劇場版ドクタケ忍者隊最強の軍師
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侵入
六年生全員でドクタケ領内に侵入する。
ドクタケ城付近は竹林が生い茂り器用に城を囲んでいる。だが侵入出来ない訳ではない。身を隠すには丁度いい場所だ。竹林で各々準備に取り掛かる。
着ている小袖を裏返し、忍び装束に着替える。
今回は敵対している城の為、苦無ではなく忍刀を使う。
刀を鞘から抜き、竹林に斬りつける。
一太刀した竹は斜めに線を描き、音を立て地面に落ちる。
悪くない。刀身を鞘に納め、伊作達の所に向かう。
「準備出来たか。」
『いつでも行ける。』
口布をあて腰帯に忍刀を差す。
今回は仙蔵が指揮をとる。六年生の中で一番冷静で的確な指示を分配よく出せる彼が適任だ。
「竹林を抜けた先がドクタケ忍者詰所だ。」
「腕がなるぜ。」
「目的は土井先生の安否確認及び救出のみ。無駄に敵に構うな。」
既に仙蔵、長次、小平太、伊作、留三郎が準備を終え佇んでいた。それぞれ武器武具を携帯している。
「待たせた。」
最後に文次郎が合流する。
「行くぞ!」
『えぇ』「あぁ!」
仙蔵の合図に七人で足を進める。
櫛の歯のように生えている竹林に差し込んでいる陽が、枯葉で敷き詰められている地面に雨のように降り注いでいる。だが何処か暗い。背丈を遥かに超える竹林はまさに敵が侵入する事を拒んでいる様だった。
なるべく足音を出さずに駆けるが遠くより近づいてくる気配を察する。
(来る)
警戒が強まる。駆けながら腰に掛けている忍刀の鯉口を切る。
すると目の前に白い忍び装束に包まれ鼻、口元を覆面で垂らした男が現れた。男は近くにいた留三郎に蹴りつける。手で防御をしていたが男の蹴りが留三郎の左顔面に入り込み近くの竹に当たる。
「くっ!」
留三郎の鋭い目付きが男を見据える。男が後ろに飛び交い、私達を見やる。
男の攻撃を機に各々が構え、臨戦態勢をとる。
留三郎に蹴りが入ったが彼は柔ではない。刀の鞘に手をかける。
「闘気を消しきれぬ鼠が七匹…」
男がゆらりと立ち上がる。男の低い威圧的な声が辺りに響き渡る。男を前にすると自身の中で深い淵の面のような冷静さになり、屍の様な冷酷な冴え冴えした眼光を光らせる。無駄な感情は不要。
この男の周りを纏う空気、不気味だ。
自身の忍刀の鍔裏を親指で押し出し刀身を覗かせる。
一瞬の隙が命取りになる。そう思わざるを得ない。
「貴様!何者だ!」
留三郎、小平太、文次郎が前衛に、後衛に仙蔵、長次、伊作、私が位置するがそれでも男は動きを見せない。
文次郎が袋槍で男を指しながら声を上げる。
「曲者が名を問うとは。」
「はっ!その曲者が名乗ると思うなよ!」
「待て!…詰所に土井半助という男がいるな!」
「…………」
「なら倒してから聞くか。」
「お前らは詰所に。」
小平太達が男に向かい引きつける。三人が戦闘を引き受ける隙に詰所へ向かう。
だが男は前衛の三人を飛び交い風を切るように素早く後方を狙う。
「「後ろ!」」
三人の声が聞こえ振り向くと男が目前まで迫っている。
身を守る為咄嗟に忍刀を鞘から抜刀すると、同時に男が刀を振り下ろし忍刀で受け止める。
キィインッ!!!
