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女とは恐ろしい
「名前君、首尾は?」
『上々です。』
今日はくのたま教室の名前君と共同忍務に取り組んでいる。
今回の忍務内容は、依頼主の敵対する陣地に忍び込み私は薬売りに、名前君は町民に扮し諜報活動を行っている。
名前君が薬を買いに来た町民に成り変わり、互いに得た情報を矢羽根でやり取りを行う。
命のやり取りはないとはいえ敵陣に忍び込んでいる為、盗聴し情報を収集している事がバレてしまったら命はない。
だが生きて情報を持ち帰るというのが忍者の最も重要な役割だ。
実は彼女との忍務は初めてではない。
忍たまの六年生達は六人いるがくのたま六年生の彼女は一人だ。
五年生時等は問題ないかもしれないが最上級生ともなると外部の実習が主となり、ほぼ卒業までは実習漬けとなる。
忍たまは人数が多い為、同室の子やら共同実習は可能だが彼女は一人な為容易く外部での共同実習が出来ない。
その為フリーの忍者である私と時折一緒の忍務を行っている。
「無事に情報は得たようだね。さすがだ。」
『利吉さんに褒められるなんて光栄です。』
妖艶な微笑みを浮かべる彼女。気の所為だろうか。
学園にいる彼女とは違い、忍務となると彼女は水を得た魚のように忍務を忠実にこなし、ころころと表情言動を変える。正に適材適所という所か。
時折本当に年下かと疑う節がある。
彼女と定期的な忍務を行う事になったのは父上と学園長からの提案でもあった。
父上、学園長からのお墨付きの彼女であれば安心はできる。
「じゃあそろそろ撤退だ。」
依頼主が得たかった情報を集める事ができた為薬売り、町民から忍び装束に着替え敵陣を後にする。
『利吉さん……。』
「……あぁ」
町を出て数刻駆けている筈なのに背後から気配がする。
彼女が言わんとしている事が分かる。
つけられている。
敵に気付かれたのか。気配からにして忍びだ。
二人で居ては確実に彼女に危険が迫る。ここは無難に分かれた方が良さそうだ。
「名前君、二手に分かれよう。」
『敵はどうしましょうか?』
「撒く。できるか?」
『分かりました。』
利吉さんとは別の方向に駆け出すと敵が追跡してくる。
懐から手裏剣を取り出し、投げ打つと敵の一人がギャっと声を上げる。この程度なら撒けるか。
四半刻程走り、足を止めず後方を見やるが不穏な空気に気付く。辺りの草葉を馳ける音が消えた。
立ち止まり、辺りを見渡すと完全に気配が消えている。
妙だ。
周辺を警戒し、不気味な暗い森から離れようとすると見計らったように数人の追手の姿が顕になる。
「逃げられんぞ。」
まだここは敵陣の支配領域。地形的に理解していても多勢に無勢。地の利を理解していなかった自身に落ち度がある。
潔く手を挙げ大人しく敵に捕まる。
「名前君……」
名前君が捕まってしまった。
私に追跡する気配が消えた為不思議に思ったが、ハッとし彼女の元に向かうが気付いた時には既に遅かった。
だが今は下手に動いて自身も捕まれば助ける事が出来なくなる。黙って連れて行かれる名前君を見据え敵の潜伏先を詮索する。
どうかそれまで耐えてくれ。
「くの一、吐け。吐いてくれたら悪い事はしない。」
『いやっ……酷い事、しないで……』
敵の潜伏場に連れて行かれると縄で体を縛られる。
隠し持っていた武器は全て取り上げられてしまい丸腰状態だ。
先程までいた男達は私を縛り上げると一人残していなくなった。残された男は近くに置いてあった手入れの行き届いていない苦無を手に取る。
拷問でも行う気だろう。男がこれから行おうとするやり方は相手を身体精神的に追い詰める事ができ賢い選択だ。
