短編
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「名前、すまない。今日は僕達の買い物につきあってもらって。」
「俺からも礼を言う。ありがとうな。」
『別にどうってことないよ。私も久しぶりに外に出たかったし。』
今日は同級生のは組である伊作、留三郎の三人で町へ買い物にきている。久しぶりの町は活気付いており非常に賑やかだ。
『それにしても、伊作の買い物に留三郎が一緒とは珍しいね。』
「あぁ、それは伊作が色々と不運に巻き込まれやすくてな、心配だから着いてきたんだ。」
「留三郎には色々と助けてもらってるからね〜。」
保健委員会委員長であるからか彼の不運はすごいらしい。確かによく落とし穴に落ちている姿をよく見かけるが、あれが不運ならではかと思うとやけに納得できる。
「でも今日は2人がいるおかげか穴にも落ちないし、転けたりもしないから幸運だよ。」
『はは、そう言われるのは嬉しいけどね。』
そう言われ、本日の買い物はすでに終わり、後は忍術学園に帰るのみ。しかしまだ時間はあるので三人でお茶にすることにし、留三郎がしんべえから教えてもらったお店に入ることにした。
『ここの団子屋さん美味しいね。』
「ここはしんべえから教えてもらってな。一度来てみたかったんだ。」
『へ〜さすがはしんべえだね。美味しいものをよく知っている。』
そう言うとお茶を含み談笑に笑みが溢れる。
お互いの委員会や実習、授業の事で話が盛り上がる。日頃こんなゆったりとした時間がない為か会話に花が咲く。
「あぁ!!」
『どうしたの伊作?』
しばらくすると伊作が大きい声を出し飛び上がる。どうやら買い忘れた物を思い出したみたいだ。
「という訳だから、また買いに行ってくるよ。」
「俺も行く。心配だからな。名前はどうする?」
『それなら私は先に帰っとくよ。町も散策出来たし。』
「名前、すまない。」
『全然いいよ。また今度買い物に付き合わせてね。』
そう伝えると二人とは別行動となり、一人だけ学園に戻る。活気のある町から暫く歩くと裏山に差し掛かる。学園に戻る為にはこの裏山を通らないといけない。普段とは違い外出用の袖を着ている為多少の歩きづらさはあるが問題はない。裏山は日差しが少なく一部暗さが健在している。盗賊が出てきそうな気配がするが対して問題なさそう。気配に気付きながらも足早に帰路を進める。
「おい!そこのお前!あり金全部置いていきな!!」
そう声がし前を見ると盗賊が三人立ちはだかる。
「へへ、痛い目に合わないなら大人しくしといたほうが身のためだぜ。」
「生憎だけど、普通の女性ならそれは通じると思うけどね。」
そう言い、すかさず一人の後ろに回り込み手刀を入れ気を失わせる。それを見た二人は腰元にある刀に手を伸ばすがそれを見逃さず今度は蹴りを鳩尾に蹴り込む。
「うっ!!!」
盗賊達はそう言うと共に地面に倒れ込む。
「呆気ないね。」
「っ、くそ…!このアマ!!!」
地面に伏せる盗賊達を横目に再び足を進める。
するととその内の一人が起き上がり斬りかかろうとする。力の入れ具合が弱かったか。そんな握り方しても簡単に絶命させる程切れる訳がないのに。そう物思いにふけながら避けどうしようか悩んでいると、目の前にいた盗賊がいきなり真横に吹き飛ぶ。凄い音したけどあれはあばらいったね。
「名前!、大丈夫か!」
そういい現れたのはつい先刻別れた筈の留三郎が目の前にいる。
『留三郎!さっき伊作と買い物に行った筈でしょ。どうしてここにいるの?』
「あぁ、買い物ならすぐ済んでそのまま帰ってきたんだ。そしたらお前が絡まれてるのをみてな。怪我はないか?」
『私は大丈夫だよ。けどあいつらが……』
「あいつらにはこれくらいしないと分からないだろう。」
『ありがとう、留三郎。けど伊作はどうしたの?』
「あいつも一緒だ。」
「おーいー名前、大丈夫か〜い?」
そういい後ろを見ると遠目に走る伊作を見つける。また転びそうな予感がするのは私だけかな。
「頼むから心配させるような事はやめてくれよ。肝が冷えたぞ。」
『ごめん、遊びすぎちゃった。』
そういい笑顔で誤魔化そうとすると留三郎が目の前に詰め寄る。近くで見るとつり目ではあるが芯のある意思が宿ってるような瞳に思わず見入ってしまう。あぁこんな気持ちになるのは久しぶりだな。すると留三郎に引き寄せられ抱きしめられる形になり思わずびっくりする。いきなり事で顔に熱が集中するがどうにこうにも動くことができない。
『留三郎、いきなりどうしたの?』
「少しでいいからこうさせてくれ。」
『さすがにこれは恥ずかしいよ……』
「名前……俺の気持ち気付いてないよな?」
そう言われ上を見上げると頬にうっすら赤みがあり、真剣な目つきで私を見つめる友人の姿がある。留三郎とは一年生からの仲でありたまに委員会の手伝いや鍛錬に付き合ってもらってる大事な友人だ。私がこういう性格だから女としてみてもらおうなんて今更思っていなかったがそれはどう言う意味を示してるのかが理解できない。
『えっ、それはどういう意味?……っ!』
するとその声を遮られるように留三郎に引き離された。咄嗟の行動に思考がついていかなかったがその理由が後から来た伊作の声で理解できた。
「二人共〜やっと追いついた。留三郎!いきなり顔付き変えて走ったと思ったらそういう事だったんだね。」
『へっ!?伊作それどういう事!?』
「え?だって盗賊に絡まれてたんでしょ?これ見たら誰でもわかるよ。」
今の所を見られたと思い声が一瞬裏返ったが見られてはいないそうだ。留三郎を見るといつも通りの顔に戻っておりさっきまでの空気はどこにもない。
「ごめんな伊作。名前が襲われてるところをみたらいてもたってもいられなくてな。でも怪我がなくてよかった。」
「そうだったんだね。よかったよ名前に怪我がなくて。」
『ありがとう。伊作も心配してくれて。』
そういい帰る支度を整え再び学園に戻ろうと歩みを揃える。
あの留三郎の言った事はどういうことなんだろう。そう思いながら足を進めるが先程の行動が気になり頭から離れない。暫くすると学園に着き、二人に別れを告げ自室に戻る。同室の友人はびっくりしていたが只ならぬ雰囲気を感じたのかそっとしてくれた。確かに一時期、低学年のときではあるが留三郎に僅かな思いを抱いていた時期もあった。しかし忍者の三禁である思いを持つ事は禁じられてるためその気持ちを無くすように鍛錬や学業に熱意を注いだ。しかし結局は自分の考えすぎなのか気にしないようにしよう。そう自分に言い聞かせ気持ちを鎮めた。
「留三郎、名前と何かあったでしょ?」
「それはどういう意味だ伊作?」
「顔に出てたよ。名前今頃気にしてるよ留三郎の行動に。」
「なっ!!!お前見てたのか!」
「少しだけどね。ちゃんと気持ち伝えるなら伝えないと。中途半端だと相手を混乱させるだけだよ。」
「あぁ、分かってる…俺はあいつが好きだ。けどあいつを困らせるような事はしたくない。」
「もう充分困らせるような事してるよ。もう、君達見てるとなんかこっちがソワソワするよ。」
は組の部屋でそんなやりとりをされてるとはつい知らず。