『ぐっ!』
自身と男の刀身が交わる。
この威力、片手にも関わらず身体全体に重力がのしかかり足が地面にめり込む。だが耐え切れる。
雑渡さん程ではない。あの人の力が上回る。
(鍛えてもらってて良かった)
男の攻撃を防いでいると横から仙蔵と長次、伊作が加勢する。男は私に蹴りを入れ視線を三人に向ける。
だが此方もやられる訳にはいかない。蹴りを受け止めた刀身で払い退ける。
崩れた体勢を整えると視界の端から黒色の鋭利なものが飛んでくる。棒手裏剣だ。
攻撃をする三人を物ともせず、高く聳え立つ竹林を駆け巡り棒手裏剣を放ってきたのだ。
「くっ!」
「っ!」
仙蔵、長次の二人の身体に突き刺さる棒手裏剣は彼らの忍び装束を赤く染める。此方に向かってくる棒手裏剣を刀で薙ぎ払っていると眼前には留三郎が鉄双節棍で男の刀身を頭上で受け止め、文次郎が男に袋槍を突き刺そうとしている。
だが男は文次郎を難なく避け、文次郎の首元に手刀を放つ。倒れた文次郎の先には先端が尖っている竹が文次郎の横腹を掠る。
刀身を受け止めた鉄双節棍が留三郎の額に当たったのだろう。額から血が流れる。
(留三郎)
彼の血が自身を沸き立たせる。急くな。
脚に力を込め飛躍し忍刀を構え駆ける。男が此方に気づき雷鳴の様に駆けてくる。
放たれた棒手裏剣は地面に突き刺さっている。敵の手裏剣、刀には毒が塗られている可能性もある。
掠り刺さっても即死、容易に攻撃を受ける訳にはいかない。
側の竹林を足場にし飛び交うと伊作が男に投石する。だが男は書物で投石を弾く。弾かれた石は竹林に当たり飛び交い、他の三人も石を投げるが同様に飛び交い伊作の顔面にめり込んでいく。ここでも伊作の不運が発動し仙蔵が投石を制止する。
この男、流れを読んでいる。只のドクタケ忍者ではない。その時長次の縄鏢が横を通り過ぎた。放たれた縄鏢は男の手にある書物に絡まり一時的に男の動きを止める。
男が書物から手を離す。男が書物の背後から飛び交い、死角に入る。長次に向けて刀を振り上げ狙っている。
この好機、無駄に出来ない。
長次に向かう男に全速力で駆け刀で斬りかかる。それでも男が反応し刀で防がれ鎬を削る。
間近で男を目にするが奴は終始虚無であり、人を殺す事に何も躊躇いがない表情をしている。
だが顔付きに違和感を覚える。
何だこの違和感は。
自身の後ろから留三郎、小平太が駆け寄り攻撃する。
男が二人の攻撃を交わすと文次郎と共に男に追撃する。
刀を振り此方に注意を向けさせ視界から姿を消すと背後から文次郎の袋槍の穂が男の覆面を掠め取り、顔が顕になる。
男が思わず距離を取る。だがその覆面の下の男の顔に全員が驚愕する。
「『土井先生!』」
男が顔を手で覆おうとするが視線を此方に向ける。
その顔は見慣れた筈の土井先生そのものだ。
だが開かれた目はすぐ細目になり鋭い目付きに戻る。
「………土井先生?」
「あ、あんたの事だよ!忍術学園、一年は組教科担当担任土井半助先生!あんたの事だよ!」
自身の口布を取り外し、もう一度みる。
皆、男の正体が探していた土井先生だと分かると安堵している。だが様子が可笑しい。
「貴様ら…忍者学園の手のものか……」
「………先生?何言ってんです?」
「…………ならば…………我らの敵だ!」
土井先生の纏う空気が変わり私達に向けて刀を構える。
鮮明に見える。土井先生が構える刀身が切先まで白い光を放つのを。
先程より冷徹な殺気が吹き荒ぶ異様な空間に染まった瞬間だった。
耐え難い突き刺さるような殺気に額に冷や汗が伝う。
「先生…?」
「きり丸やは組の皆んなが、待って…ますよ……」
身体から警告音が聞こえる。これは手に負えない。
このまま戦えば確実に此方側に死傷者が出る。
そう思わざるを得ない状況だ。ジリっと後退りする私を伊作が不思議そうに見る。
