雑渡さんをこれ以上怒らせたくない為、形上の謝罪を行う。
『失礼しました。雑渡さんの部下に対して失礼な態度をお取りし申し訳ありません。』
「……君何か勘違いしてない?」
『はい?……と、いうと?』
本日二度目の返事。この人の真意が分からない。彼は一体何を私に求めている。
そう言うと雑渡さんは距離を詰め寄り目の前まで来て下顎を持ち引き寄せられる。蛇に睨まれた蛙とは実際こんな感じなのか。
「私にはそっけない態度なのに何故尊奈門を名で呼ぶ程の仲になっているんだ?」
『それは先日彼と団子屋で話をした延長でそうなりました。雑渡さんが想像している機密情報の漏洩なんて何もありませんよ。』
「そうじゃない。」
『じゃあ何をおっしゃりたいんでしょう?』
『私は君が私以外の男を下の名前で呼んでいるのが気に食わないんだ。」
この男自分が何を言っているのか分かっているのだろうか。
『……雑渡さん、それって嫉妬ですか?』
「そうだ嫉妬だ。」
『なんで私に、……っ!』
そう言うと布越しに口吸いをされる。布越しとはいえ口唇の形、熱感が伝わってくる。そのまま床に押し倒され逃げ場がなくなる。持っていた消毒液包帯が落ち液体が床に染みを作る。あぁ後で伊作に謝らないと。年齢が一回り以上離れている大人がくのたまの私に嫉妬しているのか。雑渡さんの素性は知らないが見た目、カリスマ性、キャリアなら引くて数多なのに何故私に執着するか分からない。
「余計な事を考えているね。」
『はぁっ…それは、んっ!』
口唇がようやく離れたかと思うと雑渡さんの口元の布が取り払われ直に唇が触れる。唇が重なり熱い舌が口腔内に差し挿れられる。クチュと唾液が絡まり濡れ音が脳内に響く。舌を掬い取るように雑渡さんの舌が動く。口内で舌が動かされる度に息が上がっていきどうにかして腕の中から逃れようとするが筋肉質の太い腕に閉じ込められどうする事もできない。
『ふっ、う………んっ』
「……上手だな。妬けるね。」
『そんな事は……んっ!』
「尊奈門にもこうしたのか?」
それでも雑渡さんの降り注ぐ口吸いが止まらない。こんな余裕がない雑渡さん初めて見た。
『っはぁ…、っ違います!こんな事してません!!!』
そう言うと雑渡さんの動きが一瞬止まる。その隙に胸を突き放し距離が取れた事で大きく息を吸い乱れた服を整える。
『……雑渡さん…この間からどうしたんですか?』
「………君を私だけのものにしたい。」
『雑渡さん……。』
「……君の事になると些か冷静になれない。」
私の中での雑渡さんは冷静で命令の為なら容赦なく人を切り捨てるものだと思っていたが感情に左右される一面も持ち合わせているとは意外な面だった。そのまま雑渡さんは立ち上がり医務室の戸に手をかけようする。
「情けない所を見せて済まなかった。でもそのぐらい私は君の事を好いている。」
『雑渡さん……。』
「でもこれぐらいで根を上げるなんて君もまだまだだね。」
『なっ!それは雑渡さんのせいです!』
「君が他の男に取られるなら私は君を攫いに来よう。その時は覚悟しときなさい。」
『その時が来るかなんて分かりませんよ。』
「忍者の情報を甘くみちゃいけない。」
そう言い雑渡さんは誘惑的な目で笑い姿を消す。一人取り残された保健室で先程の事を思い出す。
多分彼が本気で来たら私の心も身体も攫われるだろう。また簡単に唇を奪われる自身の警戒の薄さにもやり場のない後味の悪さが残る。
_______________________
(尊奈門ちょっときなさい。)
(なんでしょう。組頭?)
(お前名前ちゃんに近づくの禁止。)
(はッ!?)
(雑渡さんもうなんなの!)
(名前……これってどう言う状況?)
