太船湖その②
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心に風が吹いた時の対処法の為に、
少年は働くことを選択肢に入れていた。
鳶職、ドライバー、コラム書き、中国語教師。
内容的に、哲学や心理学について講釈を垂れなければならない時もしばしばあったが、
それ専門のことをすれば良いだけで、別段苦にならなかった。
そういう仕事の色々は、
持ち前の頭と要領の良さで、
難なくこなす事が出来た。
そこにいる人間達の“目”だけが時たま閉口するが、
それでも、自分の穴に吹く風に比べれば、何億倍もマシだった。
そんな風に毎日を送っていたある日、
何となく自分の身体に違和感を覚えた。
その時少年が一番に思ったことは
「ガタがきたな。」
という事だった。
今まで自分に“折り合い”をつけてきたガタが、
人の目を拒みながら、上手く付き合おうと無理をしたガタが、
そして、寂しさを押し殺してきたガタが、
今、まさに来ているのだと。
女と遊び、仕事にふけってだましだまし逸らしてきた色々がやって来たのだと。
少年は、日本に来てからずっと住んでいた古ぼけたアパートから飛び出した。
タバコ、ライター、積み上がった本。
ここは思い出が多過ぎた。
「どこか遠くへ。」
何て陳腐な考えだろうか。
まるで日本のフォークソングだ。
そんなことを思いながら、兎に角遠くへ。
少年は逃げ出したかったのだ。
気づくと少年は、海に来ていた。
海。
素知らぬ顔をして暮らしていても、
やはり老人の影を少年は追い続けていた。
老人。
忘れたことなど一度もない。
飯を食べる時、歩いている時、
もはや息をしているだけでも
老人と過ごしたささやかな安らぎが、
痛いほど少年を苦しめていた。
その思い出が温かければ温かい程。
限界だった。
どこへ逃げても追いかけてくる孤独は、
少年を生殺しにしていた。
もういっそ。
本当に遠くへ行けばいいのではないか。
死ぬことに対して、
恐れる気持ちなどまるで無かった。
もう、この辺でいいのではないか。
日本にも来た、仕事もした、
穴について考えた。
けれど何も起こらなかった。
あの日から、自分は何もー。
もう、いい加減に解放してほしい。
どうしようかあぐねたまま、
少年は海を見つめ、ただそこに座ってタバコをふかした。
少年は働くことを選択肢に入れていた。
鳶職、ドライバー、コラム書き、中国語教師。
内容的に、哲学や心理学について講釈を垂れなければならない時もしばしばあったが、
それ専門のことをすれば良いだけで、別段苦にならなかった。
そういう仕事の色々は、
持ち前の頭と要領の良さで、
難なくこなす事が出来た。
そこにいる人間達の“目”だけが時たま閉口するが、
それでも、自分の穴に吹く風に比べれば、何億倍もマシだった。
そんな風に毎日を送っていたある日、
何となく自分の身体に違和感を覚えた。
その時少年が一番に思ったことは
「ガタがきたな。」
という事だった。
今まで自分に“折り合い”をつけてきたガタが、
人の目を拒みながら、上手く付き合おうと無理をしたガタが、
そして、寂しさを押し殺してきたガタが、
今、まさに来ているのだと。
女と遊び、仕事にふけってだましだまし逸らしてきた色々がやって来たのだと。
少年は、日本に来てからずっと住んでいた古ぼけたアパートから飛び出した。
タバコ、ライター、積み上がった本。
ここは思い出が多過ぎた。
「どこか遠くへ。」
何て陳腐な考えだろうか。
まるで日本のフォークソングだ。
そんなことを思いながら、兎に角遠くへ。
少年は逃げ出したかったのだ。
気づくと少年は、海に来ていた。
海。
素知らぬ顔をして暮らしていても、
やはり老人の影を少年は追い続けていた。
老人。
忘れたことなど一度もない。
飯を食べる時、歩いている時、
もはや息をしているだけでも
老人と過ごしたささやかな安らぎが、
痛いほど少年を苦しめていた。
その思い出が温かければ温かい程。
限界だった。
どこへ逃げても追いかけてくる孤独は、
少年を生殺しにしていた。
もういっそ。
本当に遠くへ行けばいいのではないか。
死ぬことに対して、
恐れる気持ちなどまるで無かった。
もう、この辺でいいのではないか。
日本にも来た、仕事もした、
穴について考えた。
けれど何も起こらなかった。
あの日から、自分は何もー。
もう、いい加減に解放してほしい。
どうしようかあぐねたまま、
少年は海を見つめ、ただそこに座ってタバコをふかした。