長編関連(短編・番外編)
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「救護班!」
木下先生の計らいで担架を抱えた伊作達保健委員
が迎えにくる。
「名前、こっちに乗れる?」
『伊作、私はいいから留三郎の方に行ってやって。』
「留三郎は大丈夫。乱太郎達に任せた。」
さすが同室。留三郎の普段の怪我などをよくみているからかすぐ状態が分かるのだろう。
「立てるかい?」
『歩けるわ。大丈夫。』
伊作に制止をかける。だが一人ではふらつく為、結局伊作の肩を借りる事になった。
『そう言えば留三郎は?』
「君が振り払った時、鉄双節棍と一緒に弾かれて打撃と共に顎に直撃さ。」
聞いて想像するだけで背筋が震える。留三郎ごめんなさい。絶対痛かったでしょうに。後で目を覚ましたら謝りにいかないと。
そのまま二人一緒に医務室に連れて行かれる。その前に木下先生に伝えないと。
「名前の肩はこれで良し!後は留三郎だね!」
『留三郎……。』
僕の後ろでは名前が心配そうに留三郎の顔を覗きこんでいる。
あれほど鬼気迫る殺気を張り巡らして戦っていたのに今ではそんな面影が一切ない。
あの光景をみて特に一年生は終始怯えているし、ニ、三年生は目が点になって、四年生以上は手に汗握りながら夢中に観戦していたしある意味実戦に近い見学にはなったかな。くのたまは目を輝かせてばかりだったけど。
「うっ……」
『留三郎!』
「名前、……ここは医務室か…」
『そうよ。』
「そうか、って事は俺負けたのか。」
『あっ…』
その瞬間、留三郎の言葉に名前が固まる。その顔には冷や汗がダラダラと流れている。本人も想像していなかった勝敗だったんだろうな。
「目が覚めたかい?留三郎。」
「おう。伊作。」
目が泳いでいる名前の横に座り留三郎の傷を確認する。
「留三郎、顎は大丈夫かい?」
「顎?……あ」
「君は頑丈だね。数日したら痛みは引くから心配ないよ。」
「そうか、痛て!」
留三郎が痛がると名前が慌て出す。
『伊作、手拭い濡らしてくるわ!』
桶にかけていた布を持ち去り井戸に向かって行った。
慌てる名前の姿に思わず留三郎も僕もクスッと笑みがこ溢れる。
名前が去ったのを確認し、留三郎の隣に座り込む。
「惜しかったね。」
『ああ。……でも名前は強い。今日改めて実感できた。』
留三郎が自身の手を見つめる。
あの樫棒を薙ぎ払った時の表情、あれは完全に俺を仕留める表情だった。鋭い眼光に予測出来なかった力。
俺の想像を遥かに超える攻撃で防御を貫通してきた。
折れてはいない。けど防御してても貫いてくる威力。
あいつを打ち負かすには骨が折れそうだ。
「伊作、俺は決めた。」
「何がだい?」
「俺はもっと強くなる。そしてまた名前に挑む!」
『あー… 名前はそんなつもりじゃ無いみたいだけど。』
伊作の視線が襖付近に向くと名前が物凄い勢いで襖を開ける。
「留三郎!ごめんなさい!大丈夫だった?」
すると俺の前まで急いでやって来た。
名前が濡らした手拭いで顔を拭いてくる。あの名前が慌てている姿がおもしろおかしく笑ってしまう。
「痛かったぞ。」
『ごめんなさい。』
「嘘だ嘘!気にするな!でもまた勝負しろよ!」
『あ、それはパスで。』
「なっ!お前勝ち逃げはずるいぞ!」
「名前!お前どういう事だ!」
『げっ……』
「えっ、文次郎どうしたの?」
「こいつ棄権しやがった!」
「えっ!なんで!」
名前の次に文次郎が強烈な勢いで襖を開けてきた。
名前が決勝を棄権。今回の武道大会の結果、文次郎の不戦勝で幕は閉じたらしい。だがその結果に文次郎が認める筈がない。
怒り狂う文次郎から逃げてきたのだろう。名前は無表情で相変わらず冷や汗を垂らし、視線をやると苦笑いをしている。
『いや、疲れちゃって。もう今日は無理。』
潔いのか自身の力量を分かっているのか。だが今はその判断が文次郎の怒りを膨れさせている。
「俺と戦え!」
『無理無理。私も怪我したの。』
「そんなの怪我じゃねぇ!俺と勝負しろ!」
「うわぁ。それ留三郎の台詞だ。」
「おっ!お前達揃っていたのか!名前、私ともまた戦ってくれ!」
校庭にいた筈の小平太もやって来た。
すると名前の表情が更に曇り、激しく首を横に振る。
『嫌。本当に嫌。』
「そんな事言うな!すごく楽しかったぞ!」
『伊作。保護者呼んで。』
「あいにく僕は此処から動けないよ。」
その様子に名前が黙って立ち上がる。その光景を皆んなが見守る中、名前の手が僕の肩に置かれる。
待って。何その表情。目が据わっているけど。
『伊作、後は宜しくね。』
「はぁっ!?えっ、ちょ!名前!」
煙を撒くように急いで医務室を走り去る。
「おい!待て名前!話はまだ終わってねぇぞ!」
「私もー!」
『もう嫌なのよ!勘弁して!』
「「待てこらー!」」
上級生による武道大会は余りの迫力に、後にも先にも今回で最初で最後となった。
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(ギンギンに俺と戦えー!)
(袋槍を投げないで!しつこい男は嫌いよ!)
(なははっ!鬼なら任せろ!)
(内容の主旨が変わってるわ!)
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