教室から出た時からか、
それとも授業を受けたすぐからか

私は何だか寝起きみたいな状態になり、
足がフワフワしたような感覚がして
何だかおぼつかない感じになっていた。

少し浮ついた身体をなんとか抑え、
私は外に出る。

曇り空、冷たい風。
冬はなんとなく
内にこもってしまうような気がする。

バイトに行こうと足を進めると、
見覚えのある影が少し遠くにあった。
その隣には、見知らぬ女の子がそばで笑っている。

「‥かわいい‥。」
この学校の生徒かな。
知らないけれど。

彼もその横で楽しそうに微笑んでいる。
一見すると、カップルのように見えた。

ターゲット

という言葉が私の中をよぎる。

彼は次のターゲットを
彼女に決めたのだろうか。

そうしてまた笑ったり、
ご飯食べたりするんだろうか。

何故か私は彼にあざむかれた気持ちになって、
早足でそれを直進しようとする。

本当は避けたかったが、
ここを通らないと外には出られない。

「お。」
彼が私に気づいた。

それに合わせて、女の子の方も私の顔を見る。

ちらりとだけだが、
遠くで見るよりも
大人びて整った顔立ちをしているその子。

その子と彼の距離。
私は胸が痛くなった。

いろんなものを無視して私は門を通る。

「おい。」
いつからか忘れたが、
彼はもう私のことを“嵐”とは呼ばない。

これも私たちの距離を明確にする
証拠の１つなんだと気付いた。

私には、呼び止められるその声も煩わしくて、
うざったくて、
心がざわざわするような気がした。

私が２つの視線を避け、
声も交わさずに門まで彼を振り切るのは
とても大変な作業だった。

しかし、ここで彼と目を合わせてしまえば
私はどうなるかきっと分かっていた。

私は何故だか泣き出しそうだった。

彼女が彼の何でもどうでもいい。
彼の歌のことも、たまたま聞いてしまっただけ。

このモヤモヤも、
この叫びだしたくなるような気持ちも
それを抑える無意味な行為も、

全部全部ゴミ箱に捨てたくなった。

彼の視線の感覚を残し、
私はひたすら前を向いて歩く。