(伊作ごめんなさい!)
『あら、人が居る。』
「やぁ。久しぶりだね。」
野外実習で少し怪我をした為、帰りに医務室の伊作に薬をもらいに来たら曲者であるタソガレドキ城の組頭雑渡昆奈門が居る。確かに気配を感じなかった。雑渡さんと伊作が知り合いなのは知っているが勝手に入ったのだろう。辺りに微かな血の匂いが漂う。
『…何でこんな所に?』
「ちょっと怪我をしてね。」
『先生方にばれても知りませんよ。』
「これは内密にね。」
そう片目で言われ身体が身震いする。それを横目に調合された薬を探すがその間に頭から足まで視線を感じる。……何で私見られてるの。
『そんな見ないで下さい。』
「いい身体だなと思って。」
『変態ですか。』
「前も言ったよ。君に興味がある。」
『あぁ…そういえばそうですね。』
そういえば前に敵と勘違いして闘った記憶がある。その時に勧誘を受けた記憶も。だからと言ってじろじろと見られるのは気分が良くない。不快感を表情に出すと雑渡さんの眉がハの字になる。
「そんなに冷たくしないでよ。」
『貴方、一応敵の組頭ですからね。』
「私は忍術学園の敵ではないよ。」
『それよりも伊作に会えましたか?』
「いやまだだ。」
『……いい加減治療しましょうよ。』
そう言い近くにより雑渡さんの腕を引き寄せ傷を確認する。傷は深くはないが思ったより血が出ている。いつまでも医務室に血の匂いが充満するのは嫌なものだ。消毒し調合された薬を付け包帯を巻いていると忍び装束の右からみえる半月の目が弧を描く。
「…君に治療されるのはいい気分だ。」
『そう煽てても何も出ませんよ。』
「私と君の仲じゃないか。」
何を言っているんだこの人は。しかし敵であるが放置できないしこんなに警戒しないプロ忍者も珍しいのか舐められているのかほとほと溜め息が出る。
『はい、終わりましたよ。次は気をつけて下さい。』
「ありがとう。君のおかげだ。」
『そう思うなら余り伊作とか困らせないで下さいよ。』
「また君に助けられたね。」
『ほんとですよ。』
「そういえばうちの尊奈門が世話になったね。」
そう雑渡さんの口から覚えのある名前が出る。土井先生の因縁である諸泉尊奈門。
『彼あれから元気ですか?』
「君にお灸を据えられた時は大変だったよ。」
『ふふ、それは尊奈門がいけないんですよ。』
先日の件を思い出して笑ってしまう。出会い頭は最悪だったが話をしたら意外と言い奴だった事を思い出す。
「前に団子屋で会った時奢ってもらったのでお礼を言っといて下さ……い…ね…。」
そう言い雑渡さんを見ると目が笑ってなく雰囲気が先程より冷たい。この人さっきまで普通だったよね。
「ふふ、そうだね。」
そう言う雑渡さんは表面的に笑っているが目は冷酷にして虚無なものであり抑揚のない声をしている。どこかで地雷を踏んだのか。分からない。先程の様子と打って変わって今は離れた方が良い。そう自身の身体より警告音が聞こえる。道具を片付けるふりをして距離は取ろうと思い身体を動かす。
『ちょっと道具を片付けますね。』
「名前ちゃん、今私が何を考えているのか分かる?」
雑渡さんの発する言葉の真意が理解できない。それはそう忍者隊の組頭である雑渡昆奈門さんの考えなんか理解できる筈がない。緊張の糸が張り詰めた部屋の空気に汗が背中を伝う。
『……いいえ。私には雑渡さんが何を考えているかなんて想像つきません。』
「ほら、そう言う所だよ。」
『はぁ。』
「何故私の部下である尊奈門を下の名前で呼んでる?」
この人まさか自分の部下を呼び捨てにされた事に対して怒っているのか。確かに人の部下に対して馴れ馴れしかったのか自分の行い、発言を振り返る。既に怒っている雑渡さんをこれ以上怒らせたくない為、形上の謝罪を行う。
