借り物だとさ
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お昼時、食堂は沢山の生徒が座っている。
券売機の前で、彼は一万円札を突っ込んで
「何食うか。」
と尋ねる。
なんだ、お金あるじゃない。
だったら泊まる必要なかったじゃない!
私は頭に来て、
「A定」と書かれたボタンを力任せに押す。
それを見て何かまた、ニヤつくそいつ。
「‥何ですか。」
「いや、意外にもよく食うな思て。」
悪かったわね。
ギロリと睨み、彼を見る。
私の方が身長がいくらか上なのに、
威圧感を全く感じさせられないのはどういうことか。
それを見て、またフンと鼻で笑ってから
「“悪かたね”か。」
と彼が言った。
それから、
「お前は考えてることダダ漏れで面白いね。」
とも。
どうしてこいつは、そんなに遠慮なく物を言うのだろう。
「そりゃ、人生生きづらい筈ね。」
そう言いながら
彼は“カツカレー”のボタンを軽く押す。
カシャンカシャンと音を立てて二枚の紙が落ちる。
何だそれ。
生きづらい?
私の人生が?
どうしてそんなこと言われなくちゃいけないの?
呆然としていると
気がつけば彼はもう、食堂のおばちゃんの前に券を突き出していた。
「どちも白飯、メガ盛りにしといてね。」
慌てて私もそちらへ駆け出す。
「軽めで大丈夫です。」
そう彼に抗議をしに行くために。
「なんだ、お前、米食わないのか。」
不思議そうな眼差しで私を見つめながら、モリモリご飯を食べている。
「あのね、メガ盛なんてされたら食べ切れませんから。」
漫画みたいに山形に盛られたそれを、少しづつ消化して行くが、この白米を全て平らげるなんて絶対無理だ。
そう思いながら、私はエビフライを突つく。
揚げ物なんて、1人では面倒臭くてしないから本当に久しぶりだ。
美味しい。
「元気ない時はたくさん飯食た方がいいて、むかし仲間が言てたね。」
「誰のせいで
元気がないと思ってるんですか。」
私も彼にほとんど遠慮しなくなっている。
ムグムグと、バカみたいな量のカツカレーを彼は平気で平らげて行く。
「言うようになたね。」
また、怪しい顔で笑われる。
怖いっつーの。
それからヒョイっと私の茶碗を取り上げ、半分以上残った白米を取ってくれた。
それも見事に早々と食べきり、
彼のお皿の上にはもう何ものっていない。
それから、タバコを取り出して一服し始める。
ご飯食べてるんだから、やめてよ。
そう思いながらムグムグと咀嚼し、彼に目線を送る。
どうせ、何考えてるか分かるんでしょ。
けれど、彼は私の方を見ないのでテレパシー効果は通用しなかった。
遠い目で、食堂のテラスから見える庭を見ている。
そこも、サンドイッチや、お弁当を広げる生徒達でいっぱいだ。
もう、いちいち突っ込むのもしんどいので私も自分の皿を片付けてしまおうと黙って食べ続けた。
日に照らされて、彼の白い顔がより白く光る。
タバコを吸う彼の横顔は、
女の私より数倍綺麗だ。
最後のひとかけを口に運びながら、そんなことを思ってしまった。
「‥そんなに見とれられても困るね。」
流し目でそう言われ、エビが喉を突っかえそうになる。
「見とれてません!」
なんだ、見てたの気づいてたのか。
「ハハ、ま、これで借りは返したね。」
そうして自分と私の分のお盆を持ち上げ、立ち去った。
「ごちそうさまでした。」
背中に向かってそう言うと、
「よくできました。」
と少し振り向いて笑顔を返される。
さっきの嫌味や、怪しい笑みとは違う種類の笑顔。
もっと優しい、柔らかい笑顔。
こんな顔するんだ。
その瞬間、心臓がギュッと音を立てたみたいに縮尺して戸惑う。
なんだこれ。
きっと、嗅ぎ慣れないタバコのせいだ。
そう結論づけて、私も食堂を後にする。
券売機の前で、彼は一万円札を突っ込んで
「何食うか。」
と尋ねる。
なんだ、お金あるじゃない。
だったら泊まる必要なかったじゃない!
