煩雑












「なんであいつらが恋仲になった？」

「俺に聞くな。」

「お前はそのワケを知らんのか？」

「知る訳ないだろう。」

「………お前に聞いた私が馬鹿だった。」




私と文次郎の部屋でのやり取りでは、先日から留三郎と名前が恋仲になったと噂が回っている。

最初は根も葉もない只の噂だと思っていたが先日二人を見かけた雰囲気で噂が事実なのだと気付かされた。
しかし何故あの血気盛んな留三郎が相手なのだ。そこだけが理解しきれん。



「面白くないな……」


素直に喜べない私が居る。




















『あら、仙蔵。』

「名前。」

『今から委員会？』

「あぁ、そうだ。」

『頑張ってね。』


廊下で名前とすれ違うと、こちらに手の平を振り側を通り抜けようとする。


「待て、名前。」

『んっ？どうしたの？』

「少し委員会に付き合ってくれないか？」

「他の子達は？」

「今日は私だけの作業のつもりだが、やはり人手が一人は欲しいのだ。」

『うーん、……いいわよ。それなら手伝うわ。』

「助かる。」


名前と一緒に生首フィギュアが置かれている部屋に向かう。







『仙蔵、私は何を手伝えば「留三郎と恋仲だと言うのは本当か？」



部屋に着くなり我慢ができず、聞いてしまった。私の発言に名前の表情が考え込む。




「噂になっているぞ。お前達の事。」

『噂は回るものね。』

「なら本当なのか。」

『てっきり留三郎から聞いてるかと思ったわ。』

「最近まで何もなかったではないか。」

『そうね……最近まではね……』



名前はそれ以上の事を話そうとしない。
何故だ。何故留三郎を選んだのだ。自身の感情を名前に悟られないようにせねば。自身の隠れていた感情に驚きを隠せないが、その相手が私だったらと後悔の念が押し寄せる。



「ほぉ、では留三郎とはどこまで済ませた？」

『何を聞いているの？そんなの話せる訳ないじゃない。』


私の質問に名前がクスクスと笑いながら答える。


「私は真剣だが……」

『ふふっ、ご想像にお任せします。』


生首フィギュアの在庫と帳簿を照らし合わせながら作業を進めている名前と私。
隣の名前の頬は若干赤くなっている。
この秘密主義が。
留三郎との関係はお前をこんな風にさせる程なのか。



「留三郎が羨ましいものだな。」

『そうかしら。』

「お前は自分の存在をよく理解しろ。」

『はぁ……』



私の言葉に名前が首を傾げる。
こいつは自分が周りからどう見られているかなど分かっていない様子に鼻で笑う。ましてや一緒に作業をしている男から好意を抱かれているなど思ってもいないだろう。好意を抱いていなければこの部屋に関係ない女など招きもしない事など。
留三郎、名前を我が物にするのは骨が折れそうだ。



留三郎と名前が上手くいかなかったら私は慰めに徹しよう。その時は自身の持つ全てを使ってでも名前を口説き落とし名前を私の物にしてやる。



「ふっ、留三郎に冷めたら私に来い。」

『そんな事したら他の娘から刺されそうだわ。』

「そんなつまらない事はさせん。」

『はいはい、作業進めるわよ。』