『皆、構えた方がいい。』
「何を言うの… 名前……」
『………あの男は私達が知る土井先生じゃない。』
口布を再び当てがい、刀を抜刀する。
同じ様に仙蔵が何かを感じとり目を細め土井先生に問い掛ける。
「何が……あったんです」
次の瞬間、男が獲物を追うようにまっしぐらに此方に向かってくる。
今までの中で最速の速さだ。
『逃げろ!』
声を出すと此方に斬りかかる天鬼。その狙い先は私だ。
「名前!」
『っ!』
刀身で受け止め刀が交わる。先程より重みが増している。確実に息の根を止める気だ。
留三郎が思わず声を上げる。だが今は留三郎に反応してる場合じゃない。
「チッ!受け止めるか!」
土井先生らしき男が苦虫を潰したような顔をする。
『殺られる訳にはいかないんでね。』
生じる刀身の押し合いに言葉を交わす。だが余裕を見せるが実際はそんなの無い。
この男、確実に首を狙いに来た。反応がもう少し遅かったらこの胴体と離れていただろう。
男は通じないと分かると隣りにいた伊作、長次に斬りかかる。伊作がしゃがむようにしてなんとかかわすが髷を切られた。
「ぐわっ!!!」
長次を庇った小平太の右肩から赤い鮮血が舞い上がる。
思わず目を最大まで見開き、血潮が逆流する様な思いが沸騰する。
仲間の血飛沫に脳裏に昔の光景が歪な記憶として蘇る。
血飛沫が舞うと小平太が倒れかかる。その様子に留三郎と文次郎も攻撃する。
自身の心に鬼が現れる。五臓六腑が煮え食らう程の凄まじい感情が駆け巡り、忍刀の鍔が赤く滲む程握り締める。
攻撃の瞬間、宙を舞う。足場にした竹がバキッと音を立て割れるが次の足を竹に進める。
天鬼に斬りかかると次は天鬼が顔を歪める番だった。
「くっ!どこから!」
『貴様…』
静かな怒りが全身を駆け巡る。だがどこからか冷静に自身の行動を見据えている。
勢いを殺さず刀を上から斬り下げ、振り上げ、横に払い突きを繰り返し確実に天鬼を追い詰めていく。先程の行動とは違い、防御に回る天鬼が中々始末出来ない苛立たしさを露わにしている。
「おのれっ!」
天鬼が刀を振るう。天鬼の一太刀が脇腹を掠めるが装束に一筋の刃筋が入るのみで身まで到達していない。
得体の知れない遣い手と対峙しているにも関わらず考える余裕があった。
日々鍛錬の継続がいかに大事であるか改めて知った。
己に課した厳しい鍛錬が無駄にならなかった事が何より自身を冷静にしていく。
だがどうすればこの男を退けられるか。このままにしとくと執念深く追跡され全滅だ。
正直な所、男の腕が上である。殺られるのは自身かもしれない。それでも傷ついた仲間をこのままに出来ない。
行くしかない。柄を持つ手に汗を握る。覚悟を決め眼前の天鬼に向けて突っ込む。
だが背後からトサっと何かが転げ落ちる音が聞こえる。音は何個も聞こえ、足にあたる。
そこには見慣れた宝禄火矢が転がっていた。
「皆逃げろ!」
宝禄火矢に気付いた天鬼から顔を逸らさず皆が退避した所を見計らいすぐさま疾走退避し、頭を伏せる。
その瞬間顔を上げる事が出来ない程の目が眩むような光線と爆風が激しく吹き荒ぶ。
「謀ったか!」
天鬼の声が聞こえるが仙蔵が宝禄火矢を追加で投げる。導火線は短くすぐ起爆するようになっていた。
辺りの竹林が爆破で吹き飛び、鼓膜をつんざくような激しい爆発音が起こったが退けるには充分な時間だった。
ある程度離れた茂みに隠れ気配を消す。重症である小平太の右肩に伊作が止血を行う。
その間、天鬼の強襲を警戒し身を固め息を潜める。
留三郎に文次郎、長次、仙蔵も傷を負い血を流している。いつ天鬼が血を嗅ぎつけ襲ってくるか分からない。
いつでも対抗できるよう忍刀を握る力を緩めない。
竹林の向こうからきり丸が見え、視線の先には天鬼がいた。
