哲学しようよ
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そうしていること数分。
私は沈黙に耐えかね、切り出した。
「そういえば講義‥。」
「何か、するのか?今日。」
「だってその為に夕飯、一緒にしてるんじゃないんですか。」
そう言いながら違和感を覚える。
いつか彼に言われた台詞だ。
因果だ、全く。
私がそう言うと彼はいつの間にか食べ終えた食器を片し、窓枠でタバコに火をつける。いつものように。
「‥今日はいいね。」
彼は背中を向けているからその表情は読み取れない。
彼がタバコを吸っている時はより一層寂しく見える。
小さい背中。
だけど近づくと、本当にものすごく近づくと、彼の背中は大きいのだ。
そんなこと、知らなくても良かったのに。
何故だか私は、また胸が痛くなる。
それからあの歌が頭をよぎる。
太湖船。
やわらかくてあたたかくてけれど少し哀しい歌。
そんなこと、知らない方が良かった。
全部、知らない方が楽だった。
知れば知るほど知りたくなる。
これはただの野次馬根性なのかしら。
彼はタバコを吸い終えたようで、振り返り吸い殻を捨て、「帰る。」と行った。
講義もないし、することもない。
そりゃそうだ当たり前だ。
その筈だ。
その筈‥なのに。
「‥。」
私は彼の手首を掴んでいた。
“なんだ、寂しいのか?”
そう言ってからかってくれたら、
私はまた元の位置に戻れるのに。
彼の言うように私はさっきから、
いや、それ以前からちょっぴりおかしくて、
そして私の言うように、彼もきっと少し変で。
おかしいままに、
私達は小さな部屋で立ち尽くす。
「やっぱり私変ですね。」
手を離し、私は努力し得る力を出して明るい声を出す。
そうでないと、この充満した空気に耐えられなかった。
「‥。」
彼を見ると眉間にシワを寄せ、何かをぐっと堪えている表情をしている。
何かとてつもない痛みを抱え、しかしそれを誰かに訴えまい、悟られまいとしているかのように。
違う。
と思った。
違う、私は彼にこんな顔をさせたかったんじゃない。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
ごめんなさい、と言うべきなのだろうか。
いやダメだ。
そんな気休めみたいなことは言いたくない。
どうすれば、どうすれば。
私は考えつく限りの会話を脳内シュミレーションし、そして全てをボツにした。
その間ものの数十秒。
あれも違う、これも違う。
違うのだ。言葉では。
私はフル回転の頭をリセットし、行動に移すことにした。
本当はもっとずっと前から頭の縁に大きくこびりついていたことを。
「‥‥何してるか。」
彼は驚いた声で口を開いた。
本当に、何してるんだろう。
分からない。
でも本当は分かっている。
けどやっぱり分からない。
彼を抱きしめる理由なんて、そんなの私が知りたいくらいだ。
けど考えようとすると堂々巡りで、
そしてしっちゃかめっちゃかで、
頭の中はもうパンク寸前だ。
哲学はきっとこういう馬鹿な堂々巡りから始まったんだ。
なんてそんなこと言うと誰かに怒られそうだけど。
「強いていうなら哲学ですかね。」
「‥ナマ言うなね。」
そっと息を漏らし、そう言いながら私の背中に腕を回した。
私は沈黙に耐えかね、切り出した。
「そういえば講義‥。」
「何か、するのか?今日。」
「だってその為に夕飯、一緒にしてるんじゃないんですか。」
そう言いながら違和感を覚える。
いつか彼に言われた台詞だ。
因果だ、全く。
私がそう言うと彼はいつの間にか食べ終えた食器を片し、窓枠でタバコに火をつける。いつものように。
「‥今日はいいね。」
彼は背中を向けているからその表情は読み取れない。
彼がタバコを吸っている時はより一層寂しく見える。
小さい背中。
だけど近づくと、本当にものすごく近づくと、彼の背中は大きいのだ。
そんなこと、知らなくても良かったのに。
何故だか私は、また胸が痛くなる。
それからあの歌が頭をよぎる。
太湖船。
やわらかくてあたたかくてけれど少し哀しい歌。
そんなこと、知らない方が良かった。
全部、知らない方が楽だった。
知れば知るほど知りたくなる。
これはただの野次馬根性なのかしら。
彼はタバコを吸い終えたようで、振り返り吸い殻を捨て、「帰る。」と行った。
講義もないし、することもない。
そりゃそうだ当たり前だ。
その筈だ。
その筈‥なのに。
「‥。」
私は彼の手首を掴んでいた。
“なんだ、寂しいのか?”
そう言ってからかってくれたら、
私はまた元の位置に戻れるのに。
彼の言うように私はさっきから、
いや、それ以前からちょっぴりおかしくて、
そして私の言うように、彼もきっと少し変で。
おかしいままに、
私達は小さな部屋で立ち尽くす。
「やっぱり私変ですね。」
手を離し、私は努力し得る力を出して明るい声を出す。
そうでないと、この充満した空気に耐えられなかった。
「‥。」
彼を見ると眉間にシワを寄せ、何かをぐっと堪えている表情をしている。
何かとてつもない痛みを抱え、しかしそれを誰かに訴えまい、悟られまいとしているかのように。
違う。
と思った。
違う、私は彼にこんな顔をさせたかったんじゃない。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
ごめんなさい、と言うべきなのだろうか。
いやダメだ。
そんな気休めみたいなことは言いたくない。
どうすれば、どうすれば。
私は考えつく限りの会話を脳内シュミレーションし、そして全てをボツにした。
その間ものの数十秒。
あれも違う、これも違う。
違うのだ。言葉では。
私はフル回転の頭をリセットし、行動に移すことにした。
本当はもっとずっと前から頭の縁に大きくこびりついていたことを。
「‥‥何してるか。」
彼は驚いた声で口を開いた。
本当に、何してるんだろう。
分からない。
でも本当は分かっている。
けどやっぱり分からない。
彼を抱きしめる理由なんて、そんなの私が知りたいくらいだ。
けど考えようとすると堂々巡りで、
そしてしっちゃかめっちゃかで、
頭の中はもうパンク寸前だ。
哲学はきっとこういう馬鹿な堂々巡りから始まったんだ。
なんてそんなこと言うと誰かに怒られそうだけど。
「強いていうなら哲学ですかね。」
「‥ナマ言うなね。」
そっと息を漏らし、そう言いながら私の背中に腕を回した。