「綺麗な女だな。穢したいぐらいだ。」
そっと頬を撫でる男の手付き。
か弱い娘を演じていたお陰かいきなり殴る、切りかかる様子でもなく私の容姿を頭から足先まで見つめている。甘い男だ。
室内の構造、男の動きからだとこれぐらいなら一人でも脱出できそうだ。玩具扱いされなかっただけましだ。
もし手篭めにされるなら殺してでも此処を脱するがどう動くか思考を巡らせる。
『ひっ……』
男が手にしていた苦無を胸元に当てる。冷たく重い鋭利な鈍器に身構えるが余力がある事を悟られてはいけない。
必死に怯え恐怖をあらわにする。
「俺だって好きでこんな事はしない。」
『い……やっ!』
ビリビリっと苦無で胸元を破られる。破れた胸元から乳房の一部が見え隠れし、肌寒いが男が惚れ惚れとした表情で凝視する。
「この体は男を知っているか?知らないなら俺直々に教えてやろうか。」
胸元に手をかける男。好意など抱いていない男に触られると生理的嫌悪感しか抱かないがまだだ。まだ堪える必要がある。
『分かった…話すわ。』
目を潤ませ伏し目がちな目を男に向けると男の口元が緩んだ。
好機な瞬間だ。
足を振り上げ勢いよく男の首を両脚で挟み、引き寄せる。締め付けの影響で男の怒張した血管が脈打っているが不規則だ。
酷く鼻を突き抜ける程の男の匂いに不快になる。
「ぐっ!」
『喜びなさい。お前が触れたかった体だ。』
「なっ!お前っ!」
挟んでいる男の首に力を込めるとヒュッと呼吸が細くなる。男が武器を取ろうとするがギチギチと更に首を絞めると手が空中を仰ぐ。
油断していた証拠だ。脚で命を弄ばれているとは実に情け無い。動脈を絞めればすぐに気を失わせる事は可能だ。
「ぐっ!……ふぐっ!」
『苦しいだろう?』
多少は痛め付けてやりたいし楽にさせてやるものか。
口元が自然に緩んでしまう。男の苦しんでいる顔がより嗜虐心を沸々と煽られる。
今の顔は他人には見せる事が出来ないくらい残忍な顔だろう。
『武器がないと何も出来ないと思った?』
「ぐぁっ!」
『おあいにく様。』
"武器がなくてもお前なんか殺せる"
耳元で吐息を吐くように囁けば、男の顔が更に青白くなる。
挟んだ脚に力を込め頸動脈を締め上げると、糸が切れた傀儡のように男の手がだらりと落ちる。
男を離すと音を立て崩れ落ちる。男が持っていた苦無を足で手繰り寄せ、縛られていた縄を切り足先で男を蹴りつけると男は気を失っている。
『ふぅ…。』
破れた箇所を固定し締め上げると素肌は隠れる。
殴られたり傷物にされなかったのが救いだった。
小袖の破れだって裁縫すればどうにかなるがこれは。うんぼろぼろだが掃除用の布切れにはなるだろう。
そうだ。こんな事をしている場合ではない。急いで利吉さんと合流しないと。
『命を失わなかっただけでも感謝しろ。』
倒れている男に吐き捨て、小屋を後にする。
「名前君!」
『利吉さん、すみません。敵に捕まりました。』
「なっ!無事なのか!?」
『はい。でも情報は漏らしてないので大丈夫です。』
私の姿を見た瞬間利吉さんが眉を顰め、焦る姿をみて思わず胸を撫で下ろす。だけど利吉さんを巻き添えにせず、尚且つ苦無で切られずに済んで良かった。
「……私が付いていながら申し訳ない。」
『いえ、私が未熟だった故ですので利吉さんに否はありません。』
「だが小袖が……」
『無事逃げれたので良かったです。』
彼女と合流場所で落ち合う事が出来たが彼女に傷はないといえ、あちこち破れ小袖はぼろぼろだった。
「今日はもう終わりだから今すぐ学園に帰るよ。父上と学園長には報告する。」
『えっ!それはやめて下さい!そ、それに依頼主に報告が先では?』
「そんなの明日でもいい。」