下級生に見られてしまった。だがきり丸が天鬼に気づかれると守れるか分からない。茂みから姿を現そうとすると長次が素早くきり丸に掴み掛かり、茂みに隠す。
天鬼はそのままドクタケ城内に戻っていく。その姿にようやく警戒を解き全身の力を抜く。
「先輩方……」
流血し忍び装束の所々が血に染まっている姿を見て驚くきり丸。
留三郎が声を出さぬよう指を口元に当てた事できり丸が状況を理解した。
「土井先生、生きてた……」
土井先生が生きていた事にきり丸が安堵の表情を浮かべる。だが私達の心は晴れない。
ドクタケに土井先生がついた。
これは受け入れ難い最悪の出来事だからだ。
六年生全員でドクタケ領内に侵入する。
ドクタケ城付近は竹林が生い茂り器用に城を囲んでいる。だが侵入出来ない訳ではない。身を隠すには丁度いい場所だ。竹林で各々準備に取り掛かる。
着ている小袖を裏返し、忍び装束に着替える。
今回は敵対している城の為、苦無ではなく忍刀を使う。
刀を鞘から抜き、竹林に斬りつける。
一太刀した竹は斜めに線を描き、音を立て地面に落ちる。
悪くない。刀身を鞘に納め、伊作達の所に向かう。
「準備出来たか。」
『いつでも行ける。』
口布をあて腰帯に忍刀を差す。
今回は仙蔵が指揮をとる。六年生の中で一番冷静で的確な指示を分配よく出せる彼が適任だ。
「竹林を抜けた先がドクタケ忍者詰所だ。」
「腕がなるぜ。」
「目的は土井先生の安否確認及び救出のみ。無駄に敵に構うな。」
既に仙蔵、長次、小平太、伊作、留三郎が準備を終え佇んでいた。それぞれ武器武具を携帯している。
「待たせた。」
最後に文次郎が合流する。
「行くぞ!」
『えぇ』「あぁ!」
仙蔵の合図に七人で足を進める。
櫛の歯のように生えている竹林に差し込んでいる陽が、枯葉で敷き詰められている地面に雨のように降り注いでいる。だが何処か暗い。背丈を遥かに超える竹林はまさに敵が侵入する事を拒んでいる様だった。
なるべく足音を出さずに駆けるが遠くより近づいてくる気配を察する。
(来る)
警戒が強まる。駆けながら腰に掛けている忍刀の鯉口を切る。
すると目の前に白い忍び装束に包まれ鼻、口元を覆面で垂らした男が現れた。男は近くにいた留三郎に蹴りつける。手で防御をしていたが男の蹴りが留三郎の左顔面に入り込み近くの竹に当たる。
「くっ!」
留三郎の鋭い目付きが男を見据える。男が後ろに飛び交い、私達を見やる。
男の攻撃を機に各々が構え、臨戦態勢をとる。
留三郎に蹴りが入ったが彼は柔ではない。刀の鞘に手をかける。
「闘気を消しきれぬ鼠が七匹…」
男がゆらりと立ち上がる。男の低い威圧的な声が辺りに響き渡る。男を前にすると自身の中で深い淵の面のような冷静さになり、屍の様な冷酷な冴え冴えした眼光を光らせる。無駄な感情は不要。
この男の周りを纏う空気、不気味だ。
自身の忍刀の鍔裏を親指で押し出し刀身を覗かせる。
一瞬の隙が命取りになる。そう思わざるを得ない。
「貴様!何者だ!」
留三郎、小平太、文次郎が前衛に、後衛に仙蔵、長次、伊作、私が位置するがそれでも男は動きを見せない。
文次郎が袋槍で男を指しながら声を上げる。
「曲者が名を問うとは。」
「はっ!その曲者が名乗ると思うなよ!」
「待て!…詰所に土井半助という男がいるな!」
「…………」
「なら倒してから聞くか。」
「お前らは詰所に。」
小平太達が男に向かい引きつける。三人が戦闘を引き受ける隙に詰所へ向かう。
だが男は前衛の三人を飛び交い風を切るように素早く後方を狙う。
「「後ろ!」」
三人の声が聞こえ振り向くと男が目前まで迫っている。
身を守る為咄嗟に忍刀を鞘から抜刀すると、同時に男が刀を振り下ろし忍刀で受け止める。
キィインッ!!!