私は頭に来て、
「A定」と書かれたボタンを力任せに押す。
それを見て何かまた、ニヤつくそいつ。
「‥何ですか。」
「いや、意外にもよく食うな思て。」
悪かったわね。
ギロリと睨み、彼を見る。
私の方が身長がいくらか上なのに、
威圧感を全く感じさせられないのはどういうことか。
それを見て、またフンと鼻で笑ってから
「“悪かたね”か。」
と彼が言った。
それから、
「お前は考えてることダダ漏れで面白いね。」
とも。
どうしてこいつは、そんなに遠慮なく物を言うのだろう。
「そりゃ、人生生きづらい筈ね。」
そう言いながら
彼は“カツカレー”のボタンを軽く押す。
カシャンカシャンと音を立てて二枚の紙が落ちる。
何だそれ。
生きづらい?
私の人生が?
どうしてそんなこと言われなくちゃいけないの?
呆然としていると
気がつけば彼はもう、食堂のおばちゃんの前に券を突き出していた。
「どちも白飯、メガ盛りにしといてね。」
慌てて私もそちらへ駆け出す。
「軽めで大丈夫です。」
そう彼に抗議をしに行くために。
「なんだ、お前、米食わないのか。」
不思議そうな眼差しで私を見つめながら、モリモリご飯を食べている。
「あのね、メガ盛なんてされたら食べ切れませんから。」
漫画みたいに山形に盛られたそれを、少しづつ消化して行くが、この白米を全て平らげるなんて絶対無理だ。
そう思いながら、私はエビフライを突つく。
揚げ物なんて、1人では面倒臭くてしないから本当に久しぶりだ。
美味しい。
「元気ない時はたくさん飯食た方がいいて、むかし仲間が言てたね。」
「誰のせいで
元気がないと思ってるんですか。」
私も彼にほとんど遠慮しなくなっている。
ムグムグと、バカみたいな量のカツカレーを彼は平気で平らげて行く。
「言うようになたね。」
また、怪しい顔で笑われる。
怖いっつーの。
それからヒョイっと私の茶碗を取り上げ、半分以上残った白米を取ってくれた。
それも見事に早々と食べきり、
彼のお皿の上にはもう何ものっていない。
それから、タバコを取り出して一服し始める。
ご飯食べてるんだから、やめてよ。
そう思いながらムグムグと咀嚼し、彼に目線を送る。
どうせ、何考えてるか分かるんでしょ。
けれど、彼は私の方を見ないのでテレパシー効果は通用しなかった。
遠い目で、食堂のテラスから見える庭を見ている。
そこも、サンドイッチや、お弁当を広げる生徒達でいっぱいだ。
もう、いちいち突っ込むのもしんどいので私も自分の皿を片付けてしまおうと黙って食べ続けた。
日に照らされて、彼の白い顔がより白く光る。
タバコを吸う彼の横顔は、
女の私より数倍綺麗だ。
最後のひとかけを口に運びながら、そんなことを思ってしまった。
「‥そんなに見とれられても困るね。」
流し目でそう言われ、エビが喉を突っかえそうになる。
「見とれてません!」
なんだ、見てたの気づいてたのか。
「ハハ、ま、これで借りは返したね。」
そうして自分と私の分のお盆を持ち上げ、立ち去った。
「ごちそうさまでした。」
背中に向かってそう言うと、
「よくできました。」
と少し振り向いて笑顔を返される。
さっきの嫌味や、怪しい笑みとは違う種類の笑顔。
もっと優しい、柔らかい笑顔。
こんな顔するんだ。
その瞬間、心臓がギュッと音を立てたみたいに縮尺して戸惑う。
なんだこれ。
きっと、嗅ぎ慣れないタバコのせいだ。
そう結論づけて、私も食堂を後にする。