長編関連(短編・番外編)
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忘却
ある日の昼下がり級友からとんでもない報告を受けた。留三郎が実習中に意識を失い、目を覚まさないとの事だ。
『留三郎………』
自室を飛び出て、急ぎ足で医務室に向かう。
『伊作!留三郎は!』
医務室に到着し襖を開けるとそこには意識を失って布団に横たわっている留三郎が居た。側には伊作が看病をしている。
「名前、留三郎は無事だよ。」
『はぁ……なら、良かった。』
留三郎は寝息を立てて目を伏せている。負傷した上半身に包帯が巻かれておりその姿は痛々しい。取り敢えず命があって良かった。その様子に安堵する。
「致命傷は避けてるし、傷も見た目より大した事ないよ。目が覚めるのも早いと思う。」
『そう……』
伊作の返答にひとまず安心する。
スヤスヤと眠る留三郎の側に寄り、頬に手を添える。小さな傷が至る所にある。浅い傷だが痛かっただろう。包帯の上からなぞるように触れる。
留三郎の知らせを受けて私がこんなに焦った事なんか知らないでしょうね。
『留三郎………早く起きて。』
この時、これから大変な事態になるとは思って居なかった。
あれから留三郎が目を開けない日が数日続いている。
校医の新野先生も深刻な事態に留三郎の看病にあたっている。それでも学園の日常は過ぎていく。留三郎が居ない用具委員会の活動は吉野先生が代理で委員会の子達に指導し活動は出来ているようだ。
授業を終え、一日の最後に医務室に留三郎の様子を見にいく。伊作と新野先生が交互に看病している中、時が一刻一刻と過ぎていき、もどかしい。
『伊作、変わるわ。』
「えっ、でも……」
『駄目、疲れてるでしょ。休んで。』
「名前…」
そんな伊作と強引に代わる。伊作の目の下の隈が疲れを物語っている。
伊作も自身の授業や実習が終わった上に看病を続けていた。
『分からない事があったら声掛けるわ。』
「分かった。なら少し休ませてもらうね。」
伊作が微笑しながら医務室の端に身体を寄せ休める。
医務室を照らしている蝋燭の灯がゆらゆらと動いている。灯の陰が留三郎の顔にうつる。
伊作と交代してから一刻が経った。夜の虫の音も落ち着きそろそろ丑の刻だ。
「うっ……」
声がした方を振り向くと留三郎が眉を潜めている。ゆっくり瞼が上がると、辺りを見回し身体を起こす。
『留三郎、良かった。やっと起きた……』
留三郎が覚醒しきれていない様子で私を見る。
だが見る目が違う。何か知らない物を見るような目だ。その様子に違和感を覚える。
「貴方は………誰だ……」
ある日の昼下がり級友からとんでもない報告を受けた。留三郎が実習中に意識を失い、目を覚まさないとの事だ。
『留三郎………』
自室を飛び出て、急ぎ足で医務室に向かう。
『伊作!留三郎は!』
医務室に到着し襖を開けるとそこには意識を失って布団に横たわっている留三郎が居た。側には伊作が看病をしている。
「名前、留三郎は無事だよ。」
『はぁ……なら、良かった。』
留三郎は寝息を立てて目を伏せている。負傷した上半身に包帯が巻かれておりその姿は痛々しい。取り敢えず命があって良かった。その様子に安堵する。
「致命傷は避けてるし、傷も見た目より大した事ないよ。目が覚めるのも早いと思う。」
『そう……』
伊作の返答にひとまず安心する。
スヤスヤと眠る留三郎の側に寄り、頬に手を添える。小さな傷が至る所にある。浅い傷だが痛かっただろう。包帯の上からなぞるように触れる。
留三郎の知らせを受けて私がこんなに焦った事なんか知らないでしょうね。
『留三郎………早く起きて。』
この時、これから大変な事態になるとは思って居なかった。
あれから留三郎が目を開けない日が数日続いている。
校医の新野先生も深刻な事態に留三郎の看病にあたっている。それでも学園の日常は過ぎていく。留三郎が居ない用具委員会の活動は吉野先生が代理で委員会の子達に指導し活動は出来ているようだ。
授業を終え、一日の最後に医務室に留三郎の様子を見にいく。伊作と新野先生が交互に看病している中、時が一刻一刻と過ぎていき、もどかしい。
『伊作、変わるわ。』
「えっ、でも……」
『駄目、疲れてるでしょ。休んで。』
「名前…」
そんな伊作と強引に代わる。伊作の目の下の隈が疲れを物語っている。
伊作も自身の授業や実習が終わった上に看病を続けていた。
『分からない事があったら声掛けるわ。』
「分かった。なら少し休ませてもらうね。」
伊作が微笑しながら医務室の端に身体を寄せ休める。
医務室を照らしている蝋燭の灯がゆらゆらと動いている。灯の陰が留三郎の顔にうつる。
伊作と交代してから一刻が経った。夜の虫の音も落ち着きそろそろ丑の刻だ。
「うっ……」
声がした方を振り向くと留三郎が眉を潜めている。ゆっくり瞼が上がると、辺りを見回し身体を起こす。
『留三郎、良かった。やっと起きた……』
留三郎が覚醒しきれていない様子で私を見る。
だが見る目が違う。何か知らない物を見るような目だ。その様子に違和感を覚える。
「貴方は………誰だ……」
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