ずんずんと足を進める利吉さんの服を掴み必死に止めようとするが中々止まってくれない。
余計な心配をかけさせたくない為こちらも必死になるが止まる事を知らない。
『わ、私としては今日で終わらせたいのですが……』
「君ねぇ………」
『………はい。』
悲しそうな表情で俯いている名前君。酷い目に遭った筈なのに、そんな事は大して思っていない彼女の姿にワザと薄目で見やればようやく納得する。
「………でも無事で良かった。」
『……ご心配をおかけしました。』
「君が無事なら何よりだ。ほら、帰るよ。」
この仕事好きは誰の影響を受けたのやら。母上程ではないが彼女には小言を言いたくなる気持ちを理解した。
実はあの時名前君が監禁されている所を突き止めたが、私が駆け付けた時には男に飛びかかっている姿だった。
思わず駆け寄ろうとすると反射的に足が止まった。
室内を纏っている重苦しく、鉛のような空気にその正体が彼女の出す殺意だと気付いた時には体を動かす事が出来なかった。
息をする事すら慎重になり、鼓動が激しくなった。
気配を悟らせたら私も。
無限に近い闇へ落ちるような恐怖だった。
思わず姿気配を消すと、彼女が機転を利かせその場を後にしてからようやく息をつく事が出来た。
「私もまだまだだな……」
彼女には私自身を凌駕する能力と成長が秘められている。この事実に心が躍るが恐怖を抱いてしまうのも本能なのだろう。
「つくづく恐ろしいものだな。」
私の言葉に彼女が不思議そうに首を傾げ、あどけない年頃の娘に戻った様子に安堵を覚える。
______________________
(利吉さん。あのー…何も買ってもらわなくても…)
(そんな姿で帰ったらびっくりされるだろう、選びなさい)
(縫えばどうにかなるので必要ないですよ)
(父上と学園長に叱られるのと、私に新しい小袖を新調してもらうのどっちがいい?)
(あ、右のが好みです!これがいいです!)
(最初から素直に選びなさい)
「名前君、首尾は?」
『上々です。』
今日はくのたま教室の名前君と共同忍務に取り組んでいる。
今回の忍務内容は、依頼主の敵対する陣地に忍び込み私は薬売りに、名前君は町民に扮し諜報活動を行っている。
名前君が薬を買いに来た町民に成り変わり、互いに得た情報を矢羽根でやり取りを行う。
命のやり取りはないとはいえ敵陣に忍び込んでいる為、盗聴し情報を収集している事がバレてしまったら命はない。
だが生きて情報を持ち帰るというのが忍者の最も重要な役割だ。
実は彼女との忍務は初めてではない。
忍たまの六年生達は六人いるがくのたま六年生の彼女は一人だ。
五年生時等は問題ないかもしれないが最上級生ともなると外部の実習が主となり、ほぼ卒業までは実習漬けとなる。
忍たまは人数が多い為、同室の子やら共同実習は可能だが彼女は一人な為容易く外部での共同実習が出来ない。
その為フリーの忍者である私と時折一緒の忍務を行っている。
「無事に情報は得たようだね。さすがだ。」
『利吉さんに褒められるなんて光栄です。』
妖艶な微笑みを浮かべる彼女。気の所為だろうか。
学園にいる彼女とは違い、忍務となると彼女は水を得た魚のように忍務を忠実にこなし、ころころと表情言動を変える。正に適材適所という所か。
時折本当に年下かと疑う節がある。
彼女と定期的な忍務を行う事になったのは父上と学園長からの提案でもあった。
父上、学園長からのお墨付きの彼女であれば安心はできる。
「じゃあそろそろ撤退だ。」
依頼主が得たかった情報を集める事ができた為薬売り、町民から忍び装束に着替え敵陣を後にする。
『利吉さん……。』
「……あぁ」
町を出て数刻駆けている筈なのに背後から気配がする。
彼女が言わんとしている事が分かる。
つけられている。