『失礼しました。雑渡さんの部下に対して失礼な態度をお取りし申し訳ありません。』
「……君何か勘違いしてない?」
『はい?……と、いうと?』
本日二度目の返事。この人の真意が分からない。彼は一体何を私に求めている。
そう言うと雑渡さんは距離を詰め寄り目の前まで来て下顎を持ち引き寄せられる。蛇に睨まれた蛙とは実際こんな感じなのか。
「私にはそっけない態度なのに何故尊奈門を名で呼ぶ程の仲になっているんだ?」
『それは先日彼と団子屋で話をした延長でそうなりました。雑渡さんが想像している機密情報の漏洩なんて何もありませんよ。』
「そうじゃない。」
『じゃあ何をおっしゃりたいんでしょう?』
『私は君が私以外の男を下の名前で呼んでいるのが気に食わないんだ。」
この男自分が何を言っているのか分かっているのだろうか。
『……雑渡さん、それって嫉妬ですか?』
「そうだ嫉妬だ。」
『なんで私に、……っ!』
そう言うと布越しに口吸いをされる。布越しとはいえ口唇の形、熱感が伝わってくる。そのまま床に押し倒され逃げ場がなくなる。持っていた消毒液包帯が落ち液体が床に染みを作る。あぁ後で伊作に謝らないと。年齢が一回り以上離れている大人がくのたまの私に嫉妬しているのか。雑渡さんの素性は知らないが見た目、カリスマ性、キャリアなら引くて数多なのに何故私に執着するか分からない。
「余計な事を考えているね。」
『はぁっ…それは、んっ!』
口唇がようやく離れたかと思うと雑渡さんの口元の布が取り払われ直に唇が触れる。唇が重なり熱い舌が口腔内に差し挿れられる。クチュと唾液が絡まり濡れ音が脳内に響く。舌を掬い取るように雑渡さんの舌が動く。口内で舌が動かされる度に息が上がっていきどうにかして腕の中から逃れようとするが筋肉質の太い腕に閉じ込められどうする事もできない。
『ふっ、う………んっ』
「……上手だな。妬けるね。」
『そんな事は……んっ!』
「尊奈門にもこうしたのか?」
それでも雑渡さんの降り注ぐ口吸いが止まらない。こんな余裕がない雑渡さん初めて見た。
『っはぁ…、っ違います!こんな事してません!!!』
そう言うと雑渡さんの動きが一瞬止まる。その隙に胸を突き放し距離が取れた事で大きく息を吸い乱れた服を整える。
『……雑渡さん…この間からどうしたんですか?』
「………君を私だけのものにしたい。」
『雑渡さん……。』
「……君の事になると些か冷静になれない。」
私の中での雑渡さんは冷静で命令の為なら容赦なく人を切り捨てるものだと思っていたが感情に左右される一面も持ち合わせているとは意外な面だった。そのまま雑渡さんは立ち上がり医務室の戸に手をかけようする。
「情けない所を見せて済まなかった。でもそのぐらい私は君の事を好いている。」
『雑渡さん……。』
「でもこれぐらいで根を上げるなんて君もまだまだだね。」
『なっ!それは雑渡さんのせいです!』
「君が他の男に取られるなら私は君を攫いに来よう。その時は覚悟しときなさい。」
『その時が来るかなんて分かりませんよ。』
「忍者の情報を甘くみちゃいけない。」
そう言い雑渡さんは誘惑的な目で笑い姿を消す。一人取り残された保健室で先程の事を思い出す。
多分彼が本気で来たら私の心も身体も攫われるだろう。また簡単に唇を奪われる自身の警戒の薄さにもやり場のない後味の悪さが残る。
_______________________
(尊奈門ちょっときなさい。)
(なんでしょう。組頭?)
(お前名前ちゃんに近づくの禁止。)
(はッ!?)
(雑渡さんもうなんなの!)
(名前……これってどう言う状況?)
(伊作ごめんなさい!)