『ぐっ!』
自身と男の刀身が交わる。
この威力、片手にも関わらず身体全体に重力がのしかかり足が地面にめり込む。だが耐え切れる。
雑渡さん程ではない。あの人の力が上回る。
(鍛えてもらってて良かった)
男の攻撃を防いでいると横から仙蔵と長次、伊作が加勢する。男は私に蹴りを入れ視線を三人に向ける。
だが此方もやられる訳にはいかない。蹴りを受け止めた刀身で払い退ける。
崩れた体勢を整えると視界の端から黒色の鋭利なものが飛んでくる。棒手裏剣だ。
攻撃をする三人を物ともせず、高く聳え立つ竹林を駆け巡り棒手裏剣を放ってきたのだ。
「くっ!」
「っ!」
仙蔵、長次の二人の身体に突き刺さる棒手裏剣は彼らの忍び装束を赤く染める。此方に向かってくる棒手裏剣を刀で薙ぎ払っていると眼前には留三郎が鉄双節棍で男の刀身を頭上で受け止め、文次郎が男に袋槍を突き刺そうとしている。
だが男は文次郎を難なく避け、文次郎の首元に手刀を放つ。倒れた文次郎の先には先端が尖っている竹が文次郎の横腹を掠る。
刀身を受け止めた鉄双節棍が留三郎の額に当たったのだろう。額から血が流れる。
(留三郎)
彼の血が自身を沸き立たせる。急くな。
脚に力を込め飛躍し忍刀を構え駆ける。男が此方に気づき雷鳴の様に駆けてくる。
放たれた棒手裏剣は地面に突き刺さっている。敵の手裏剣、刀には毒が塗られている可能性もある。
掠り刺さっても即死、容易に攻撃を受ける訳にはいかない。
側の竹林を足場にし飛び交うと伊作が男に投石する。だが男は書物で投石を弾く。弾かれた石は竹林に当たり飛び交い、他の三人も石を投げるが同様に飛び交い伊作の顔面にめり込んでいく。ここでも伊作の不運が発動し仙蔵が投石を制止する。
この男、流れを読んでいる。只のドクタケ忍者ではない。その時長次の縄鏢が横を通り過ぎた。放たれた縄鏢は男の手にある書物に絡まり一時的に男の動きを止める。
男が書物から手を離す。男が書物の背後から飛び交い、死角に入る。長次に向けて刀を振り上げ狙っている。
この好機、無駄に出来ない。
長次に向かう男に全速力で駆け刀で斬りかかる。それでも男が反応し刀で防がれ鎬を削る。
間近で男を目にするが奴は終始虚無であり、人を殺す事に何も躊躇いがない表情をしている。
だが顔付きに違和感を覚える。
何だこの違和感は。
自身の後ろから留三郎、小平太が駆け寄り攻撃する。
男が二人の攻撃を交わすと文次郎と共に男に追撃する。
刀を振り此方に注意を向けさせ視界から姿を消すと背後から文次郎の袋槍の穂が男の覆面を掠め取り、顔が顕になる。
男が思わず距離を取る。だがその覆面の下の男の顔に全員が驚愕する。
「『土井先生!』」
男が顔を手で覆おうとするが視線を此方に向ける。
その顔は見慣れた筈の土井先生そのものだ。
だが開かれた目はすぐ細目になり鋭い目付きに戻る。
「………土井先生?」
「あ、あんたの事だよ!忍術学園、一年は組教科担当担任土井半助先生!あんたの事だよ!」
自身の口布を取り外し、もう一度みる。
皆、男の正体が探していた土井先生だと分かると安堵している。だが様子が可笑しい。
「貴様ら…忍者学園の手のものか……」
「………先生?何言ってんです?」
「…………ならば…………我らの敵だ!」
土井先生の纏う空気が変わり私達に向けて刀を構える。
鮮明に見える。土井先生が構える刀身が切先まで白い光を放つのを。
先程より冷徹な殺気が吹き荒ぶ異様な空間に染まった瞬間だった。
耐え難い突き刺さるような殺気に額に冷や汗が伝う。
「先生…?」
「きり丸やは組の皆んなが、待って…ますよ……」
身体から警告音が聞こえる。これは手に負えない。
このまま戦えば確実に此方側に死傷者が出る。
そう思わざるを得ない状況だ。ジリっと後退りする私を伊作が不思議そうに見る。
『皆、構えた方がいい。』
「何を言うの… 名前……」
『………あの男は私達が知る土井先生じゃない。』
口布を再び当てがい、刀を抜刀する。
同じ様に仙蔵が何かを感じとり目を細め土井先生に問い掛ける。
「何が……あったんです」