敵に気付かれたのか。気配からにして忍びだ。
二人で居ては確実に彼女に危険が迫る。ここは無難に分かれた方が良さそうだ。
「名前君、二手に分かれよう。」
『敵はどうしましょうか?』
「撒く。できるか?」
『分かりました。』
利吉さんとは別の方向に駆け出すと敵が追跡してくる。
懐から手裏剣を取り出し、投げ打つと敵の一人がギャっと声を上げる。この程度なら撒けるか。
四半刻程走り、足を止めず後方を見やるが不穏な空気に気付く。辺りの草葉を馳ける音が消えた。
立ち止まり、辺りを見渡すと完全に気配が消えている。
妙だ。
周辺を警戒し、不気味な暗い森から離れようとすると見計らったように数人の追手の姿が顕になる。
「逃げられんぞ。」
まだここは敵陣の支配領域。地形的に理解していても多勢に無勢。地の利を理解していなかった自身に落ち度がある。
潔く手を挙げ大人しく敵に捕まる。
「名前君……」
名前君が捕まってしまった。
私に追跡する気配が消えた為不思議に思ったが、ハッとし彼女の元に向かうが気付いた時には既に遅かった。
だが今は下手に動いて自身も捕まれば助ける事が出来なくなる。黙って連れて行かれる名前君を見据え敵の潜伏先を詮索する。
どうかそれまで耐えてくれ。
「くの一、吐け。吐いてくれたら悪い事はしない。」
『いやっ……酷い事、しないで……』
敵の潜伏場に連れて行かれると縄で体を縛られる。
隠し持っていた武器は全て取り上げられてしまい丸腰状態だ。
先程までいた男達は私を縛り上げると一人残していなくなった。残された男は近くに置いてあった手入れの行き届いていない苦無を手に取る。
拷問でも行う気だろう。男がこれから行おうとするやり方は相手を身体精神的に追い詰める事ができ賢い選択だ。
「綺麗な女だな。穢したいぐらいだ。」
そっと頬を撫でる男の手付き。
か弱い娘を演じていたお陰かいきなり殴る、切りかかる様子でもなく私の容姿を頭から足先まで見つめている。甘い男だ。
室内の構造、男の動きからだとこれぐらいなら一人でも脱出できそうだ。玩具扱いされなかっただけましだ。
もし手篭めにされるなら殺してでも此処を脱するがどう動くか思考を巡らせる。
『ひっ……』
男が手にしていた苦無を胸元に当てる。冷たく重い鋭利な鈍器に身構えるが余力がある事を悟られてはいけない。
必死に怯え恐怖をあらわにする。
「俺だって好きでこんな事はしない。」
『い……やっ!』
ビリビリっと苦無で胸元を破られる。破れた胸元から乳房の一部が見え隠れし、肌寒いが男が惚れ惚れとした表情で凝視する。
「この体は男を知っているか?知らないなら俺直々に教えてやろうか。」
胸元に手をかける男。好意など抱いていない男に触られると生理的嫌悪感しか抱かないがまだだ。まだ堪える必要がある。
『分かった…話すわ。』
目を潤ませ伏し目がちな目を男に向けると男の口元が緩んだ。
好機な瞬間だ。
足を振り上げ勢いよく男の首を両脚で挟み、引き寄せる。締め付けの影響で男の怒張した血管が脈打っているが不規則だ。
酷く鼻を突き抜ける程の男の匂いに不快になる。
「ぐっ!」
『喜びなさい。お前が触れたかった体だ。』
「なっ!お前っ!」
挟んでいる男の首に力を込めるとヒュッと呼吸が細くなる。男が武器を取ろうとするがギチギチと更に首を絞めると手が空中を仰ぐ。
油断していた証拠だ。脚で命を弄ばれているとは実に情け無い。動脈を絞めればすぐに気を失わせる事は可能だ。
「ぐっ!……ふぐっ!」
『苦しいだろう?』
多少は痛め付けてやりたいし楽にさせてやるものか。
口元が自然に緩んでしまう。男の苦しんでいる顔がより嗜虐心を沸々と煽られる。
今の顔は他人には見せる事が出来ないくらい残忍な顔だろう。
『武器がないと何も出来ないと思った?』
「ぐぁっ!」
『おあいにく様。』
"武器がなくてもお前なんか殺せる"
耳元で吐息を吐くように囁けば、男の顔が更に青白くなる。
挟んだ脚に力を込め頸動脈を締め上げると、糸が切れた傀儡のように男の手がだらりと落ちる。
男を離すと音を立て崩れ落ちる。男が持っていた苦無を足で手繰り寄せ、縛られていた縄を切り足先で男を蹴りつけると男は気を失っている。
『ふぅ…。』
破れた箇所を固定し締め上げると素肌は隠れる。
殴られたり傷物にされなかったのが救いだった。
小袖の破れだって裁縫すればどうにかなるがこれは。うんぼろぼろだが掃除用の布切れにはなるだろう。
そうだ。こんな事をしている場合ではない。急いで利吉さんと合流しないと。
『命を失わなかっただけでも感謝しろ。』
倒れている男に吐き捨て、小屋を後にする。
「名前君!」
『利吉さん、すみません。敵に捕まりました。』
「なっ!無事なのか!?」
『はい。でも情報は漏らしてないので大丈夫です。』
私の姿を見た瞬間利吉さんが眉を顰め、焦る姿をみて思わず胸を撫で下ろす。だけど利吉さんを巻き添えにせず、尚且つ苦無で切られずに済んで良かった。
「……私が付いていながら申し訳ない。」
『いえ、私が未熟だった故ですので利吉さんに否はありません。』
「だが小袖が……」
『無事逃げれたので良かったです。』
彼女と合流場所で落ち合う事が出来たが彼女に傷はないといえ、あちこち破れ小袖はぼろぼろだった。
「今日はもう終わりだから今すぐ学園に帰るよ。父上と学園長には報告する。」
『えっ!それはやめて下さい!そ、それに依頼主に報告が先では?』
「そんなの明日でもいい。」
ずんずんと足を進める利吉さんの服を掴み必死に止めようとするが中々止まってくれない。
余計な心配をかけさせたくない為こちらも必死になるが止まる事を知らない。
『わ、私としては今日で終わらせたいのですが……』
「君ねぇ………」
『………はい。』
悲しそうな表情で俯いている名前君。酷い目に遭った筈なのに、そんな事は大して思っていない彼女の姿にワザと薄目で見やればようやく納得する。
「………でも無事で良かった。」
『……ご心配をおかけしました。』
「君が無事なら何よりだ。ほら、帰るよ。」
この仕事好きは誰の影響を受けたのやら。母上程ではないが彼女には小言を言いたくなる気持ちを理解した。
実はあの時名前君が監禁されている所を突き止めたが、私が駆け付けた時には男に飛びかかっている姿だった。
思わず駆け寄ろうとすると反射的に足が止まった。
室内を纏っている重苦しく、鉛のような空気にその正体が彼女の出す殺意だと気付いた時には体を動かす事が出来なかった。
息をする事すら慎重になり、鼓動が激しくなった。
気配を悟らせたら私も。
無限に近い闇へ落ちるような恐怖だった。
思わず姿気配を消すと、彼女が機転を利かせその場を後にしてからようやく息をつく事が出来た。
「私もまだまだだな……」
彼女には私自身を凌駕する能力と成長が秘められている。この事実に心が躍るが恐怖を抱いてしまうのも本能なのだろう。
「つくづく恐ろしいものだな。」
私の言葉に彼女が不思議そうに首を傾げ、あどけない年頃の娘に戻った様子に安堵を覚える。
______________________
(利吉さん。あのー…何も買ってもらわなくても…)
(そんな姿で帰ったらびっくりされるだろう、選びなさい)
(縫えばどうにかなるので必要ないですよ)
(父上と学園長に叱られるのと、私に新しい小袖を新調してもらうのどっちがいい?)
(あ、右のが好みです!これがいいです!)
(最初から素直に選びなさい)