次の瞬間、男が獲物を追うようにまっしぐらに此方に向かってくる。
今までの中で最速の速さだ。
『逃げろ!』
声を出すと此方に斬りかかる天鬼。その狙い先は私だ。
「名前!」
『っ!』
刀身で受け止め刀が交わる。先程より重みが増している。確実に息の根を止める気だ。
留三郎が思わず声を上げる。だが今は留三郎に反応してる場合じゃない。
「チッ!受け止めるか!」
土井先生らしき男が苦虫を潰したような顔をする。
『殺られる訳にはいかないんでね。』
生じる刀身の押し合いに言葉を交わす。だが余裕を見せるが実際はそんなの無い。
この男、確実に首を狙いに来た。反応がもう少し遅かったらこの胴体と離れていただろう。
男は通じないと分かると隣りにいた伊作、長次に斬りかかる。伊作がしゃがむようにしてなんとかかわすが髷を切られた。
「ぐわっ!!!」
長次を庇った小平太の右肩から赤い鮮血が舞い上がる。
思わず目を最大まで見開き、血潮が逆流する様な思いが沸騰する。
仲間の血飛沫に脳裏に昔の光景が歪な記憶として蘇る。
血飛沫が舞うと小平太が倒れかかる。その様子に留三郎と文次郎も攻撃する。
自身の心に鬼が現れる。五臓六腑が煮え食らう程の凄まじい感情が駆け巡り、忍刀の鍔が赤く滲む程握り締める。
攻撃の瞬間、宙を舞う。足場にした竹がバキッと音を立て割れるが次の足を竹に進める。
天鬼に斬りかかると次は天鬼が顔を歪める番だった。
「くっ!どこから!」
『貴様…』
静かな怒りが全身を駆け巡る。だがどこからか冷静に自身の行動を見据えている。
勢いを殺さず刀を上から斬り下げ、振り上げ、横に払い突きを繰り返し確実に天鬼を追い詰めていく。先程の行動とは違い、防御に回る天鬼が中々始末出来ない苛立たしさを露わにしている。
「おのれっ!」
天鬼が刀を振るう。天鬼の一太刀が脇腹を掠めるが装束に一筋の刃筋が入るのみで身まで到達していない。
得体の知れない遣い手と対峙しているにも関わらず考える余裕があった。
日々鍛錬の継続がいかに大事であるか改めて知った。
己に課した厳しい鍛錬が無駄にならなかった事が何より自身を冷静にしていく。
だがどうすればこの男を退けられるか。このままにしとくと執念深く追跡され全滅だ。
正直な所、男の腕が上である。殺られるのは自身かもしれない。それでも傷ついた仲間をこのままに出来ない。
行くしかない。柄を持つ手に汗を握る。覚悟を決め眼前の天鬼に向けて突っ込む。
だが背後からトサっと何かが転げ落ちる音が聞こえる。音は何個も聞こえ、足にあたる。
そこには見慣れた宝禄火矢が転がっていた。
「皆逃げろ!」
宝禄火矢に気付いた天鬼から顔を逸らさず皆が退避した所を見計らいすぐさま疾走退避し、頭を伏せる。
その瞬間顔を上げる事が出来ない程の目が眩むような光線と爆風が激しく吹き荒ぶ。
「謀ったか!」
天鬼の声が聞こえるが仙蔵が宝禄火矢を追加で投げる。導火線は短くすぐ起爆するようになっていた。
辺りの竹林が爆破で吹き飛び、鼓膜をつんざくような激しい爆発音が起こったが退けるには充分な時間だった。
ある程度離れた茂みに隠れ気配を消す。重症である小平太の右肩に伊作が止血を行う。
その間、天鬼の強襲を警戒し身を固め息を潜める。
留三郎に文次郎、長次、仙蔵も傷を負い血を流している。いつ天鬼が血を嗅ぎつけ襲ってくるか分からない。
いつでも対抗できるよう忍刀を握る力を緩めない。
竹林の向こうからきり丸が見え、視線の先には天鬼がいた。
下級生に見られてしまった。だがきり丸が天鬼に気づかれると守れるか分からない。茂みから姿を現そうとすると長次が素早くきり丸に掴み掛かり、茂みに隠す。
天鬼はそのままドクタケ城内に戻っていく。その姿にようやく警戒を解き全身の力を抜く。
「先輩方……」
流血し忍び装束の所々が血に染まっている姿を見て驚くきり丸。
留三郎が声を出さぬよう指を口元に当てた事できり丸が状況を理解した。
「土井先生、生きてた……」
土井先生が生きていた事にきり丸が安堵の表情を浮かべる。だが私達の心は晴れない。
ドクタケに土井先生がついた。
これは受け入れ難い最悪の出来事だからだ。